いわき市・子年生まれの”オヤジ”

草莽崛起
日本人よ、歴史を取り戻せ!

北朝鮮のスパイが「敵地」日本で接近した元首相、鳩山由紀夫氏の正体とは

2016年07月17日 08時09分43秒 | 国際・社会
 過去にロシアや中国、韓国、北朝鮮などの「工作員」「諜報員」とされる人々を取材する機会があった。日本と国交がない北朝鮮以外は大使館など外交機関に籍を置いていたが、このような機関員を公安筋は「オフィシャルカバー(公的隠れみの)」と呼ぶ。

 当然のことだが彼らは自ら本来の身分を明らかにすることはない。日本の治安機関は情報を蓄積、分析して何国の誰それは機関員であると「認定」している。

 ロシア大使館の武官室は、オフィシャルカバーの巣窟だといわれる。そこにプーチン大統領の信任厚い武官がいた。彼の“本籍”は軍事諜報機関の軍参謀本部情報総局(GRU)だった。日本語は流暢(りゅうちょう)ではなかったが、年長者を差し置いて武官室のトップとなり、日本の官僚OBや企業経営者らに人脈があった。

 一方、大使館政治部に紛れ込んでいた対外情報庁(SVR)要員は安全保障関係の小さな研究会に足しげく通っていたが、筆者が知り合って間もなく胃を悪くし、10年ほど前に帰国した。

 武官は初対面の自己紹介で自分の名前を使っただじゃれで笑いを取るなど社交的だった。政治部員は日本語が流暢で話題豊富。人的魅力にあふれていた。

 話してみると2人とも特定個人の身辺情報については極めて熱心に聞いてくるが、秘密情報の収集に特別にきゅうきゅうとしている様子はなかった。武官に尋ねると「監視が厳しいですから。危ないことはしていませんよ。大事なのは人脈作りです」と話したが、人脈を何に使うのかは明かしてくれなかった。

 2010(平成22)年、米連邦捜査局(FBI)がアンナ・チャップマンという当時28歳の女を中心とするロシアスパイグループを摘発した。女は「美しすぎるスパイ」と話題になったので記憶されている読者も多いと思う。善良な市民を装う「イリーガルスパイ」で、在米ロシア大使館員の補助を受けながらSVR本部から偽装の身分・経歴と数百万ドルの資金を与えられて10年以上、活動した。

 FBIは暗号化されたSVRの極秘指令を完全に解析していた。捜査結果に接した警察庁の高官は当時、米国でのロシアのスパイの目的が機密情報の収集よりも米国の世論形成や政策決定に影響力がある層に浸透し、自国に有利な政治外交環境を作ることにあったと知り危機感を強めていた。

 「鳩山由紀夫元首相とその長男がロシア機関のエージェントとみられる人物のターゲットとなっている」

 公安当局の幹部は当時、筆者にこう明かしていた。

 在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の構成員だった康成輝(カン・ソンフィ)は、平成12年に警視庁公安部が摘発した北朝鮮工作機関によるスパイ事件の主犯である。筆者が15年に康を取材した際、携帯電話番号の下3桁は《216》で、「忠誠心を示すために金正日総書記の誕生日(2月16日)に合わせたものだ」と自慢したものだった。

 摘発当時、関係先から大量の資料が押収されたが、公安部の目を引いたのは昭和49年7月下旬に康が北朝鮮で受けた教育内容だった。

 そこには日本を「敵地」として工作の目標や公安当局の監視を免れるための注意点が記されていた。

 康は東京・新宿のキリスト教会を隠れみのに北朝鮮の命を受け、韓国で親北朝鮮ムードを醸成する工作をしていたが、日本国内でも政治・経済界への浸透工作を進めていた。

 取材時、筆者は「工作対象は、どのような人か」と尋ねてみた。康が挙げた中に鳩山元首相の名前があった。

 その後、鳩山氏への工作がどうなったのか。康が平成16年4月、死去したため、今となっては確かめようがない。

南シナ海仲裁裁定を「ただの紙くず」と言い切る中国 次は「力の行使」か スカボロー礁で人工島造成開始も

2016年07月13日 14時45分36秒 | 国際・社会
 ハーグの仲裁裁判所で下された「クロ裁定」を受けて、中国は今後どう出るか。内政第1の習近平政権にとって、裁定は対外的なつまずきになり、これを糊塗(こと)するために「力の行使」に出る危険性が高くなる。

 南シナ海の裁定により「8月の砲声を聞くことになる」と警戒感を示したのは、キャンベル元米国務次官補だった。8月の砲声とは、1914年の第一次大戦の勃発を象徴する言葉である。その物騒な事態を避けるため、日米同盟にはどんな手が打てるか。

 中国外務省は裁定の前から、仲裁裁判所には「管轄権がなく、審理を決定すべきではない」と違法性を強調していた。戴秉国(たい・へいこく)前国務委員に至ってはわざわざワシントンで裁定を「ただの紙くずだ」と言い捨てた。

 しかし、ハーグの裁定が南シナ海を勢力範囲とする「九段線」論を否定した以上、中国が裁定を無視すれば、国際社会は「国際ルールを嘲弄(ちょうろう)する無法者」(英紙フィナンシャル・タイムズ)というレッテルを貼るだろう。

 国連海洋法条約では中国のいう通り、どの手段で紛争解決するかは中国に「選択の自由」がある。しかし、この条項には第2節があって、不満があっても出席して弁明する義務があるのに、彼らはこれを故意に無視してきた。争っても勝ち目がないとの判断から、裁判所そのものを批判する奇策に出た。

 戴秉国氏は講演で、「たとえ米国が10個の空母打撃群すべてを南シナ海に進めても、中国人は怖がらない」と脅した。裁定前日の11日まで、南シナ海のパラセル海域で大軍事演習をしたことは「法の支配」を離れて「力の行使」を選択したことになる。

 「クロ裁定」を受けた側の中国にはどんなオプションがあるのか。不満の表明なら、「九段線」上空に、中国の防空識別圏(ADIZ)を設定する可能性がある。さらに米比当局者の間では、フィリピンに近いスカボロー礁でも人工島造成を開始するのではないかと警戒している。

 南のスプラトリー諸島は、中国が実効支配する岩礁や砂州の上に人工島を構築したが、スカボロー礁は2012年に支配権をフィリピンから奪い取った海域だ。しかも、米軍が再駐留をはじめたフィリピンの軍事基地に近く、カーター国防長官は「スカボローで行動に出れば相応の措置をとる」と警告している。

 米国の対中オプションにはほかに、軍事力の増強、対中経済制裁、さらに環太平洋合同軍事演習(リムパック)への中国の招待取り消しなどがある。有事になってもっとも困るのは、中国であることを認識させる必要がある。日米の貨物船は南シナ海を迂回(うかい)することが可能で、米軍はすでに海上封鎖「オフショア・コントロール戦略」を視野に入れている。

 外交的には、沿岸国のインドネシアがナトゥナ諸島をめぐる争いから、フィリピンに続いて仲裁裁判所に提訴することが現実味を帯びてきた。ベトナム、マレーシアも追随する余地があり、日米で支援することは可能だ。

 日本にとっては、中国が東シナ海にシフトしてくる可能性を視野に入れなければならない。安倍首相は沿岸国とも協調して、多国間枠組みの構築を急ぎたい。

日韓漁業交渉が再決裂…

2016年07月10日 05時18分02秒 | 国際・社会
密漁やり放題の韓国が自ら棚に上げて「中国は乱獲やめろ」というのは論理矛盾ではないか?

 日韓双方の排他的経済水域(EEZ)における漁獲割当などを決める「日韓漁業共同委員会」の交渉が決裂し、7月1日から双方EEZ内での操業が禁止となった。同交渉が決裂するのは2014年6月に続き、2度目だ。違法操業の撲滅に実効性のある対策を出さぬまま、タチウオの漁獲割当量の倍増など、身勝手な要求を突きつける韓国に対し、水産庁は厳しい姿勢を崩さぬ構えだ。韓国側の“乱獲”は、限りある水産資源の維持にとって大きな妨げとなるだけに、日本は今後の交渉にも厳格に対応するとともに、当該海域での監視を徹底する必要がある。

身勝手な要求、日本側に非を押しつけ

 「1日現在、日本のEEZ内で操業していた韓国漁船は全て、自国のEEZ内に戻りました」

 水産庁資源管理部の担当者は、当該海域の状況をこう説明する。

 16年漁期(7月1日~17年6月30日)の相互入漁継続に向け、6月22日から24日まで東京で開かれた同委員会の交渉は、合意に至らぬまま閉幕した。水産庁と韓国海洋水産部(省に相当)は、30日深夜にかけて監視船を派遣し、操業中の漁船に自国水域へ戻るよう指導する「追い出し作業」を行った。こうした対応を行うのは、初めて交渉が決裂した14年6月に続き2度目だ。

 韓国海洋水産部が29日、発表したプレスリリースによると、韓国側は漁船の採算がとれないことを理由に、現在年間2150トンのタチウオの漁獲割当量を5000トンに拡大するよう要求。認められない場合、日本のサバ巻き網漁船の漁獲割当量を減らすほか、操業禁止水域を新たに設定するなど日本側に対する規制を強化する考えを示した。

 一方、日本側はかねてから問題視してきた韓国漁船の違法操業に改善が見られないことを指摘。タチウオ漁を行う韓国のはえ縄漁船の入漁隻数を、現在の206隻から73隻に大幅に減らすよう求めたとされる。

 韓国海洋水産部は「はえ縄漁船は19年までに40隻削減することですでに合意している」と主張し、日本側に要求撤回を求めたものの、日本側がこれを拒否。さらに交渉妥結までの間、暫定的に昨年合意した条件での操業を主張したが、日本側はそれも拒否した、とあたかも日本側に責を押しつけるような内容を発表した。

 こうした韓国側の対応に、水産庁の担当者は「交渉中の事項なので、公表された数字については何ともいえない」と戸惑いを隠さない。


不調の原因は韓国の密漁、違法操業

 韓国側の主張はともかく、実際の交渉はどうだったのか。水産庁資源管理部によると、今委員会で日本側が韓国に求めたのは、大きく2点。漁獲量の過小報告など違法操業の根絶に向けた施策の徹底と、日韓暫定水域周辺の日本側EEZにおいて、韓国漁船が密漁漁具を放置する問題についての対応だ。

 日本側は14年6月の交渉でも同様の要請を行った。だが、タチウオの漁獲量を1万トンに増やすよう要求する韓国側と折り合わず、交渉は破談。半年近く相互入漁できぬ状態が続いた。15年1月の交渉で韓国側が違法操業への対策を強化する一方、韓国のタチウオの漁獲量を50トン増やすことなどで合意し、16年6月末まで17カ月間の漁期を認めた経緯がある。

 しかし、この合意にもかかわらず韓国による違法操業は頻発している。11年漁期に11件だった韓国漁船の違法操業による拿捕件数は、12年漁期(9件)▽13年漁期(15件)▽15年漁期(9件)と目立った改善が見られない。今年3月にも鹿児島県沖の日本側EEZ内で、アマダイなど4トン超を漁獲しながら、操業日誌には3.2トンしか記載せず、漁獲量をごまかした不実記載の疑いで、水産庁の漁業取締船が韓国はえ縄漁船を拿捕した。

 また日本海では、韓国の密漁船が投棄したとみられるカゴや網などの漁具による漁場汚染の問題も深刻だ。取締船に見つかった密漁船が、網やロープを切断して逃げた際に放置された漁具は、日本の底引き漁船の網などの破損の原因となるほか、放置された漁具に捕まった魚が死んでしまう「ゴーストフィッシング」(幽霊漁業)の原因ともなっている。

 「昨年の交渉で韓国側は『違法操業への対策を実行する』と約束したので、入漁再開を了承した。しかし、その後具体的な対策はほとんど履行されておらず、漁獲量をごまかす違法操業は続いている。こうした状況では水産資源を保護するための漁獲枠が全く意味をなさない」

 水産庁はこう憤る。


韓国メディア、ピント外れの論評

 こうした実態は、韓国にどう伝わっているのか。同委員会の交渉が不調に終わったことを報じた京郷新聞は、過去1年半の相互入漁による韓国の漁獲量が約3万7000トンなのに対し、日本は約3900トンと10倍近い開きがあることを上げ、「韓国EEZ内で日本の漁船が得る利益は相対的に小さいため、日本政府は強硬な姿勢に出ている」と指摘した。

 また韓国日報は、福島県など8県の水産物に対する韓国政府の禁輸措置が不当として、日本が世界貿易機関(WTO)に提訴している問題を取り上げ、「参院選を控えた日本政府が、韓国に圧力をかける姿勢をアピールする意図があるとの分析もある」と論評した。いずれも、いささかピント外れだ。

 そんな韓国だが、自国EEZ内では中国漁船の違法操業に悩まされている。「乱獲による周辺海域への被害が大きい」として軍を動員した中国漁船の掃討作戦を始めたほか、6月に行われた中韓首相会談では、中国に対し取り締まり強化を求めるなど、日本EEZ内での振る舞いを棚に上げたような対応だ。

 こうした韓国の“矛盾”には苦笑を禁じ得ないが、水産資源の持続的な活用には、乱獲を防ぐための国際的な協調が不可欠だ。日本側の苦言を、韓国が真摯に受け入れなければ「ご都合主義」とのそしりは免れない。

目良浩一の米西海岸リポート

2016年07月09日 10時44分58秒 | 国際・社会
グレンデール市慰安婦像撤去訴訟の深層…提訴から2年余りでようやく公正な裁判に

最初は公判さえ開かれずメールで…

 私が原告団を率いて米カリフォルニア州グレンデール市の公園に建てられた慰安婦像の撤去を求めて同市を相手取って起こした裁判は、2014年2月の連邦裁判所ロサンゼルス地区支所への提訴から2年以上が経ちました。

 われわれは「グレンデール市が、連邦政府の権限である外交問題に関して直接に態度を表明したことは、連邦政府に外交権限を独占的に付与した米国の憲法に違反する」として、市が設置した慰安婦像の撤去を求めました。

 しかし、連邦裁の判事はグレンデール市などに住む原告が受けた被害と、市が越権行為をしたとされる慰安婦像の設置との関連性が希薄であるという理由で、われわれの訴えを棄却しました。

 しかも、判事は公判さえ開かずに「原告には訴訟を起こす資格がない」との判決文をこちらの弁護士にメールで知らせただけでした。われわれは門前払いを食いました。反論する機会さえなかったのです。

 われわれは控訴することを決めました。ところがわれわれの弁護団が、シリコンバレーに影響力を持つ中国系の団体に脅されたため撤退してしまいました。弁護団の会社はシリコンバレーに多くの顧客を持っているためです。新たな弁護人の選定を強いられるなど体制を整える時間を要しましたが、ようやくこの6月7日に控訴審の日を迎えることができました。


裁判らしい裁判に

 控訴審はカリフォルニア州パサデナ市にある第9連邦高等裁判所の支所で行われました。担当判事はベテランのラインハルト判事、鋭い質問を浴びせる女性のワードロー判事、ニューヨークから派遣されたコーマン客員判事の3人でした。原告の弁護士と被告であるグレンデール市側の弁護士がそれぞれ15分を与えられて陳述を行いました。その間、判事は質問を浴びせ、弁護士はそれに必死で答えます。この日の公判は38分続きました。

 今回の控訴審は弁護士が陳述して判事が質問し、弁護士がそれに回答するという形で進み、質疑応答は法律の解釈やそれを支持する判例の指摘などで法律論が交わされました。判事は関連する判例を熟知していたとみられ、双方の弁護人に鋭く質問していました。

 第一審の判事とは違い、高裁には質の高い判事が確保されている印象を受けました。判事の鋭い質問にそれぞれの弁護士がたじろぐ場面もありましたが、被告側の弁護士の方が長い時間をかけて答えを探していたようでした。


ようやく本論に

 控訴審の主な争点は、原告に訴訟を起こす資格があるのかという点にありました。第一審では「原告は資格が無い」とされましたが、高裁では何とかわれわれの正当性が認められる可能性が高まったと思われます。

 これは、3人の判事がそれぞれの弁護士に再質問する際、その質問内容と回答に対する反応から、判事がどちらに傾いているかを判断することが可能であり、その反応から推察したものです。

 実際に「原告は資格がある」となると、第一審に差し戻されて、原告が求めている要求に十分な根拠があるかどうかが審議されることになります。

 今回の公判について、もう1点指摘するとすれば、判事の質の違いだけでなく、第一審にみられたような政治的な色彩が見られなかったことです。

 われわれは2014年9月には州の裁判所でも裁判を起こしましたが、これまでの公判は「慰安婦問題は日本軍の悪行」が前提となって、「日本軍の行動を弁護するような原告はとんでもない」といった雰囲気が強く感じられました。

 しかし今回の控訴審では法律論が戦わされ、「やっと本論に入った」との印象を受けました。米国にも正義があるかも知れないとも初めて思った瞬間でした。

 傍聴席には、慰安婦像設置を推進する韓国系団体の代表、フィリス・キム氏と彼女の弁護士、グレンデール市を担当する弁護士事務所の研修生10人ほどの姿がありました。同市の弁護士はかなり判事に追い詰められたので、公判後は控室で深刻な様子で会議を開いていました。


今後の見通しは…

 今回の控訴審の判決は近く発表されますが、それが7月になるのか、もっと遅くなるのかはわかりません。

 実は控訴審にあたっては世界で反日活動を展開する「世界抗日戦争史実維護連合会(抗日連合会)」によるアミカス(参考資料)の提出が認められました。われわれ原告はこれに対する反論を提出するための許可を求めており、それが許可されれば判決が更に延期される可能性があります。

 抗日連合会は、例によって日本軍が悪行を働いたと主張しています。われわれはこの主張が判事の見解に影響を与えることを防ぐために、慰安婦に関する正しい事実関係を提出する用意があります。

 連邦裁判所に関しては、すでに2年以上の年月が経ちましたが、実はまだ始まったばかりです。高裁が第一審への差し戻しを判断すれば、そこで証拠の提出や証言が求められ、その準備のために弁護士費用もかさみます。

 米国の有能な弁護士は、1時間当たり少なくとも700ドルかかり、弁護士3人で一つの書類を作成するとすぐに10万ドルほどになります。2014年2月20日に連邦裁判所のロサンゼルス地区支所に提出した訴状作成には13万5千ドルかかりました。

 弁護士費用を値切れといった質問・助言も受けます。可能かもしれませんが、著名な弁護士事務所は2国間の紛争に関わるのを嫌がる傾向があります。能力があり、かつこの種の訴訟を引き受けてくれる有能な弁護士事務所はほとんどありません。現在の弁護団は高度な専門知識と訴訟技術を持つ方々であることに疑いはありません。

 このようにさまざまな困難がある裁判なのですが、何よりも最大の困難は米国では「慰安婦は性奴隷であった」とする説が常識となっていることです。しかし、いま撤去を求めなければ不名誉な像は永遠に残ります。座して死を待つのではなく、あくまで日本人の名誉を維持するために像の撤去ために闘います。


慰安婦問題に関する日韓合意後、米国で対日批判は激化 日系人コミュニティーへの圧力も…

日韓合意後の米国における慰安婦旋風は…

 昨年12月に、日韓両政府は慰安婦問題について合意しました。合意は、両政府が慰安婦問題を最終的かつ不可逆的に解決し、お互いを国連などの場で非難・批判をしないこと、日本政府は元慰安婦の苦痛を癒すために約10億円を韓国が設置する財団に拠出するとの内容です。

 日本の多くの人はこの合意によって、慰安婦問題は解決したと感じているようですが、それは間違いです。米国では慰安婦問題を通じた対日批判は激化しています。例えばカリフォルニア州で慰安婦像の設置を推進する「カリフォルニア州韓国系米国人フォーラム」(KAFC)はホームページに堂々と、自分たちは韓国政府と関係がないので今までの運動を継続すると公言しています。

 米国務省は日韓合意を歓迎し、民間にも合意を尊重するように訴えていますが、それを強制する手段を持っていません。つまり、合意は単なる“希望条項”なのです。

 韓国内では元慰安婦らが韓国政府は自分たちに相談せずに日本政府と合意したとして、合意に反対を唱えています。それに呼応するように元慰安婦たちによる米国訪問は、日韓合意後、明らかに頻繁になっています。

 今年2月には、複数人の元慰安婦が米東海岸の都市を訪問して、自分たちの「体験談」を発表しました。3月には、いわゆる“スター慰安婦”になった李容洙(イ・ヨンス)がカリフォルニア州上院を訪問し、人権問題に貢献したとして州上院から感謝の言葉をうけました。また、今まで慰安婦問題に関する活動がなかったテキサス州にある南メソジスト大学でも、4月に元慰安婦の「体験談」を聴く会がもたれました。


日本総領事館は日本人女性の訴えを無視…

 東海岸のニューヨーク市のビジネス街中心部では、毎日のように韓国系の人が慰安婦に関する日本政府の責任を追及するプラカードを掲げて、道行く人に訴えています。

 一方、サンフランシスコ市では、中国系が中心となって市の公共施設内に慰安婦記念碑を設置する案が昨年浮上しました。日本人や日系人などの反対に関わらず、昨年9月には設置案が市議会で可決され、現在、記念碑の具体的な形状や碑文の文言が検討されている状況です。

 サンフランシスコ市は、中国系の人たちの影響力が強大で、彼らの意向に反対するには相当の覚悟が必要です。それにもかかわらず、市議会では同市に居住する数名の日本人女性が反対の声を挙げました。

 しかし、中国系の人たちの圧力に押され、さらには在サンフランシスコ日本総領事館にも無視されて非常に悔しい思いをしています。われわれの団体「歴史の真実を求める世界連合会」(GAHT)も女性たちを支援しましたが効果はありませんでした。

 慰安婦記念碑と同時に動いているのが、カリフォルニア州の教育委員会が検討している公立高校の歴史・社会科学のカリキュラムで「性奴隷」として記述された「慰安婦」を人権侵害の代表的事例として追加する案件です。

 この案件は、昨年11月に教育委員会で採択され、今年1月から2月に一般からの意見を聴取する期間が設けられました。GAHTも反対意見を提出し、高等学校の教師の経験のある米国人や退役軍人の方などに、反対意見を提出するように働きかけました。日本からも「なでしこアクション」を通じて、多くの反対メールが発信されました。ご丁寧にも、サンフランシスコ市議会はこの州の案件にも最近、賛成決議をし、州教育局の動きを支援している状態です。

全米日系人博物館で慰安婦映画上映

 このような状況の中、ロサンゼルスにある全米日系人博物館で「破られた沈黙」という元慰安婦のドキュメンタリー映画が4月27日に上映されました。

 全米日系人博物館は第二次大戦勃発直後に、日本人と日系米国人が強制収容所に収監された経験を後世の人々に伝えるために建てたものです。日系人は博物館維持のために、毎年大々的な寄付をしています。日系人の浄財で建てられたものです。

 映画は2000年に韓国人監督によって制作されました。歪曲された慰安婦の経験を描いた映画で、強烈な反日の道具です。こともあろうにこの映画は日系米国人の心のふるさとである全米日系人博物館で上映されたのです。

 映画の上映は「アジア映画祭」の催しの一環でした。主催者が多数の映画を複数の上映施設に割り当てたので、全米日系人博物館は割り当てられた映画をそのまま上映することになったのかもしれませんが、その割り当ては意図的なものであった可能性が高いとみられています。また、全米日系人博物館側は、映画の内容を検討することもなく、上映を引き受けたのかもしれません。

 GAHTは、映画の上映には問題があるとして、博物館館長に、慰安婦問題に関する事実を歪曲して、日本国を貶めるような映画を全米日系人博物館で上映することに強く反対し、上映を拒否するべきであるとの抗議の手紙を出しました。

 残念ながら映画は上映されました。われわれの知る限りでは、当日の観客数は40人ほどで、グレンデール市の慰安婦像建立の立役者であるKAFCのフィリス・キム氏も来ていました。


日系コミュニティへの圧力

 ロサンゼルス周辺では、中国系や韓国系の人口増に伴い、日系人社会への圧力が増しています。全米日系人博物館のあるリトル・トウキョウにある店舗などの経営者が日本人から中国系、韓国系の人に代わってきています。中韓系は日本人店舗などの売却を推進するために意外な手段を使うこともあります。

 例えば、連邦法で義務づけられている車椅子でのアクセスができないなどの理由をつけて立ち退き目的で訴え、売却させるのです。このような手段によって、日本人オーナーが低価格で物件を手放すケースがかなりあるようです。日本人・日系米国人はこのような脅しに馴れていない人が多くて、彼らの餌食になっているようです。


リトル・トウキョウの老人施設売却は日系人社会の亀裂を露呈しました 背後には不穏な勢力が…

リトル・トウキョウの高齢者施設は日系人の財産だった…

 日本から米国への移民は19世紀後半から始まり、1924年の米政府による日本人移民禁止令まで続きました。現在の在米日系米国人は3世から5世が中心です。

 一世と呼ばれた日系人たちは、ロサンゼルス中心部に「リトル・トウキョウ」を作りました。61年には8人の著名な日系人が主導、協力して老人のための居住施設を設置しました。この施設は、70年代に居住者が自立して居住できる施設、ある程度の看護の必要な人たちの施設、そして常に看護が必要な人たちのための施設などの4つの異なる施設になり、計600人強を収容できる施設に成長しました。

 施設では日本の文化が維持され、日本食が提供され、日本語で生活できるという環境が維持されてきました。この施設は、日本の財界をはじめ、日本企業や一般人からの寄付金などの浄財によって建設され、そして多くの人のボランティア活動によって運営され、存続されて来ました。在米日系人が誇ることができる貴重な財産でした。


営利企業に売却されるとどうなるか…

 ところが、施設の運営を担っている非営利団体「敬老シニアヘルスケア」の理事会の考えは異なっていたようです。

 理事長のショーン・ミヤケ氏が4施設を不動産・開発を行う営利会社のパシフィカ社に売却するという発表をしました。施設設立の最後の著名人であるジョージ・アラタニ氏の逝去を待っていたかのように、同氏が亡くなった翌年の2014年のことでした。ただ、この時は売却価格をめぐって州政府から問題が出されて立ち消えになりました。

 ところが、昨年9月にパシフィカ社と売買契約が成立したと正式に発表されました。施設は非営利団体でかなりの費用を寄付金で賄う体制なのに、営利企業のパシフィカ社が購入すればサービスはかなり異なった性格になることが考えられます。

 敬老シニアヘルスケアとパシフィカ社の契約内容を検証してみると次のことが判明しました。

・売却価格は4100万ドル(約41億8000万円)

・5年間は現在のサービスを維持するが、その後の制約はなし

・最初の1年間はサービス料の値上げに制約あり

 すなわち、5年後には土地使用も含めて全く異なった事業を始めることができるのです。都市センターに近く、夜景を見るにはもってこいの場所なので高級マンションに建て替えることも可能です。4つのうち2つが入っている主要施設は土地が5エーカー(約2万平方m)あるので土地利用の転換は十分に考えられます。

売却反対運動が起きたものの…

 売却の計画が明らかになると、ロサンゼルス周辺の日本人や日系米国人からかなりの反対の声が上がりました。日系米国人を中心として「敬老救済特別委員会」が結成され、売却反対運動が展開されました。日本人有志も集会を開き反対の意思を表明しました。

 反対の主要な理由は、日系社会が築き上げてきた貴重な資産が失われることでしたが、ここで日系社会の隠れた亀裂が露呈することになりました。

 ミヤケ氏らは、旧移民の日系米国人は現在では完全に米国人になっていて日本語や日本食のサービスは不要であること、そしてそうしたサービスが必要な戦後の移民である「新一世」については、自分たちとは関係がないので新しく日本から来た移民のために施設を維持する必要はないとする意見を表明したのです。

 つまり旧来の日系人は新一世には、全く近親感を持っていないということが明らかになったのです。

 非営利法人の売却には公聴会の開催が条件となっています。しかし、この事案で公聴会は開催されていません。この点について施設の売却を承認したカリフォルニア州司法長官に問い合わせたところ、「公聴会は免除して(施設売却の)許可を下した」との回答がありました。それも中国系の副司法長官からの回答でした。この決定は不当であるとして、敬老救済特別委員会が売却中止を法廷に訴えましたが、却下されました。

 昨年11月には敬老救済特別委員会の主催で、新旧移民合同の大規模集会が開かれました。500人が参加し、州選出の連邦下院議員などの応援演説もあって反対派の気勢はあがりました。

 しかし、連邦議会の議員といえども、州の決定には影響力はありません。結局、今年2月には売買契約が実行されることになってしまいました。

売却の背後にある不穏な勢力

 先に述べたように、日本人と日系米国人との間には亀裂があります。日本に住んでいる人は、日系米国人は親日であると思っているようですが、彼らは1942年の日米開戦後の日系人の強制収容所行きについては、日本が無謀にも真珠湾を攻撃したせいで日系人が大きな迷惑をこうむったと信じているので、一般的に親日的ではありません。

 また、最近の新一世が裕福な生活をしていることも、苦労して財や地位を築いてきた旧来の日系人を反日にする要因にもなっているようです。現在の施設利用者の大多数は新一世で、彼らのために貴重な財産を残す必要はないと思っている日系米国人が多いのです。

 敬老施設売却問題は、数多くの疑問を日本人と日系社会に投げかけています。

 まず、ショーン・ミヤケ氏を中心とする理事会の不可解な動きです。敬老施設は赤字で、多額の寄付金が必要だと言われていました。ところが、蓋を開けてみると経営は黒字だったのです。

 すると、施設売却後に残った資産をどのように使うのかという疑問が出てきます。ミヤケ氏らは日系の老人の福祉増進のために使うと言明していますが、具体的な使途は示されていません。今までの施設運営こそが、最も有効な老人の福祉の増進方法であると思えるのですが。

 そのミヤケ氏は、売却から4カ月間、音沙汰がなく、まるで日系社会から消えてしまったかのようでした。ところが突如、6月28日になって、月末をもって理事長職を辞任すると発表しました。まったく無責任な行動です。

 次の疑問は、この売却に関してどのような力が働いたかということです。前述したように、日本人や日系人にはさまざまな外的な力が働いています。施設を購入した会社はインド系の人が興した会社です。そして、認可を出したのは中国系の役人です。

 マイク・ホンダ氏を含むカリフォルニア州選出下院議員16名が連名で売却に反対の意見を表明しましたが、売却阻止は不可能であることを見越しての人気取りのジェスチャーだったようです。

 ホンダ氏を強力に推していた反日中国系の団体からは私個人に対して「このように応援しているのであるから、恩を仇で返すな」というメールが届きました。暗に、慰安婦像撤去を求める裁判を中止しろという意味のようです。

 一方、日系人や日本人はまとまりに欠けていて、それらの圧力に対抗する十分な力を持っていないように思えます。日系人と日本人が対立するような状況になっていることは悲しいことです。

 日本人に対する慰安婦攻勢に始まり、リトル・トウキョウにおける経営者交代から全米日系人博物館における慰安婦映画の上映、日系敬老施設の売却、高等学校の歴史教科書に「間違った慰安婦の記述を入れる」ことなど一連の動きを見ると、この地の日系社会に揺さぶりをかけて分断し、日系社会を壊滅させようとする大きな力が働いているのではないかとさえ感じます。

 こうした状況が目の前で起きているのですが、ロサンゼルス総領事館を含む日本の外務省はハリウッドにジャパン・ハウスを設置して、アニメや日本食などのプロモーションをすることに熱中しているのです。


中露連携、テロの大波…世界の秩序崩壊に日本は耐えうる国家に

2016年07月08日 16時39分36秒 | 国際・社会
 「世界秩序の崩壊」といえるような事態が進んでいる。この1カ月間だけでも、内外から伝えられるニュースに多くの日本国民は驚きを禁じ得なかったはずだ。

各地に広がる衝撃と懸念

 6月9日からの1週間の間に、まずロシアと中国の海軍艦艇が、時を同じくして、尖閣諸島の領海のすぐ外側の日本の接続水域に侵入した。ついに尖閣周辺に中国海軍が「出てきたか」との思いとともに、「中露連携」の可能性は当然ながら大いに気になるところだ。しかもその数日後、中国海軍の軍艦が今度は鹿児島県の口永良部島の領海を通過し、さらに16日には沖縄県北大東島の接続水域にも侵入した。もはや、その「メッセージ」は明らかで、恐れられていた事態がついに現実になったのである。

 参院選公示の翌々日の6月24日、英国の欧州連合(EU)離脱を決定した国民投票のニュースが日本をはじめとする世界のマーケットに激震を走らせた。

 しかしそれ以上に、この出来事は「戦後世界の秩序の支柱」であったEUの「終わりの始まり」と目され、それと表裏一体の存在である北大西洋条約機構(NATO)の安定も大きく揺るがすことになるのでは、との懸念が今、世界中に広がっている。アメリカを中心とする戦後世界の代表的な安全保障の枠組みであるNATOが動揺すれば、日米安保体制にも影響するのは必至だ。こうしてEU離脱は、地球の裏側にまで歴史的な波紋を及ぼす、という声まで聞かれ始めた。しかし、さきの中国海軍の動きを見れば、それはあってはならない事態である。

 そして7月1日の夜、突如としてバングラデシュの首都ダッカでのイスラム過激派によるテロで日本人7人の貴い命が奪われた、という衝撃的なニュースが飛び込んできた。これほどの日本人の犠牲者を出したのは、2013年1月のアルジェリアのガス田施設でイスラム武装勢力によって10人の日本人を含む多数の犠牲者を出したテロ事件以来だ。しかしこの翌々日にはイラクのバグダッドでも、過激派組織「イスラム国」(IS)の仕業とみられる爆弾テロが起こり、5日までに250人に上る死者を出している。

秩序は崩壊のプロセスに入った

 まさに4月8日の本欄でも書いたように「テロの大波」が地球を覆い始め(「『妖怪』生んだ米国の戦略的過ち」)、ついに本格的にアジアにまで波及し、日本人にも繰り返し悲惨な犠牲者を出すようになったのである。

 「冷戦後の世界秩序」と称されたものが、今や本格的な崩壊のプロセスに入っていることは明らかだ。

 実は、今から20年余り前の1990年代半ば、国際政治の担当教員として京都大学に赴任したときから、私は毎年4月の学年はじめに「冷戦後の国際政治の動向」と題し次の5つの趨勢を列挙して講義をスタートさせた。いわく、(1)中東秩序の崩壊とテロの蔓延(2)ロシア民主化の反転(3)中国の膨張と軍事大国化(4)EU統合の挫折(5)唯一の超大国アメリカの衰退と「孤立主義」化-である。

 このように話し出すと、はじめは神妙に聞き入っていた学生たちも(3)から(4)に及んでくると、「この先生は教授とのことだが、果たして大丈夫か」と心配げになり、そして(5)に至ると、もう腰を浮かせ「他の授業を見にいこう」と教室を出ていく。はじめの内はなぜだか分からなかったが、考えてみると当時、日本のメディアや学界・経済界で広く大勢になっていた見方とこれはあまりに違いすぎる。さすがに京都大学の学生は優秀で、世間に流布している情報はよくフォローしているな、と妙に感心したものだ。

回避し続けた憲法9条改正

 しかし、これは学者としての確信に基づく持説だから、如何ともしがたく2012年の定年退職まで一貫して私はそう論じてきた。そして、とりあえず今のところ(5)を除くと、これらの私の予測は大筋で的中しているのではないか。

 これは何も、自らの予測の正しさを誇示して言うのではない。むしろ私自身、他のだれよりもこうした事態の到来を何とか避けることができれば、と心から願っていた。どれ一つとして、この日本という国にとって耐えうる事態ではないからだ。

 それにもかかわらず、この二十数年間、日本は「眠り続けた」のである。日本にはなぜ、かくも先見の明が欠けていたのか。それは安全保障、外交の自立、とりわけその大前提である憲法9条の改正に真剣に取り組むことをひたすら回避し続けてきたからである。

 しかも他の国ならいざ知らず、日本だけはこうした世界情勢の悪化にことのほか耐えられない国であるにもかかわらず、この全く初歩的かつ自明な課題にすら解決の努力を怠り続けてきたのである。世界の変化を見落としたのも当然のことだった。

 今こそ、憲法9条の改正に正面から取り組めるような参院選の結果を心から望んでいる。

京都大学名誉教授・中西輝政