いわき市・子年生まれの”オヤジ”

草莽崛起
日本人よ、歴史を取り戻せ!

中露連携、テロの大波…世界の秩序崩壊に日本は耐えうる国家に

2016年07月08日 16時39分36秒 | 国際・社会
 「世界秩序の崩壊」といえるような事態が進んでいる。この1カ月間だけでも、内外から伝えられるニュースに多くの日本国民は驚きを禁じ得なかったはずだ。

各地に広がる衝撃と懸念

 6月9日からの1週間の間に、まずロシアと中国の海軍艦艇が、時を同じくして、尖閣諸島の領海のすぐ外側の日本の接続水域に侵入した。ついに尖閣周辺に中国海軍が「出てきたか」との思いとともに、「中露連携」の可能性は当然ながら大いに気になるところだ。しかもその数日後、中国海軍の軍艦が今度は鹿児島県の口永良部島の領海を通過し、さらに16日には沖縄県北大東島の接続水域にも侵入した。もはや、その「メッセージ」は明らかで、恐れられていた事態がついに現実になったのである。

 参院選公示の翌々日の6月24日、英国の欧州連合(EU)離脱を決定した国民投票のニュースが日本をはじめとする世界のマーケットに激震を走らせた。

 しかしそれ以上に、この出来事は「戦後世界の秩序の支柱」であったEUの「終わりの始まり」と目され、それと表裏一体の存在である北大西洋条約機構(NATO)の安定も大きく揺るがすことになるのでは、との懸念が今、世界中に広がっている。アメリカを中心とする戦後世界の代表的な安全保障の枠組みであるNATOが動揺すれば、日米安保体制にも影響するのは必至だ。こうしてEU離脱は、地球の裏側にまで歴史的な波紋を及ぼす、という声まで聞かれ始めた。しかし、さきの中国海軍の動きを見れば、それはあってはならない事態である。

 そして7月1日の夜、突如としてバングラデシュの首都ダッカでのイスラム過激派によるテロで日本人7人の貴い命が奪われた、という衝撃的なニュースが飛び込んできた。これほどの日本人の犠牲者を出したのは、2013年1月のアルジェリアのガス田施設でイスラム武装勢力によって10人の日本人を含む多数の犠牲者を出したテロ事件以来だ。しかしこの翌々日にはイラクのバグダッドでも、過激派組織「イスラム国」(IS)の仕業とみられる爆弾テロが起こり、5日までに250人に上る死者を出している。

秩序は崩壊のプロセスに入った

 まさに4月8日の本欄でも書いたように「テロの大波」が地球を覆い始め(「『妖怪』生んだ米国の戦略的過ち」)、ついに本格的にアジアにまで波及し、日本人にも繰り返し悲惨な犠牲者を出すようになったのである。

 「冷戦後の世界秩序」と称されたものが、今や本格的な崩壊のプロセスに入っていることは明らかだ。

 実は、今から20年余り前の1990年代半ば、国際政治の担当教員として京都大学に赴任したときから、私は毎年4月の学年はじめに「冷戦後の国際政治の動向」と題し次の5つの趨勢を列挙して講義をスタートさせた。いわく、(1)中東秩序の崩壊とテロの蔓延(2)ロシア民主化の反転(3)中国の膨張と軍事大国化(4)EU統合の挫折(5)唯一の超大国アメリカの衰退と「孤立主義」化-である。

 このように話し出すと、はじめは神妙に聞き入っていた学生たちも(3)から(4)に及んでくると、「この先生は教授とのことだが、果たして大丈夫か」と心配げになり、そして(5)に至ると、もう腰を浮かせ「他の授業を見にいこう」と教室を出ていく。はじめの内はなぜだか分からなかったが、考えてみると当時、日本のメディアや学界・経済界で広く大勢になっていた見方とこれはあまりに違いすぎる。さすがに京都大学の学生は優秀で、世間に流布している情報はよくフォローしているな、と妙に感心したものだ。

回避し続けた憲法9条改正

 しかし、これは学者としての確信に基づく持説だから、如何ともしがたく2012年の定年退職まで一貫して私はそう論じてきた。そして、とりあえず今のところ(5)を除くと、これらの私の予測は大筋で的中しているのではないか。

 これは何も、自らの予測の正しさを誇示して言うのではない。むしろ私自身、他のだれよりもこうした事態の到来を何とか避けることができれば、と心から願っていた。どれ一つとして、この日本という国にとって耐えうる事態ではないからだ。

 それにもかかわらず、この二十数年間、日本は「眠り続けた」のである。日本にはなぜ、かくも先見の明が欠けていたのか。それは安全保障、外交の自立、とりわけその大前提である憲法9条の改正に真剣に取り組むことをひたすら回避し続けてきたからである。

 しかも他の国ならいざ知らず、日本だけはこうした世界情勢の悪化にことのほか耐えられない国であるにもかかわらず、この全く初歩的かつ自明な課題にすら解決の努力を怠り続けてきたのである。世界の変化を見落としたのも当然のことだった。

 今こそ、憲法9条の改正に正面から取り組めるような参院選の結果を心から望んでいる。

京都大学名誉教授・中西輝政 

中華帝国を復活させたい習近平政権、戦略根底に東シナ・尖閣・沖縄も〝欲しい〟…危機感なき日本

2016年07月08日 10時32分42秒 | 国際・社会
領土の概念なし

 秦の始皇帝が武力で中国を統一する前は、中華帝国は存在しなかった。そのいろんな国があった時代に、中国の文化は繁栄した。多くの思想家が生まれたが、例えば「論語」を書いた孔子は、統一された後の中国で生まれたら粛正されるだろう。紀元前221年の始皇帝の中国統一が歴史の不幸の始まりだ。

 次の漢王朝(前漢と後漢)は周辺の国々に朝貢させる冊封体制により、中国を頂点とした華夷秩序を作り上げた。「華」は中国、「夷」は周辺はみな野蛮民族という意味。漢王朝の最初の頃は周辺地域の内政にあまり干渉しなかった。ある意味ではやさしい覇権主義だったが、前漢の武帝が登場する時代に圧倒的な軍事力と経済力を持つようになり、周辺の国々を滅ぼして土地を奪う侵略政策を進めた。朝鮮半島や南越(ベトナム)、西に向かってはほぼ中央アジアにまで拡大し、大帝国になった。今の中国のエリートにとって心の中の一番の英雄が武帝。この時代を再び実現したいと思っているのが習近平政権である。

 後漢が滅ぶと、三国志で知られる内戦と分裂の時代になる。その後、晋王朝も短命で、南北朝の時代がしばらく続く。

 再び統一するのが隋。この時代は高句麗が強かった。随は高句麗征伐を3回くらいやったが、ことごとく失敗に終わった。それがひとつの原因となって隋王朝は滅ぶ。中国だけ統一しても永続しない。外国侵略を成功させてこそ、中華帝国は長続きできるという法則ができる。

 邪馬台国の卑弥呼(2~3世紀)は朝貢したが、推古天皇の時代に政治をつかさどった聖徳太子(6~7世紀)は隋の煬帝(ようだい)に「日出ずる処(ところ)の天子、書を日没する処の天子に致す」という国書を出した。煬帝は非常に怒った。一説には「日出ずる処」の表現が逆鱗にふれたといわれるが、中国にとって問題なのは日本が「天子」と称したこと。中華思想では中国こそ世界の中心で、天子である皇帝こそが世界全体の唯一の主(あるじ)。日本の天皇と称するものが天子と称すのはけしからん、となる。

 中華思想には領土という概念がない。分かる範囲のすべての土地はすべて、中国皇帝のもの。だから国境も存在せず、永遠に拡大する同心円的な世界観がある。あまりに遠い山など、中国が支配したくない場合は現地の民族に任せるが、そこも理論的には中国のもので、いつでも支配できるというのが中華思想。日本もその気になれば中国の土地になるという考えだ。

 聖徳太子が出した国書は、日本という国のいわば独立宣言。もはや中華帝国の属国ではない。むしろ中国と対等の立場に立つと。実際にそうなった。以来、中国と貿易をしたいために朝貢の形をとった足利義満の例外はあるが、日本は中国に朝貢してこなかった。危なかったのは民主党の鳩山政権。あと2~3年続いていたら…。とにかく、東アジアの中で唯一、朝貢せずに華夷秩序の外に身を置いて独立を保ってきたのが日本という国だ。


本性隠した改革政策

 侵略戦略、覇権主義、中華秩序。そういう考え方を受け継いで、中華帝国の復活を図っているのが習政権だが、実は習政権に始まったわけではない。

 1949年に中華人民共和国を建国した毛沢東も、漢の武帝や唐の太宗になるべくして、まず着手したのが侵略戦争だった。建国の翌年、当時は完全な独立国家だったチベットに軍隊を派遣した。新疆ウイグルや内モンゴルも支配し、朝鮮半島にも出兵した。要するに中国は、歴史を繰り返している。

 ただ、領土の拡大につながったのはチベットとウイグル自治区だけで、ほとんどが失敗に終わった。西側とも旧ソ連とも対立し、中国は完全に孤立した。毛沢東にとってかわった鄧小平は、毛時代の27年間を反省する。アジアで一番戦争をしたが得るものが少なかった理由を、経済力も軍事力もなかったからであると結論づけた。そして、しばらくは経済の成長に専念する政策へ転換を図る。中華帝国の本性、つまりアジア支配の野望を覆い隠し、ソフト路線で日本や米国と良い関係をつくって成長の起爆剤にする改革開放政策だ。

 これが成功し、中国は世界第2位の経済大国、日本を圧倒するほどの軍事大国となった。習政権が赤裸々な対外膨張戦略を打ち出しているのは、野望を覆い隠す必要がなくなったからだ。漢の武帝以来の伝統的な華夷秩序路線に戻ったのである。


一番邪魔なのが米軍

 (習政権が)具体的に進めているのが、中国を中心とした新しい華夷秩序の経済版であるアジアインフラ銀行(AIIB)と、南シナ海の軍事拠点化だ。

 世界の貿易にとって、南シナ海ほど重要な海域はない。ここを中国海軍が支配すれば、だれも中国に反抗できなくなり、おのずと華夷秩序ができあがる。東シナ海、尖閣、朝鮮半島、そして、おそらく沖縄を手に入れることも彼らの戦略の根底にある。

 (中国が)軍事的にアジアを支配していくのに、一番邪魔なのが米軍。まずは、沖縄から米軍を撤退させようとしている。

 政治、軍事、経済でアジアを支配する習政権の全面戦略の延長線上に、先月の中国海軍による尖閣・接続海域への侵入や領海侵犯、自衛隊機への危険な行動がある。一連の事件は決して偶然ではない。

 習政権の侵略的な展開は日本にとって、蒙古襲来以来の国難だと思う。こうした中国の軍事的な動きに対して、日本のマスコミは反応しない。中国軍艦が領海侵犯したあの数日間に、日本のテレビは一斉に上海ディズニーを紹介していた。危機感がないことこそ本当の危機だ。