雨雲と

2018年05月17日 14時14分36秒 | マーロックの日記

                         ―――  

                                        ォォォォォォ   ―――――

             ―――

頭を動かす・・・

目が覚めた。

「・・・・」

目を開いても閉じても、暗い。

                   カチ

横に置いてあるランタンライトを点ける。

目覚めたばかりで明るすぎるのはいやなので、暗めのライト。

でもまぶしい。

「・・・」

黒猫の目が光ってる。

もう起きている。

私が起きるまで、ジッとしていたらしい。

「暖かいな・・・」

          ―――

体を少しずらす。

「ニャ~」

長方形の木箱を互い違いに積んで、木箱壁にへこんだ部分がある。

棚の代わりで、黒猫はそこにいる。

毛布の中に隠れてもいない。

              ――――

さむくない。

寝る前までは外は寒くて、荷台の中は暖房がないからさむかった。

私は布団型の寝袋で寝ていて、ファスナーを開けば下と上が分かれて普通の布団みたいになる。

黒猫が自由に入れるように、片側を開いた状態にしていた。

寝ている間に、そこから足を外に出していた様。

上体を起こしてすぐ着れるように、セーターを置いてある。

でもいらないな。

時計を見ると、午後の3時。

よく寝た。

日の出前に、見張りを交代して眠った。

                  ――  ガサ

開いたままのケースをあさる。

         ―――

あった。

コットンのカーディガン。

外に出るから、風はつめたいかもしれない。

羽織っておこう。

                       ――――   ・・・・

冷凍庫の方から声。

荷台の箱ベッドは4つあって、それぞれ木箱を壁にして簡単な個室みたいになってる。

私の箱ベッドは、冷凍庫から少し前方側に行った場所。

何かあった場合にすぐ動けるように、ジーンズは穿いたまま。

黒いコットンので、細身だけどエラスチンが少し入っていて動きやすい。

            カタ

くつを履く。

箱ベッドには、ポケットにも入るサイズの靴ベラを置いてある。

それを使って。

               トコ

シャワー用のナイロンの袋を持って、歩く。

「・・・」

黒猫を見ると、付いて来た。

                   ――  ひとつ減ってるわ !

フワリさんの声がする。

冷凍庫にいるのは、数人かな。

          クッキーチョコアイスがないね

「・・・・」

寝る前の見張りの途中、私はクッキーチョコアイスをたべた。

もうバレてるのか。

       マロックさんが食べたんだわ  ―――

                   そうだね

するどく、私を疑っている。

でも、もう秘密のゴミ袋にアイスの袋は捨ててあるし、証拠は残していない。

言って来たらしらばっくれよう。

「・・・」

すぐ行くと何か言われそうだから、木箱に座る。

黒猫も横にいるから、耳をさわる。

                        ―――  ・・・・

声は遠ざかる。

私が寝ていると思って、個数を確認しに来たのかな。

「・・・・」

それとも、わざと聞こえるように言ったのか。

       トコ

歩く。

ナイロン袋は、肩に引っかかるようにひもも付いてる。

              ―― ィン

杖は輪に通して持って行く。

ボーダさんの友人の大学でプリントしてもらった、新しいチタン合金の杖。

柄部分の頭や打つ部分は、DLCコーティングしてある。

長さは119cmで、素振り木刀より少し長い。

重さも持った感じもいい。

          トコ

強い武器になる。

          ピィ ♪

天井の近くのセンサーライトが点いて、ぼんやり明るい。

フワリさんたちが去ってライトが消えていたのが、また点いた。

     パタタ

メジロがウロウロ飛んでいるみたい。

「ニャ~」

黒猫の頭にのった。

メジロとリスは、よく黒猫と一緒にいる。

リスはいないみたい。

たくさんある木箱の、どこかの陰に隠れているかもしれない。

                トコ

                                             ―――――

雨があたる音。

屋根から。

まだ降っている。

こういう音や、雨のしっとりした空気の時はいつもよりぐっすり寝た気分になる。

・・・さっき冷凍庫から聞こえた女性たちの声の感じだと、少しおとなしかった昨日とは違っていつも通りの様。

サングラスの連中も、こっちに向かってきてはいないんだろう。

                       ガチャ ――

ドアを開ける。

                                         ゥゥゥゥウウウ   ――――――

――風。

「ニャァァ」

強い、暖かい風。

右側・・・南から吹いてる。

                     バタン

南側の土壁を見てみる。

「・・・・」

霧が出ていて、辺りがぼんやりしてる。

・・・この霧だと、ドローンではあまり遠くは見えないだろう

         

でも、近くの壁は見える。

「・・・」

もうかなり長い。

つくるのが速いな。

寝る前より、立派。

ただ、前の時のような高さはない。

長い壁になるから、高さも抑えめにしているみたい。

まず、私たちのいる場所を囲むのを優先しているのだろう。

         

「・・・おはようございます」

シャベルを持ったマッチョさんが現れた。

「おはようございます」

半袖だ。

風も暖かいし、体を動かせば暑いだろう。

「昼前から、風が温かくなってきました」

私が見ていたから、マッチョさんが説明してくれた。

「そうですか」

この時期としては、あまりない暖かさだろう。

カーディガンの袖をまくる。

中は半袖。

シャワー室に行く。

                     ――   

              チュ チュン ♪

森の小鳥たちこ声。

北の森のある方に、トレーラーの玄関のドアはある。

そっちから。

            

荷台の後ろ側と、後ろのトレーラーの牽引車の屋根に、タープが張ってある。

寝る前は無かった。

雨が長いし、荷台とトレーラーの間はよく移動するから張ったみたい。

傘がなくても、雨はあたらない。

牽引車のすぐ後ろに、玄関のドア。

荷台はトラックの一番後ろ側にドアがあるから、玄関は近い。

「チュン」

「ピィ」

メジロが鳴いた。

森の小鳥たちは、空気が抜けた荷台のタイヤの近くに集まっている。

大タープには長テーブルを出してあるけど、そこにも数羽見える。

              ―――

1羽がタイヤに乗った。

          ツン

クチバシでつついた。

「チュン♪」

          

                    

                           パタタ

残りの数羽も、みんなタイヤに乗った。

         ピチュ ♪

                     ピピ ♪

       チチチ ♪

歌ってる。

昨日大きな音を出したタイヤだけど、今日は静かだからよろこんでいるのかも。

「ピィ♪」

          

黒猫とメジロは付いてくる。

トレーラーに向かう・・・・

                               ―――  

                                            ゥゥゥゥウウウ   ・・・・・・・

                            ――――    ァァァァァァァ