Study of Spenser

ロバート・B・パーカー著、ボストンの私立探偵スペンサーを読み解くガイドブックです

ゴッドウルフの行方 - Godwulf Manuscript - (1973) 24章

2009-07-28 | 海外ミステリ紹介
画像は、ハイアット・リージェンシー・ボストンの室内。左の白い部分が、コネクティング・ドア。


第24章
スペンサーは、エレベータで一緒に四階で降りた男女が、ミセス・ヘイドンを見張って(staked out)いてたのだとわかります。彼は自分のことを、I am a horse’s ass. マヌケだった」としています。

フィルが持っているのはアーミー・イッシューの45口径のオートマチックで、スペンサーは、大きくて扱いにくい代物だとしていますが、フィルにはぴったりしているようです。

ヘイドンは、来てくれて助かったと、フィルに言うのですが、フィルはヘイドンに、スペンサーと並べと命じ、ヘイドンはフィルを凝視します。
フィルはかまわず、もう一度ヘイドンに言い、ヘイドンと共にミセス・ヘイドンも並びます。スペンサーは頭の中で、どうしたわけか<フレッド・アステアとジンジャー・ロジャーズ>を想像します。フィルはスペンサーに、日本の指だけで拳銃を抜いて、床に落とせと命じます。スペンサーが落とすと、さらに拳銃をベッドの下に蹴って入れろと言い、スペンサーはその通りにします。

ヘイドンはフィルに言います、「You can’t harm me. If you do and Joseph Broz hears of it, you will be in very serious trouble. 私に危害を加えることができないぞ。それでジョゼフ・ブロズがこのことにについて知れば、非常に重大な問題になる。」と。事態を把握しているスペンサーは、いったいコイツは何を寝言を言っているのだと思っているのですが、わかっちゃいないヘイドンは、次第にピッチの上がった声で歌うように(talking in a singsong voice that rose in pitch as he spoke)続けます。

「Do you have any idea whom you’re dealing with? ったくもう、誰を相手にしてるかわかってるのか?」と。フィルはわかっているでしょう、間抜けなヘイドンです。
「Do you know how many people are in the movement? 我々の運動にどれほどの人間が参加しているのかわかっているのか?」 フィルにとって、どんな運動だろうと、所詮学生や教授など、物の数ではないと思っているでしょう。
「If anything happen to me they’ll never rest till I’m avenged. 私の身に何か起きれば、彼らは敵を討つまで復讐をやめないぞ」と。 そんな根性のあるヤツはいないでしょう。
「And Joseph Broz will be very angry with you. ブロズはものすごく腹を立てるはずだ」と。 まったく勘違いもはなはだしいやつで、フィルも口をあんぐり状態になってしまいます。

そして、ヘイドンはフィルに、自分は同じ側の人間で、何をするにも法に縛られない世界に変えたいのであって、自分は敵ではないのだから、自分ではなくスペンサーと自分の妻を殺せと言うのです。もうあきれて物も言えません。それを聞いて、フィルは面白がって笑います。

ミセス・ヘイドンが、私の夫をどうするつもりなの? と聞くと、フィルは「撃つ」と答えます。
その瞬間、ミセス・ヘイドンがフィルに飛びかかり、フィルの銃が火を吹きます。さらにもう一発撃たれてもミセス・ヘイドンは怯まず、スペンサーはベッドを飛び越えてフィルに飛びつきます。三人で揉みあうような形になり、ミセス・ヘイドンはフィルの腕に歯を食い込ませ、フィルはスペンサーの目に指を突っ込もうとし、ようやくスペンサーはフィルの喉仏をとらえ、押さえつけ続けます。

フィルは押さえつけながらも、八発の弾がなくなるまで盲滅法に拳銃を撃ち続け、スペンサーはどこに当たっているのか見当さえつかないほど集中してフィルの喉仏に力を加えていました。 My whole life was invested in the pressure of my forearm on his throat. 自分の生涯は、彼の喉に圧力を与える腕の力にかかっていた、というわけです。

どれくらい時間が経ったかわからないほど、スペンサーはフィルの喉を絞めつけ、やっとその必要がなくなったとわかり、腕をほどいてフィルとミセス・ヘイドンの下敷きになっていた自分の体を抜くことができたのです。フィルは死んで、ミセス・ヘイドンも脈がありませんでした。スペンサーも、脇腹の傷が開き、シャツに血がにじんでいました。

スペンサーはヘイドンのことを思い出します。勲章がわりに何発か殴ってでもやらないと気がすまないと思うのです。He was going to get few merit badges for simper fidelis. (直訳すると、<常に忠実>だったという勲章しか手に入れないつもり)ということなのですが、このラテン語の<simper fideli>は、センパーファーイと読み、アメリカ海兵隊のモットーで、紋章の中の鷲がくわえているリボンにも記されています。英語だと<Always Faithful>。

バスルームの鍵がかかっていたので、スペンサーは体ごとドアをぶち抜きます。ヘイドンはシャワーカーテンの向こうで、バスタブの中に座っていました。ヘイドンは失禁していて、スペンサーはバスタブから彼を引き上げると、ベッドルームに投げ込みます。

そこでスペンサーが怒りを爆発させます。「I have killed three people to save your miserable goddamn ass. Your wife took about six slugs in the stomach and bled to death in great agony to save your miserable goddamn ass. おれは、お前のようなつまらない人間を救うために三人を殺した。お前の妻は、お前のくだらない命を救うために腹を六発撃たれて、血を流して苦しみながら死んだ。」
「I will call up Martin Quirk in a minute, and he will come here to arrest you. これからクワークに電話して、彼が来たらお前を逮捕するだろう。」
「You will tell him everything that you know and everything that I want you to tell him and everything that he asks you. お前は彼に知っていることをすべて、おれが話せということをすべて、彼が聞いたことをすべて話すんだ。」
「If you do not, I will get Quirk to put us alone together in a cell in the cellar, and I will beat you to death. I promise you that I will. そうしなければ、クワークに頼んで。おれをお前と一緒の地下の独房に入れてもらって、お前を殴り殺す。必ずそうする。」

ヘイドンは「イエス、サー」と言い、スペンサーはクワークに電話をかけます。

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