Study of Spenser

ロバート・B・パーカー著、ボストンの私立探偵スペンサーを読み解くガイドブックです

ゴッドウルフの行方 - Godwulf Manuscript - (1973) 22章

2009-07-26 | 海外ミステリ紹介
画像は、コープリー・スクエア


第22章
スペンサーは、タクシーでジャメイカ・ポンドに行きます。
自分の車は置いた場所にちゃんとあり、イグニッションにキーは差し込まれたままだし、ホイールのハブキャップも盗まれていませんでした。それを彼は<Ah. Law and order 法と秩序は素晴らしい>としています。この訳は、菊池光氏なのですが、後任の加賀山氏なら、<法と秩序だ>で済ませてしまいそうです。(加賀山さん、ごめんなさい。どうしても菊池氏好みなのです)

車に乗ってオフィスに戻って、留守番応答サービスにメッセージの有無を問い合わせたら、マリオン・オーチャードから三回。ローランド・オーチャードから一回あったとわかった。スペンサーはクワークに電話してヘイドンは見つかったかと尋ねるのですが、まだのようです。

オフィスの椅子を倒して、両足をデスクに乗せようとすると脇腹が痛むのです。貫通したとはいえ、銃傷は重傷です。オフィスからスチュアート・ストリートを見下ろしてもヘイドンはいません。家に帰ってベッドに横たわりたいと思っているのですが、そこにだってヘイドンはいません。(いたらアヤシイ)結局、ミセス・ヘイドンと話そうと、マーブルヘッドに向かうことにします。

ヘイドンの住まいにはブラインドが閉まっているのですが、中で動く気配があります。スペンサーはベルを押して待ち、五分ほど経ってようやくミセス・ヘイドンは出てきました。スペンサーが話し合いたいと言っても、彼女は「帰って、ローウェルの居場所は知らない」と取り合いません。そこでスペンサーは言います。「ローウェル生きているためにはワン・チャンスしかない。それが私なんだ。そのドアを閉めたら、あなたは夫の棺に蓋を閉じることになる Lowell’s got one chance to stay alive, and I’m it. You shut the door on me and you’ll be slamming the lid on your husband’s casket.」
ドアは閉じられたのですが、彼は自分のことを、説得力 persuasive、私の取柄だ That’s me、弁舌さわやかな男 Old silver tongue と自画自賛して待ちます。

スペンサーがドアベルを鳴らし続けるので、ミセス・ヘイドンもついにはそのドアを開けます。スペンサーは彼女に、自分が昨夜ヘイドンの命を救ったこと、そのために自分は胸を撃たれ、ヘイドンが自分を置き去りにしたおかげで、出血多量で死ぬところだった。彼もあなたも私に恩義がある。もう一度彼を救うチャンスをくれ、そうでなければ二度とそのチャンスはない、とさらに説得するのです。

ミセス・ヘイドンは、やっとスペンサーを自宅に入れます。スペンサーはヘイドンが窃盗一件と殺人事件二件に関わっていることを、そして自分の保護を受けなければヘイドンは必ず死ぬことになると彼女に伝えます。ミセス・ヘイドンは、どうしてスペンサーがヘイドンを助けることができるのか、どうしてスペンサーを信頼できるのか、どうしてヘイドンの心配をするのか尋ねます。

スペンサーはヘイドンのことを心配しているわけではないが、ヘイドンから真実を聞きださないと無実の罪で二十歳の女の子が刑務所に入れられることになるし、ヘイドンは少なくとも死ななくてもすむ、それ以上の約束はできないが、ブロズの手下の手が及ぶよりはるかにましだ、最高裁は死刑を禁止しているがブロズは禁止していないと答えます。 Supreme Court has outlawed the death penalty, but Broz hasn’t. というわけです。ブロズはボストンを仕切っているギャングですからね、そりゃあ殺しちゃうでしょう。

ミセス・ヘイドンは、「馬鹿げた話だわ This is ridiculous.」と言います。その後言葉を変えて「It’s absurd.」と言います。翻訳では<absurd>も馬鹿げているになっていますが、不合理というような意味合いがあります。<ridiculous>は文字通り馬鹿げている、です。

私は<ridiculous>という言葉はけっこう好きなのですが、女性が使う場合が多いように思います。そして、少々現代風ではないのかもしれません。『赤毛のアン』で、グリーンゲイブルスの近所に住むおせっかい焼きのレイチェル・リンド夫人の口癖が「It’s ridiculous.」でしたから。

ミセス・ヘイドンは、スペンサーや警官やあの男たち(ギャングチームのこと)はどうしてヘイドンを悩ませるのか、そしてあの女の子、、、と言い泣き出します。スペンサーは「どの女の子?」と尋ねます。やっと話の糸口が見つかったのです。
ミセス・ヘイドンはヒステリーを起こし、コーヒーカップを床に叩きつけ、キッチンに行ってスコッチを飲みます。タバコを吸い始めます。

スペンサーは辛抱強く「どの女の子のことですか?」と聞き続け、さらに、あなた方二人ではどうにもできない、すでに手に負えない状態にはまり込んでいる、ヘイドンが一対一でブロズに立ち向かうのは、グッピーをピラニアの池に入れるようなものだ、私たちがブロズより先にヘイドンを見つけなければいとも簡単に殺されてしまう、と説得を重ねます。

ついにミセス・ヘイドンは、「彼のところに案内する I’ll take you him.」と言い、スペンサーの車に乗り込みます。ボストンのコープリー・プラザまで。


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