このアパート建築会社では、社員の氏素性を問わない。「前科のある社員は採用しない」というような規定もあるにはあるのだが、それは建前であり、チェックはしない。
社員の大半が支店採用なので、地元の人ばかりだ。お互いを若い頃から知っている人達もいる。そのため、「アイツは、今でこそマジメに飛び込み営業をやっているのだが、昔は少年院に2回入った経歴があるんだぜ・・・」というような、過去のエピソードが耳に入ってくる。
研修でいろいろと語ってくれたラツ腕課長からして、「若い頃は愚連隊の隊長だった」ということだ。昔を知る人々が当方に語ったところでは、「課長は、若い頃は眉ゾリ・パンチパーマで、目つきが悪かった。制服には金文字で『総理大臣』と刺繍してあった・・・」という。ピーク時には暴走族の一派を率いる特攻隊長となり、千人以上もの配下を従え、暴れまわっていたらしい。
もちろん、今では落ち着いているのだが、肝の据わった人物で不思議と人望がある。部下の人達に言わせると、なんとなく「この人についていこう」という気持ちになってくるのだそうだ。
このような人達から見れば、当方は「坊や」みたいなものだ。それは仕方ないのだが、一方で、こちらは「一流企業の社員」その他も経験してきているのだから、渡ってきた世間の「幅の広さ」だけなら、負けていないとも言える(笑)。