IT業界では、書類上は請負契約もしくは業務委託契約なのに、開発・運用担当者を実質的に「派遣」として取り扱われる業務形態が日常化しています。しかし、これは偽装請負と言われる立派な違法行為なのです。
そして、この請負の構造が何重にも重なって多重請負となって、下手をすると五重、六重の偽装請負が行われているケースがあったりします。
このような形態で働くSEの労働上の権利が守られるはずもなく、当局に摘発されると懲役の可能性もある重い刑だという認識がほとんどないというのが実態です。
実際、現場の経験が長い私の目から見て、このような労働形態は当たり前のものとして行われていて、途中に入る会社で利益を抜かれて、末端の実作業を担当するSEの取り分は雀の涙ということが珍しくありません。
ITインテグレータとしては、企業コンプライアンス(法令順守)の観点からもこんなことは絶対にしてはいけないのですが、実際これを一気に犯罪として摘発すると、IT業界は大混乱に陥ることは必至です。
ISMS(ISO27001)の観点からも、このような点での法令違反がないか隅々までチェックしないといけません。大きなインテグレータですと、契約一件一件を全部チェックするだけでも大変な作業になると思います。
しかし、IT業界が健全に発展していくためには避けられない問題です。若者からあこがれの職業として選ばれるような、社会的にも認められる業界、職業としてSEがみられるようにならないと人口の自然減も加わって、IT技術者不足はますます深刻な事態になると思われます。
社会は、ますますITを必要としています。しかし、それを支える技術者の層は薄くなるばかりでかつ疲弊しています。この問題をどう解決するかは、単なる一企業の力だけでは解決策も出せませんが、業界と政府が一体になって今すぐにでも解決策を打ち出していく必要があると思っています。
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