自殺者2

2007-07-08 22:09:57 | アパート建築営業マン
 
「いったい、いくら必要なんだ?」と聞いたところ、「2万3千円」と、妙に具体的な金額が返ってきた。正直、当方は考えた。「この男、やっぱり立ち直れそうもないな・・・。苦しんでるようだから、餞別のつもりで、そのくらいのカネは貸してやろう」と。

このアパート建築会社では、営業マンは夜も訪問する。最低でも、「夜の8時までは営業する」というのが原則なのである。夜の8時といえば、夏でも真っ暗だ。ましてや、冬場は5時には暗くなってくるというのに、8時なんていったら、真夜中の感覚である。よく、裁判沙汰にならないものだ・・・。

2人とも、夜間訪問の時間だけに、営業車で走り回っていた。コンビニの駐車場で待ち合わせて、カネを貸した。「自殺者」は、感激して何度も握手を求めてきた。「ありがとう、ありがとう・・・」と、涙を流さんばかりの調子であった。

このお金は、正直、返ってくるとは思っていなかった。普通ならともかく、この男の場合、文字通り命がかかっている。短いつきあいとはいえ、友人として、お餞別のつもりで渡したものであった。

しかし、驚いたことには、次の給料日には耳をそろえてキッチリと返してきたのである。律儀なものだ・・・。これほどマジメで律儀だから、悩んで自殺する羽目になるのである。