上陸許可から45時間後、一人、また一人とホルスの係留地へ戻って来た。

「認めたくないものだな、自分自身の若さゆえの過ちというものを」

【ウシャス・キシリア・ザビ】イメージ。

ユーウ艦長、メインレーダー/通信オペレーターのビワ、サブオペレーターのホオズキ他、正規の連邦兵十数名全員が揃ったところで、ささやかな退艦パーティーが行われた。

【ウシャス座乗ムサイ:パンドラ】

【ウシャス艦隊ムサイ(正統ジオン艦隊)エピメテウス/ピュラー】
ニコルもアマノも戻ったところで、艦内の大休憩室で、ささやかだが退艦するにあたってのパーティー準備が行われた。
「なんか、凄いのいっぱい運び込まれるね。」
「そう云えば、そうね。」
「まぁ。軍艦だらね。私たちを下ろしたら宇宙(そら)にとんぼ返りで、ジオン討伐なんだろうね。」
ツバサの話に笑顔で応えるニコル。
そんなニコルたちの会話にアマノも加わった。
「ディアナの実戦兵器なんかも積まれてるし、食料や医薬品その他、備品なども積み込みされてるところなんか見ちゃうと、何か寂しいような、嬉しいような複雑な心境だ。」
「何でですか?」
「ディアナは既に実戦経験済みだけど、沈んじまうかもと思うと悲しいし、実戦兵器をフルに使いこなして、活躍してるかなと、思うと嬉しいし。」
「ああ。なるほどね。」
「て云うか、あのジムって、ついこの間、最終テストやったジムじゃない?」と満面の笑みを覗かせツバサは、指をさした。
そこにはジム強化装甲タイプⅡアルテイシアが4機が整列していた。
向かって左から二番目の機体が隊長機なのだろう。
二の腕部分に赤い腕章に、チームのエンブレムが施されていた。
また、四機共通してシールドにも、連邦のマークとチームエンブレムが施されている。
狐面(きつねめん)のエンブレムだ。
RED.FOXと書かれている。チーム赤い狐だ。
そんなこんなでパーティーの準備は整った、あとは艦長らを呼びにゆくだけと成った。
◆
「ふん。その事は脅しにはならんぞ。ウシャス。」
「ウシャス。お前にとって祖母である私の母は確かにシャア=キャスバルの子、即ち私を産んだ。」
「いや、正確には"試験管ベイビー"たから産んだとは云えないが。」
少年期のキャスバルをモノにしようと考えた母ではあるが、生きた細胞さえ入手出来れば、それで良かった。
そう考えれば入手は簡単だ。
毛根ごと髪を数本抜く程度で事はすむ。唾液でも何でも良かった。
要はシャア=キャスバルのDNAさえ入手出来れば、それで良かった。
「まぁ。見た者は居ないから、その後、青年に成ったシャアと男女の関係を持ったと云っても信じない者も居るだろう。」
「私にも真実は解らない。がしかし、私は男女の関係があったと思っている。」

「認めたくないものだな、自分自身の若さゆえの過ちというものを」

幸いにして、毛根には生きた細胞が残っていた。
それを冷凍保存し、人の目をあまり気にする事なくクローンを造るには、木星が都合良かった。
クローンによるシャアは産まれ、失敗する事なく成長した。
そのクローンのシャアの精子と母キシリアの卵子から私は産まれた。
そして、私は採取保存していたシャアの精子を利用して、私の子宮で受精、10ヶ月と10日育て自然分娩でウシャス、お前を産み、育てた。
その後、シャア=キャスバルのクローンは冷凍保存器ごと、廃棄された。
証拠隠滅の為にね。
現時点でシャアのDNAを採取するのは困難だが。
「これで解ったであろう?ウシャス。」
「お前はシャア=キャスバルとキシリアの末裔で、真のニュータイプなのだよ。」
ウシャスは「なるほど。」と左の口角をあげた。
「まぁ。いいわ。」
「それが真実でも偽りでもね。」
「わたくし、あのガンダムが欲しくなったわ。今まで以上にね。」
「それに、わたくしに陵辱されたくないでしょ?あの時みたく。」

【ウシャス・キシリア・ザビ】イメージ。
「うふふ。」
「……。」
マルシェの脳裏に甦るあの忌まわしき日。
◆

ユーウ艦長、メインレーダー/通信オペレーターのビワ、サブオペレーターのホオズキ他、正規の連邦兵十数名全員が揃ったところで、ささやかな退艦パーティーが行われた。
30分くらいして、ユーウはジム強化装甲タイプⅡアルテイシアのパイロットたちを呼んだ。
「お招きに預かり、ありがとう。」
「自分たちはジム・アルテイシアのパイロットで、team.RED.FOX。隊長の安堂だ。」
「右からサクラ、伊吹、小室だ。」
「サクラは、このチーム紅一点だが、自分の次にパイロットとしての腕前だ。」
一通りの挨拶が終わったところで、ユーウが、これからについて話をはじめた。
それまでの楽しい雰囲気は一転した。
「……なっ。なんだよ、それ!」ニコルは思わず、声をあらげた。
「おいおい。ニコル少尉。仮にも艦長は少佐だ。言葉を慎め。」
「辞令が降り、少尉は正規の連邦兵と成った。自覚を持て。」安堂大尉は軍人としての基礎である上官とのやり取りには、節度を持って接する事を教えた。
「時代がー。って云いたいのは解るが、士官学校でも同じだろ!?」
「そう云う事だ。」
「安堂大尉。辞令は降りましたが、本人にはこれから話すところだったので、お手柔らかに。」
「そうでしたか。了解。」
全員に説明が終わったところで、ユーウは改めて辞令通り、受諾するか否かを問いた。
しばらく無言が続いた。
「ニコル。貴女ほどの腕前のパイロットなら、あのディアナを乗りこなす貴女なら、あのニュータイプ、アムロを超えれるかもしれない。」
その言葉がニコルの心を動かした。
「受諾します。」
ニコルに釣られるように、アナハイムのエンジニアたちも、受諾しホルスに再乗艦する事を決めた。
こうして新たなクルーを加え、強行偵察揚陸艦ホルスは再び、宇宙(そら)へと舞い上がった。
どんどん小さく成るベルファスト基地。
大気圏を抜け、再び宇宙へ。
◆
同じ頃、三隻のムサイが地球圏を目指していた。

【ウシャス座乗ムサイ:パンドラ】

【ウシャス艦隊ムサイ(正統ジオン艦隊)エピメテウス/ピュラー】
◆
ウシャス・キシリア・ザビ
マルシェ・キシリア・ザビの娘。
11歳。
158cm
銀髪のショートカット。
シャアの遺伝子を持つとされるニュータイプ。
天使のような顔と悪魔のような顔を併せ持つ。
母親を親とは思っていないところが有り、僅か10歳の時に逆上した際に、マルシェを自ら陵辱した過去を持つ。
この時、マルシェは二度と子供を産めない身体にされた。
それ以来、ウシャスにとってマルシェは、ただのお飾りに過ぎない存在に成り下がった。
ウシャスには、もう一つ秘密があるのだが・・・
第九話へ
つづく。
この物語りは「機動戦士ガンダム」の外伝です。
登場する人物、企業等は全て架空です。
実在する人物、企業等は関係ありません。
使用している挿し絵的画像はイメージです。