会津屋

東海道関宿、地蔵院前の手作りおこわと、蕎麦の店の紹介ブログです。

GWに

2009-05-05 21:35:38 | Weblog
 長かったGWも、残すところあと一日になりました。

 お陰様でお天気にも恵まれて、関宿の街道も、会津屋も、連日家族連れのお客様で賑やかでした。

 私は朝、お店に着くとまず竈に火をおこします。このGWの間は、普段よりも早い出勤です。
 
 竈に薪を放り込みながら、お湯が沸くまでの時間で具を煮ます。

 今の時期は、筍をおこわに入れているので、筍も細かい短冊に切っておきます。

 湯が沸いてきたら竈に蒸篭をかけ、上に筍を散らす。

 もち米が蒸さってきたら、具と出汁を加える。

 具を入れてもう一度蒸篭にかけて、そこからおこわが蒸しあがるまでの間に、その日に使う3点盛りのフルーツを、客数に予想を立ててカットする。


 普段の営業日なら、ここまでの作業は開店時間の前に終わりますが、このGWは開店時間前からお客様がお店に入られていました。

 早い時間に家族連れや大人数で来られたお客様は、座敷から使っていただいています。

 このGWは、座敷に上がる家族連れのお客様は、大抵小さな子供さんを連れていました。

 小さなお客様は、座敷に上がる前に奥の竈と私の方を、「何をしてるんだろう?」と興味深そうに見ています。


 私は、こちらをじいっと見つめている小さなお客様に手招きをする。


 「こっちおいで!・・・おいで!おいで!」


 私の手の動きに気づいた小さな彼女は、おそるおそる近づいて来る。


 「はい!どうぞ。  内緒な~!。」


 私は、大粒のイチゴを一粒差し出した。


 差し出したイチゴを見た小さな彼女は、緊張した顔からぱあっと笑顔になって、「ありがとう!」とイチゴを受け取った。

 大抵の子供さんは、ここでイチゴを食べずに小走りに家族の居る座敷に戻っていってしまう。
 そして、ママの肩を後ろから小さく叩き、小さな内緒声で「これ、もらった・・。」とイチゴを見せるのだ。

 この小さな子供の仕草が、なんとも言えずかわいくて、ついついイチゴを差し出してしまいます。

 私が小さいころ、郵便局に行くと、受付のおばちゃんが風船やらシールやらをくれました。

 熱を出して病院に行った時、本の付録の、紙のお雛様をもらったこともありました。

 それは、何十年も経った今でも、忘れられないサプライズプレゼントの記憶なのです。

 ちょっと予期してなかった、ちっちゃな幸せ気分。
 そんな場面に出会った子供の笑顔がかわいくて、ついつい見てみたくなってしまうのです。

 母もよく、小さな子供さんが居ると、孫のおやつに買ってきたお菓子をあげてしまいます。

 そういうところに喜びを感じるのって、やっぱり親子の遺伝でしょうか・・・?

 というか、こういうことが自由にできてしまうのも、商売の醍醐味かもしれません。


 座敷のお客様が、レジに清算に来られました。

 ママの後ろから、先ほどの子供さんが顔を出して、こっちを見てにこっと笑いました。

 「ありがとう!また来てな~!」

 ちょっとしゃがんで私が言うと、彼女はうなずいて手を振った。

 大げさかもしれませんが、一粒のイチゴのお陰で、私達は「秘密」を共有する「仲間」になれたのです。

 おかみさんと私が表に送り出した後も、彼女はママに手を引かれながら、振り返り、振り返り、手を振っている。


 観光駐車場の方向に津路を曲がるまで、振り返って手を振る彼女に手を振り返しながら、「かわいいなあ・・・。」と、どちらからともなく呟いているのでした。