The Alan Smithy Band

The band is on a mission.

ワイドビューミステリ 消えたC子を追え(後編)

2016年03月06日 | ヒデ氏イラストブログ
前回までのあらすじ:
毎年2回ほどの頻度で飛騨地方を訪れるひで氏、この度初めての特急列車「ワイドビューひだ」で乗り込んだ。その中で一緒になった、自由席に分散して座る女子大生と思しき3人組。そのうちの一人(C子)が発車直前にホームに買い物に行ったその時、列車は無情にも動き出した。C子を置いて出発してしまったA子とB子の胸中、そして携帯すら持たずホームに取り残されたC子は一体。。。(前編全文はこちら)

状況から察するにC子は財布だけを持ってホームへ出ていったようだ。少なくとも幾ばくかの現金があるというのは全くの手ぶらで取り残されるよりかはいいのかもしれない。

なんという修羅場だ。
不思議なのはA子もB子も、事態の大きさの割には比較的落ち着いていて、パニックという状態から程遠いほどに冷静なのだ。

そして私ひで氏はこのハプニングを横目で見ながらも、もう1つとても違和感のある出来事があった。
このワイドビューひだ、なんと後ろ向きに進みだしたのだ。

普通は座席が向いている方向に電車が進むと考えるが、動き出した瞬間、バックするように進み始めたのでとても驚いた。車内で何をするにしても後ろ向きに進む列車というのは気持ち悪い。わたしひで氏は、とにかく目をつぶって「この列車は席の向きと同じ方向に進んでいる」と強く念じることで心の中の列車の向きを変えられはしないだろうかと必死にトライしていた。

その間、A子とB子の会話からだんだん状況がはっきりしてきた。

C子は荷物も座席に置いたまま車外に財布だけを持って出ていったこと。
ただし座席にコートとポーチが無いことから、それらは持っているだろうということ。
しかし携帯は座席に置きっぱなしになっていること。

そして、A子が全員分の切符を預かっていること。

そのあとA子とB子がとったのは至極当然の行動だった。車掌が席まで来て、相談している。
友達が一人だけ取り残されてしまった、しかし連絡手段はおろか、切符すら持っていない。当然次の列車に乗って追いかけてくることになると思うが、切符も持たない彼女が列車に乗ることはOKか。

正直、車掌も当惑していた。珍しいケースなのだろう。

そんな中、車掌はこんなオファーをした。
「わかりました。一時間後の次の列車の車掌に連絡をとって、そういう事情で切符を持たない女性が一人乗るということを伝えます。」

かなり人間味溢れる対応だ。静かに感心する私ひで氏をよそに、車掌は「ではC子さんの特徴を教えてください」と言った。
A子とB子はC子の様子を伝え始める。

「えっと...コートは着ていってるはずだから…ベージュのコートを着ています」

「髪はロングで茶髪です」

「ポーチはどんなんだっけ。。。あ、茶色だ」

「で…、あ、焦げ茶色のブーツを履いてます」

おそらく私を含め、周りの数人、そして車掌までもが間違いなくこう思ったはずだ。

全部茶色やん…!

特にいちいち復唱していた車掌などは、後半声が震えていた。無理もない。

瞬時に私の頭の中で恐怖のC子像が浮かび上がってきた。
そして同時に、恐ろしい仮説が暗雲のように頭の中に立ち込めてきたのである。

全身茶色の超ロングヘアーの女、C子があのタイミングで列車を降りたのは本当に偶然だったのか。

飲み物など、こんな特急列車なら車内で買うこともできたのではないか。。。

「何がいい?」と言い残して出ていったC子の目に、何か巨大なミッションを背負った人間特有の光が宿ってはいなかったか。

コートやポーチまでも持って行って携帯だけを車内に置いていったのは、もしかすると位置情報を残すデバイスを車内に残す目的があったのではないか。何かが起こったとしても携帯のGPSの記録からC子もそこに居たとされ真相は藪の中、というヤツではないのか。。。

後ろ向きに走り出したこの列車、むしろ進んでいったのはC子で、取り残されたのは我々では無いのか。。。



危ない!この列車に乗っていてはいけない!

思わず顔を上げて叫びそうになった私ひで氏、どこかのタイミングで眠りに落ちていたようだ。

起きたのは列車が一つ目の停車駅、岐阜に着いたからである。

C子は確実にミッションを遂行して今頃はボスに報告している…そんな疑念が固まっていく横で、停車をきっかけにA子とB子が隣で電話をかけている。2人で会話をするために、音量を絞りながらもスピーカーフォンにしている。相手は、行先で落ち合うことになっていたと思われる高山の友人のようだ。

「あ、もしもしー。ごめんね。あのさ、ちょっと前にワイドビューに無事乗ったんだけど。。。C子がさぁ、乗り損ねてさぁ。」

ここで私は、なぜA子もB子もこの状況の中やけに落ち着いていたのかを悟ることになる。高山の友人がスピーカーごしに発した言葉は耳を疑うものだった。

「えーーー!また?あの子!」




ただの常習犯やったみたい。




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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (にいやん)
2016-03-06 22:58:40
待ってました!後編!
声に出して大笑いしてしまいました☆
全身茶色でコーディネートすることがこんなにおもしろいことになるなんてズルいですね(笑)
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Unknown (ひで)
2016-03-07 07:17:29
にいやんさん、
そこに姿が無いので、余計に想像が刺激されました笑!
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Unknown (なおと)
2016-03-07 22:23:18
いつものごとく爆笑です!
電車での面白体験率高いですね!

C子も居眠りでもしながら悠々と目的地まで行ったのかもしれませんね(笑)


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Unknown (ひで)
2016-03-11 07:59:38
なおとさん
僕はどちらかというとC子に近いタイプなので他人事とは思えず!コメントありがとうございます!
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