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大陸と台湾の、漫画本著作権問題について

2003-01-10 | 著作権問題
大陸と台湾の、漫画本著作権問題について。
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第1部 摘発と戦略
(4)著作権巡る攻防
◆一掃できぬ海賊CD

 台湾の台北市内でコーヒーや紅茶を飲みながら漫画を楽しめる漫画喫茶をよく見かける。書架に並んでいるのは、すべて日本の漫画。「棋霊王」は「ヒカルの碁」のことだ。「スラムダンク」「ハンター×ハンター」もある。

台北市内の貸本屋。近くの大学に通う学生たちが日本の漫画を読みふけっている
 日本の漫画は台湾では大人気で、漫画喫茶には多くの若者たちが集まってくる。台中市から来た学生のチェンシュウカイさん(19)は「ストーリーの面白さは、日本の漫画がずば抜けている。テレビでアニメも見るよ」と目を輝かす。最近のお気に入りは日本でも人気の「棋霊王」だという。

 かつて台湾では、市場に出回る漫画のほとんどが、著作権を無視した海賊版だった。「ドラえもん」や「ドラゴンボール」が、町工場でコピーされ、中国語のせりふを張り付けて製本される。稚拙な作りだが、内容の面白さがウケて、若者たちの間で爆発的に広がった。

 こうした状況に危機感を抱いた日本の大手出版各社が1992年に、台北で開かれた見本市をきっかけに、海賊版を作る台湾の出版社とライセンス交渉を開始した。契約を結ぶことで、台湾企業に摘発の心配なく安定的な利益を約束し、同業他社の海賊版対策を講じさせる戦略だ。

 2002年に台湾が世界貿易機関(WTO)に加盟したのを機に、行政機関の取り締まりも一段と強化され、海賊版はほぼ一掃された。漫画だけでなく、女性ファッション誌「non・no」や地域情報誌「台北ウォーカー」など、日本でおなじみの雑誌の台湾版も、書店で普通に見かけられる。日本の出版各社は台湾での成功を生かし、巨大市場・中国本土への上陸も虎視眈々(こしたんたん)と狙っている。




 同じ台湾でも著作権侵害に苦しむ業界もある。音楽CDを違法にコピーして販売する海賊版は後を絶たない。国際レコード産業連盟の推計では、2001年に世界で製造された海賊版CDは、190億枚に上る。台湾は、その主要な生産基地の一つだ。
 エイベックス台湾のトップである宮崎伸滋総経理は、「3年前に比べ、台湾の音楽CD市場の規模は半分近くにまで縮小した」と嘆く。その原因が、海賊版にあることは明らかだ。CDはパソコン一つあれば容易にコピーでき、デジタル音源なので音質の劣化もない。

 しかも、CD業界の陳情により地元警察の取り締まりが強化された結果、宅配便を利用した海賊版の販売が普及してしまい、かえって実態がつかみにくくなっているという。




 漫画は日本と台湾の出版社が、共存共栄の道を見つけだした。音楽CDでも解決策を見いだすことができなければ、日本企業の利益は失われる一方だ。日本レコード協会の富塚勇会長は、海賊版問題について、「産業そのものの危機だ」と不安感を隠さない。
 事態を重く見た協会などは2002年8月、海賊版情報の収集・提供のため、コンテンツ海外流通促進機構を設立して、現地政府への取り締まり要請を始めた。CDに、パソコンでのコピーをできないようにするソフトを組み込む会社も出ている。

 ただ、対策は強めているものの、「いたちごっこになり、絶対的な対応策はない」(宮崎総経理)のが現実だ。相手国・地域との交渉も必要になるため、「企業や業界団体の努力だけでは限界がある」(特許庁)との指摘もある。日本の漫画や音楽は台湾だけでなく、アジア各国で高い人気を誇る“ドル箱”商品だ。それだけに、外交交渉による解決も視野に入れた、官民一体での著作権保護に向けた取り組みが求められる。


(2003年1月10日)
記事引用元:読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/special/46/nation04.htm