The Alan Smithy Band

The band is on a mission.

ワイドビューミステリ 消えたC子を追え(前編)

2016年03月05日 | ASB活動日誌
昔からこのブログをお読みの方やアランスミシーバンドを良く知る方ならご存知だと思うが、私は岐阜県の飛騨古川をものすごい頻度で訪れる。それはもう30年来になろうかという友人がそこに居るからだ。

昔は年に一度、夏に訪れるぐらいだったが、最近は「冬の飛騨」という上級モードの味を知ってしまい、気が付けば、というか隙あらば飛騨に行く。

2月に生まれ、幼少期を石川県は金沢で過ごし、アメリカ時代もマイナス30度を超える極寒の長い長い冬が特徴のロチェスターという街に住んでいた私ひで氏は、超のつく寒がりのくせに結局は寒いところを自ら求めて生きているのかもしれない。

今回、まさにスケジュールの間隙をついて飛騨への往復を試みた。
土曜の早朝から移動し、一泊して帰るという強行スケジュールだ。

季節のいい時はもちろん車で行くが、冬はこれまでバスを利用していた。しかし今回、少しでも時間短縮が必要だったため、初め電車で行ったのだ。奈良からだと京都から新幹線で名古屋、そしてそこから「ワイドビューひだ」という特急に乗って行くのだ。

以前アメリカミッションの時にも書いたが、列車内で数秒あれば寝てしまう私ひで氏にとって新幹線の途中下車というのは恐怖だ。

爪楊枝をまぶたに縦に挟み眠らないようにして、なんとか名古屋で降りた。

そこから、だ。地方に向かう特急というのはノスタルジックで良い。関西から金沢に行く雷鳥(サンダーバード)しかり。
ホームに向かうとすでにワイドビューひだは停車しており、しばらくしてからの出発だった。土曜ということもあり指定席は満席で、自由席の切符しかとれなかったので急ぎ足で向かった。幸い、二人横並びの席が一つ空いていたので窓側に座った。

一安心していると、「ここ、空いてますか?」と若い女性が来た。見ると女性三人の旅行で、分散して自由席の空いているところに座ろうとしているようだ。もちろんどうぞ、と言って座ってもらった。彼女をA子とする。

もう一人の女性B子はひとつ前の席の通路側が空いていたのでそこに座ったようだ。一瞬自分がそっちに代わってあげようかと思ったが、前の席の窓側にはすでにこれまた全く別の女性が座っており、突然見知らぬ男が席を替わってまで横に座ってきたら気味悪がられるだろう、と思ってやめた。

そして今回の話のキーパーソンとなる3人目の女性、C子の存在がある。C子は少し離れたところに席を確保したようだった。そのC子が二人の仲間のところ、つまり私の隣のA子とその前に座ったB子のところに来てこう聞いた。

「飲み物買ってくる。何がいい~?」

「あたし、午後ティー」「あたしは炭酸以外ならなんでも」

という何でもない会話が交わされ、C子はパタパタと駆けて行った。

この時点で私ひで氏は何を感じるでもなく窓に側頭部を当て、少しでも寝ておこう、と目をつぶっていた。
そしてその数分後、電車がガタンと揺れたことで驚いて目を覚ました。

えらい唐突だな。。。。もうちょっと、発車シマースとかプルルルとかいうのが無いのか、と思った。その瞬間、隣のA子が声を出した。


「あ?ああーーーー!」

前のB子も続く。

「え?え?待って?C子乗ってる?」

A子が携帯を取り出して急いで何やらやり取りをしている。C子とやり取りをしようとしているのだろう。
飲み物を買って戻っていればもうこの車両には来ていてもいいはずだが、微妙なところだ。

必死にメッセージを送るA子に向かって、微妙な振動音に気付いてC子の席に駆け寄ったB子が言った。

「C子の携帯、ここにある…」

手にはC子のスマホがあった。

「だめだ。。。ホームだ、あの子。。。」


お。。。おおぅ。。。私ひで氏は隣で起こった修羅場に少し姿勢を正した。かといって「乗り遅れたんですか?」などと野暮なことを言っても別に自分が電車を停められるわけでもないし、きっと聞いたところで「はい。。。」と言われるだけだろうと思ったので敢えてそっとしておいた。

この時は、C子の強烈な人物像など想像だにしなかった。

長くなったので後編へ。





最新の画像もっと見る

コメントを投稿