さんぽんかん氏

2007-10-09 20:55:14 | アパート建築営業マン
   
49歳の新人は、何を言ってるのか聞き取りにくい人物であった。何を言っても「あばばばば・・・」という風に聞こえる。
  
この会社では、毎朝、朝礼がある。代わる代わる朝礼当番があるのだが、当番は「三分間スピーチ」をやることになっていた。ある日、この人物が朝礼当番になった。
 
相変わらず、言語不明瞭、意味不明だ。何を言っても「あばば・・・」という風に聞こえてしまう。「それでは、三分間スピーチを始めます」と言おうとして、「さんぽんかんスピーチ」と発音したため、失笑がわいた。それ以来、「さんぽんかんスピーチ」というアダ名がついてしまった。
 
しかし、「さんぽんかん」氏は大変な努力家であった。一日に何十件も飛び込み訪問し、夜もサボらずに訪問する。面談記録は、膨大な枚数だ(どう面談しているのかは、知らないが・・・)。会社から言われた通り、忠実に実行している。
  
「彼は凄いですね」と当方は言った。他の新人も、「とても真似できないな」と言った。「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」という格言があるのだが、これは真理である。これだけやっていれば、どこかで遊休地を抱えた農家が、アパート建築に関心を示してくれるのではないか。
 
訪問した家を地図に丹念に記録し、それがまた、見るだけで疲れるほど大量の記録になっていた。見ているだけで、自然に頭が下がってしまう。さんぽんかん氏には、尊敬の念が湧いてきた。こんな人には、「営業の神様」が微笑むに違いない・・・。
 
だが、天はさんぽんかん氏に微笑まなかった。いつまで経っても、結果が出る兆しもない。気のせいか、だんだん、顔が引きつってきているのを感じる。マジメ過ぎるだけに、精神的に逃げ場がないのかもしれない。
 
もっとも、こちらも他人の観察ばかりしてる場合じゃないのだが。