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鹿嶋少将の航海日誌second

宇宙戦艦ヤマト新作情報・二次創作他、気になったものなどをお届け(^-^)

宇宙戦艦ヤマト2205ー新たなる旅立ちー前編

2020-06-04 23:52:54 | 宇宙戦艦ヤマト外伝
 宇宙戦艦ヤマト2205ー新たなる旅立ちー


西暦2203年。 大マゼラン銀河サレザー太陽系第四惑星イスカンダル。 そのイスカンダルの君主スターシャは、救いの手を差しのべた地球で、恐れていた愚行の事実を知った_。

スターシャは苦悩する日々を送っていた。 旧デスラー政権が崩壊し、ガミラスもまた、新たに復興しつつあった_。 そんな中、ジャンプ(ワープ)トラブルを起こした地球で製造され、譲渡された波動砲搭載型アンドロメダ級空母が、イスカンダルの王都近海マザーの海に着水した。 ワープトラブルの原因は、不慣れな地球(テロン)製の操作方法によるもので、ガミラス人兵の操作ミスによるものである。

幸い、クルー及びイスカンダルの王都には被害は無く、機関の損傷だけで済んだ。

トラブルを起こし、着水した艦(ふね)を目撃したスターシャは、当初、それが地球で製造された"波動砲"搭載艦とは思わなかった。 何故ならガミラスでも、波動砲搭載の艦(ふね)は存在したからだ。 だが、実際には違っていた。 着水したガミラスの艦のクルー達の状況を確認する為、スターシャはイスカンダロイド二体を派遣した。 派遣した二体のイスカンダロイドからの情報に、スターシャは言葉を失ったという_。

「……波動砲の量産………。」

その後、およそ一年スターシャは苦悩し続け、決断した_。 改良型のイスカンダロイド一体を地球に派遣する事を決めた_。 "時間断層"そのものを閉鎖、波動砲搭載艦艇の破壊を行う為に_。

時は流れ_。 西暦2205年。

木星圏トロヤ小惑星群に一隻の宇宙船の姿があった。 それは、この時代、最も速い恒星間航行宇宙船イスカンダルのシュヘラザードであった。 シュヘラザードは小惑星に紛れ、遮蔽シールドを展開していた。

「℃@¥$…#$¢…¥@℃@¥$座標、入力完了!」 「物質伝送波、送射!」 「波動カプセル射出!」 「ワープを確認。これよりイスカンダルへ帰投する。」 「進路反転172度、回頭。」 「ワープ!」

ー地球・極東管区日本中央都市郊外ー

突然大気中に無数の蒼白いプラズマ波が発生、英雄の丘を包み込む。 英雄の丘に建つ英霊の碑の裏側に一発のミサイルが、撃ち込まれたかのようなひび割れた窪み、プラズマ波が消え、湯けむりのような白い煙が立ち込めたかと思えば、一瞬にして消えた。 辺りは何事もなかったように静けさを取り戻した。 そして、英霊の碑の裏側に突き刺さる波動コアを大きくしたような形状のカプセル。 「カシャ!」「プシュー!」と機械音。 地面に突き刺さる波動カプセルは、地面に突き刺さる三分の一から上の部分がゆっくりと上に上がってゆく。 四~五秒後、その中から人らしきものが姿を現した。

スラッと伸びた脚、ふっくらしたバスト、キュッと締まったらウエスト、丸みがあり、プリッとしたピッフ、青み掛かった肩くらいまでの髪、瞳が少し大きめで、ややつり目、175Cmくらいの身長がある"パリコレ"のモデルでも通用するくらいの女性だった。 その女性は二歩、三歩とゆっくりと歩きはじめると一度立ち止まり、360度くるりと辺りを見渡した。 100メール先に公衆用通信機を見つけた。 彼女は再びゆっくりと歩きはじめた。 公衆用通信機の受話器部を手に取ると、右手の小指を針金のような細さに形を変えた。 その針金のような小指を受話器の通話口の穴に差し込み、ネット回線に接続、旧地下都市の場所を検索、情報を入手した。 彼女の地球の情報とは、たかが知れている。 宇宙戦艦ヤマトがイスカンダルに赴いた際、スターシャと対面した艦長沖田や古代、真田、新見、森雪、そして末の妹ユリーシャから聞かされた程度の事しかデータはないのである。 その為、単語的な情報しか無く、その単語を元に検索し、情報として入手、データとして保存するしかないのである。

ー旧時間断層跡地ー

「そこで何をしている?」 旧時間断層跡地(時間断層工場管理区画第一エレベーター区)を警備する保安員に声を掛けられるイローゼ。

「あっ!すみません。」 「私はイローゼ。つい先日、採用に成った者です。」 「ここですよね!?時間断層工場?」

「はぁ?時間断層工場?」 「確かに時間断層工場だったが、今は大型艦艇用の海底ドックだ。」 「何処の部署に配属なんだ?」 「バイトが勝手に入って良い場所じゃないんだ。ここは。」

「ごめんなさい。道に迷ってしまって…。」

「たく。で、部署は?」

「えっと…」イローゼは右手、人差し指を注射針のように変形させ、勢いよく振り返ると保安員にもたれ掛かる仕草を取り、首の付け根、延髄の辺りに射した。

「なっ!?なんなんだ?」 「うぐっ…。」

保安員はイローゼの足元に崩れ堕ちるように倒れた。

「悪く思わないでね。」 「殺しはしないわ、少し、お昼寝して貰うだけよ。」 「快楽を存分に味わいなさい。」

「…時間断層工場は崩壊したようね。」 「ならば、第二弾に移行するまでね。」 イローゼは変形させた人差し指から睡眠と幻覚を誘発する薬を延髄から注入したのだ。 幻覚と睡魔に襲われ、意識を失い、幻覚と戯れ、快楽を望むままに求める保安員。

改良型のドレッド・ノート級二隻とアンドロメダ級一隻が横並びする大型海底ドック。

「さて、第二弾の手始めにココの艦艇から破壊してゆくとしようかね。」 イローゼは、ゆっくりと歩き出した。 破壊と云っても、宇宙空間での戦闘のような艦艇を丸ごと、沈めるような破壊ではなく、波動砲制御システムと大元である波動コア起動システムのみの破壊である。 イローゼが手始めと云ったのには訳があった。 それは、まだまだ、"地球"の情報が足らないからである。 大元である波動コア起動システムが何処で量産されているかが、イローゼにとっては重要だからだ。 地球が保有する艦艇一隻づつに潜入し、破壊して行ったのでは、あまりにも無駄で効率が悪すぎる。 時間断層工場を失った地球ではあるが、時間断層と時間断層工場が消滅するまでに生産量を減らしたとは云え、1.000を超える程である。 しかも、それらは全て地球に係留されている訳ではない。 太陽系全土を防衛する為、再建された主要基地に配備されているものだけでも、数百隻を超えるのだ。 1.000以上もの艦艇の破壊は、後回しで構わないのだ。 それよりは、一隻でも多く波動砲搭載艦艇を保有させない事が、最善だからだ。 地球や太陽系全土に散らばる即稼働可能な艦艇は所詮、傀儡に過ぎないと考えていたからだ。 全ての艦艇を人間が操作するにしても、この時代、コンピュータによる制御は欠かせないシステムの一つである。 そのコンピュータを乗っ取れば事は足りるのだから。 同士討ちさせれば良いだけの事。

「まずは手前のこの艦(ふね)から仕掛け、情報を得るとしようかね。」 イローゼは戦闘モードに切り替え、本来の姿に変体した。

【イスカンダロイド改良型イローゼ・イスカンダル】

両肩にバトルアームを装備する。 シールドでありガンであり、そしてソードでもある。 意思によって自在に変える事が可能。 また、球状レーダーを備えている為、本体がどの方向を向いていたとしても、死角はない。 跳躍力に優れた脚。 建物と建物の隙間が、やたらと距離が離れていなければ、壁などを蹴り上がって行く事も可能である。 戦闘モードとは云え、基本的に自ら人間を攻撃する事はない。 言語処理能力はアナライザーを凌ぐ。 視力、聴力共に通常モード及び戦闘モード時で差はない。 フルパワーでの格闘、戦闘の対応時間は不明だが、長時間持続出来ないデメリットもある。 ただ、数分間のスリープモード又は数時間のパワーセーブモードで回復する。

イローゼはドレッド・ノート級に潜入すると直ぐにブリッジを目指さした。 まず端末機にアクセスし、艦内情報を習得する為だ。 建造中の戦闘艦、正規クルーは乗艦していない。 更にはブリッジには作業員すら居ない。 情報習得には好都合の場所なのだ。

同じ頃、大マゼラン銀河サレザー太陽系近傍空間にワープアウトする無数の艦艇。 ガミラスや地球、ガトランティスのものとは異なる艦影である。 漆黒の宇宙の海に同化する黒色の巨大戦闘艦を中心に円を書くようにオレンジとブラックのツートンカラーの小型戦闘艦が、多数ワープアウトしてくる。

その数、百を超えていた_。

◆◆◆◆

ドレッド・ノート級のブリッジに足を運んだイローゼは、主幹エレベーターからすぐの艦長席で先ず、メインコンピュータにアクセス、艦内情報習得した。

「ちょろいものね。」

「ここから直下、機関区の入り口ね。」 「作業員は居るかしら。」と艦長席に備わる六分割されたモニタを覗き込んだ。 奥の方に数名、映るだけで入り口付近には作業員を含む、人影は見当たらない。 それを確認したイローゼは艦長席を離れ、機関区へ降りた。

「デーダー艦隊司令!まもなくガミラス・イスカンダル宙域です!」

「うむ。」 「全艦!戦闘配置!」 「目標!ガミラス!!すべてを焼き払えッ!!」 暗黒星団帝国マゼラン銀河方面遠征艦隊艦隊司令デーダーは、攻撃目標をガミラス星とした。

大小、二つのマゼラン銀河内でガミラス以上の軍事力を有する惑星(ほし)は、この時代、存在しない。 従って、ガミラスを殲滅させるか配下に置く事が出来れば、二つのマゼラン銀河を制覇したも同然である。

ガミラス星首都バレラス郊外で、真っ黒な大きな黒煙が上がった。 何が起きたのかと、黒煙の上がった方向に、ガミラス臣民たちは顔を向けた。 驚きの顔は次第に恐怖の顔に変わって行った。 その顔色が冷める暇もなく、黒煙の数は二つ、三つと増え、瞬く間に数え切れない程までに増えて行った。 悲鳴と怒号が飛び交い、右往左往する臣民たちで、ごった返す郊外の街。 その悲鳴と怒号を打ち消すように緊急を知らせるサイレンが、ガミラス星全土に響き渡る。 黒煙と炎の隙間から見栄隠れする円盤状の黒い小型戦闘艦。

逃げ惑う女、子供そして老人さえにも容赦なく銃口はむけられ、追い込んでは砲撃を加えて行った。

バレラス中央司令部内に響き渡る全土防衛体制のアナウンス。 そんな中、君主に返り咲いたアベルトが動き出す。

「ヒス首相!直ちに臣民たちの保護を!」 「タラン参謀は私の艦隊を先行して防衛に当たらせろ!」 「ディッツ提督は残りの艦艇を纏め、私の指揮下へ!」 「侍女の君たちは私の艦(ふね)の出撃準備を急がせろ!」

「ザーベルク!」「ザーベルク!」

時を同じくして、建造中の改良型ドレッド・ノート級機関区から火の手が上がっていた。 イローゼはわざと事を大事(おおごと)にしたのだ。 小火(ぼや)を発生させ、作業員や保安員たちを一ヵ所に集める為だ。 ドック内全員が集まる訳ではないが、大半の目を其所(そこ)に集中させる事で、他二隻は手薄に成る。 短時間で遂行するには最良と判断、実行に移した。 イローゼの思惑通りに隣のドレッド・ノート級、そしてその更に隣で製造されているアンドロメダ級の作業員と保安員の大半は、イローゼの仕掛けた小火(ぼや)に騒ぎ、気を取られていた。 そんな中、隣のドレッド・ノート級内に潜入、ブリッジに上がる事無く、直接、機関区入り口を目指さした。 保安員も作業員も誰一人、見当たらない。 セキュリティロックを数秒で解除、すんなりと波動コア起動システム室に入室した。 そして、ミッションを第二弾に移行して、最初の一つ目の起動システム用波動コアを破壊した。

「次はあっちの大型艦ね。」 「恐らく機関区に有ると思うが、あっちは波動砲口が二門(ふたつ)有るのね。」 「念のため波動砲制御システムも破壊しときましょうかね。」と左の口角を上 げ、アンドロメダを見上げた。

「ふん。」 「こっちは艦名がついているのか。」 「ネメシス」と読み取れた。

【新造中宇宙戦艦 アンドロメダ級typeⅡネメシス】

「アンドロメダtypeⅡネメシス。」 「私と同じか!?」

◆◆◆◆

【ネメシス】

古代彫刻のネメシス ネメシス(古希: Νέμεσις, Nemesis)は、ギリシア神話に登場する女神である。 人間が神に働く無礼(ヒュブリス)に対する、神の憤りと罰の擬人化である。 ネメシスの語は元来は「義憤」の意であるが、よく「復讐」と間違えられる(訳しにくい語である)。 擬人化による成立のため、成立は比較的遅く、その神話は少ない。 主に有翼の女性として表される。

ヘーシオドスの『神統記』ではニュクス(夜)の娘とされる。 ゼウスはネメシスと交わろうとしたが、ネメシスはいろいろに姿を変えて逃げ、ネメシスがガチョウに変じたところゼウスは白鳥となってついに交わり、女神は卵を生んだ。 この卵を羊飼いが見つけてスパルタの王妃レーダーに与え、これからヘレネーとディオスクーロイが生まれたとされる。ただしゼウスがこのとき白鳥となって交わったのはレーダーであるという伝承もある。

ネメシスのもっとも知られた神殿はアッティカ北部のラムヌース(英語版)にあり、ペイディアースの刻んだ神像があった。 ここでのネメシスはアルテミスに似た性格の女神とされ、ラムヌースの女神(Rhamnusia、Rhamnousia)とも呼ばれた。 またボイオーティアではアドラーストスが始めたとされるネメシス・アドラステイア(Adrasteia 遁れることの出来ない者)、すなわち必然のネメシスの崇拝があった。

ニュンペーのエーコーの愛を拒んだナルキッソス(ナルシス)に罰を与えたのはネメシスであるとされる。

ギリシア悲劇においては、アーテーやエリーニュスらと似たような役割、神罰の執行者としてしばしば言及される。アテーナイではネメシスの祭、ネメセイア(Nemeseia)が行われた。 これは十分な祭祀を受けなかった死者の恨み(nemesis)が、生者に対して向かわぬよう、執り成しを乞うことを主な目的とした。

スミュルナで崇拝されたネメシスは、二つの姿をもつものとされ、アルテミスよりアプロディーテーに似た性格の女神であった。 この二重性の起源は不詳であるが、ネメシス自体の性格の二重性(復讐をなだめる恩恵をほどこす側面と、呵責のない復讐者)あるいはスミュルナの市が新旧二つの部分からなっていたことの反映であるとも推測される。 ※Wikipediaより。

◆◆◆◆

小火(ぼや)騒ぎで大海底ドック内では、ある意味、祭りのような賑わいに成っていた。 野次馬の人の垣根、幸い小火(ぼや)で事は済んだが、初期消化を行ったのはその中で数人で、残りは殆どが野次馬だ。 災害対策室に連絡する者、騒ぎをやたらと大きくしないよう働きかける者、万が一に備え、避難賂を確保する保安員の一部を除けば、そこにいたであろう40~50人は、ただの野次馬だ。 その小火(ぼや)騒ぎが治まり掛けた時であった再び、場内は騒がしく成った。 だが、小火(ぼや)騒ぎどころではなかった。 今度は銃声が飛び交っていた。

「こっ…こいつアサルトライフルが効かないぞ!」 「あの肩から生えてるシールドを壊さない限り、アイツを倒せん!」

「いっ、一斉射撃だ!撃てぇ!!」

イローゼは右側バトルアームを肩から胸の高さで水平にし防御、跳躍力を利用してジャンプ保安員たちとの間合いを詰め、左側のバトルアームを「レイピア」細身の剣に変形、先頭にいる保安員の喉元に突き付けた。

「死にたくなければ、銃を捨てろ!」 「お前だけでは駄目だ!全員だ!」

「何を騒いでいる!」 「場所を弁えろ!」 通路の奥から走り寄るこの大海底ドックの所長を兼任する宇宙艦艇総合プログラマーの真田志郎。 ある程度は所長室のモニタから把握していた様子で、手にするネット式スタンガンをイローゼ目掛け、射ち放つ。 イローゼはとっさに両肩のバトルアームでガードするが、電子パルスを放射しながら「投網」のように拡がるネットに頭から包まれてしまう。 動きが鈍く成ったイローゼに保安員たちは銃口を向けた。

「駄目だ!撃つな!」

真田の大声に保安員たちは銃口をイローゼに向けたまま、「何故ですと」言わんばかりに真田の方へ振り向く。

「明らかに地球外のアンドロイドだ。」 「捕獲して尋問する。」

「それにざっとだが、見たところ死傷者は居ない。」 「全員、ライフルを下ろせ。」

アサルトライフルを下ろさせた真田は再びネット式スタンガンをイローゼ目掛け射ち放つ。

「すまないが二重にロックさせて貰う。」 「言葉は通じるようだな。」 「このまま、大人しく私の指示に従って貰う。」 「それとも、自爆でもするかね?」

「自爆のプログラムはない。」

「ほう。」 「では、一つ伺う。君は誰に頼まれた?」

イローゼは左側の口角を上げ、口を開いた。 「私はイスカンダルのイローゼ。」 「イローゼ・イスカンダル。」 「イスカンダルで造られたアンドロイドだ。」

真田は目を丸くし、驚いた顔を覗かせた。

「アハハ。」イローゼは突然、笑った。 そして、バトルモードから変体し、通常モードに切り替えた。 地球に侵入した時と同じ女性の姿を真田たちの前に現した。

「……。」

「おおぅ。」と声が上がる。 保安員の誰か漏らしたのだろう。 声が漏れるのも無理はない。 スラッと伸びた脚、ふっくらしたバスト、キュッと締まったらウエスト、丸みがあり、プリッとしたピッフ、青み掛かった肩くらいまでの髪、瞳が少し大きめで、ややつり目、175Cmくらいの身長がある"パリコレ"のモデルでも通用するくらいの女性が目の前にいるのだから。

だが、イローゼは二重の電子パルスネットがキツイ様子で、膝から崩れ堕ちるように床に倒れ、意識を失った。 真田はネットを解くと今度はスタンガンから放出する電子パルスネットの形状を小型に設定し、倒れたイローゼの手と足を拘束した。

「このアンドロイドを私の研究室に運ぶのを手伝ってくれ。」 真田は保安員の一人に医務室に備えてある担架を持って来させ、イローゼを乗せ運んだ。

騒ぎから二時間が経過した_。

「やっと目覚めたようだね。」 「イローゼと云ったね。すまないがまだ、君の拘束を解く訳には行かない。」 「尋問をさせて貰う。」 「だが、その前に一つ忠告する。」 「悪いが、イローゼ君の中に制御チップを組み込ませて貰った。」真田の中では、半信半疑のところはあるが、ここは強気でと、平素を装った。

イローゼは自身の中を検索、確かにチップがパワーバッテリーに直結されている事が確認出来た。

「流石は波動砲を開発した貴方だけの事はあるわね。」

「どうも。」 嫌味には嫌味で返す真田。

「私をご存知のようだな。」 「改めて自己紹介するまでもないか。」 真田は、そう切り出した。

「尋問に入らせて貰う。」 「何故、君はこの地球へ?目的は?」 真田は基本的な質問からはじめた。

「私はイスカンダルのイローゼ。」 「スターシャ様から造られたアンドロイド。」 「目的はあなた方が保有する「波動コア」の破壊。」 「あなた方はイスカンダルいや、スターシャ様との約束を反故にし、愚行に走った。」

「しかし、今や地球には1.000超える波動コアを保有するまでに成った。」 「君一人にとても全ては破壊出来ないと思うが。」

「でも、いくら武装した戦闘艦でも、コンピュータが制御している。」 「そのコンピュータを操れば、事は簡単だわ。」 「同士討ちをさせればね。」

「成る程。」 「だが、我々はけして愚行に走った訳ではない。」 「我々は自身を地球を守る為に波動砲を開発、量産した。」 「こうして街も海も大地も地球は元の姿を取り戻し復興した。」 「その事は感謝しても、しきれない程、感謝している。」 「だが、イローゼ、君が行った事は我々から云わせれば「テロ行為」だ。」 「ガミラスからの侵攻がなければ、君の主スターシャもまた、我々に技術供与をしなかったと思うが。」

イローゼは、その言葉に一瞬、瞳を閉じ次に瞳を開けると同時に、こう話し出した_。

そうね。確かにガミラスが侵攻しなければ技術供与はなかったでしょうね。 ガミラスは、いや、アベルトの叔父も騙されさえしなければ、地球へ「ガミラホォーミング」などは叔父の後を引き継いだアベルトもしなかったでしょね。 ガミラスがあと、百年足らずで終演を迎えるなどという捏造に騙され為の愚行。 ガミラスもイスカンダルもあと百年足らずで終演を迎える事はない。 一万年以上も先の話。 アベルトの叔父エーリックは「他言無用」と当時の科学者から捏造されたデーダ資料を見せられたの。 「ガミラス星及びイスカンダル星はあと百年足らずで死滅する」資料をね。

時はガミラス統一戦争で内戦中、エーリックをはじめ極一部の高官は、ろくな調査もする事無く、彼の捏造を信じた。 内戦は終わり、アベルトが総統の座に収まった。 幼い頃に、この捏造を聴かされていた彼もまた、信じ、大小マゼラン銀河に派兵、めぼしい惑星(ほし)を力で統合、しかし、種族を残せる条件は整っておらず、別の銀河に目を向けた。 そして、条件がほぼ一致するそう、あなた方の地球へ目をつけたのよ。 アベルトも苦悩していたわ。スターシャ様にも相談する事も出来ず、力で侵攻するしかしなかった。 「イスカンダル主義」と過大に表現してね。 だから、スターシャ様はそれを阻止する為に地球を元の姿に再生する事の出来る「コスモリバースシステム」を取りに来るよう仕向けたの。 イスカンダルもガミラスも地球も、元々は、同じ種族。 ガミラホォーミングをしなくても、共存が可能だからね。 ガミラホォーミングもガミラス人を信用させる為の嘘。 目的は地球人と交渉が決裂した為、地球人類の抹殺。 まぁ。あとから分かった事だけど、交渉もなかったのだけどね。 地球側からの一方的な攻撃でガミラスは 、地球は戦争する事に成ったわけ。

「確かに…。」 「だか、過ぎた歴史は変える事は出来ない。」 「未来は、そう我々が思い描く未来とは異なる未来を創る事も可能だか。」

イローゼは「ニヤリ。」と笑みを浮かべた。 「だから私はあなた方の未来を変える為にやって来たのよ。」 「あなた方では、まだ、作り出す事の出来ない"波動コア"を地球から消滅させる為に。」

「……真の目的はそれか。」 「我々の記憶やデーダから波動コアや波動砲に関するものを全て削除する。」

「ご名答。」

「でも、どうやって人間の記憶から削除する?」

「うふふ。」 「私は自爆は出来ない。と云ったけど、最終的処置を実行出来ないとは云わなかったでしょ!?」

「ゴクリ。」と唾を呑み込む真田は目を丸くし、問いた。

「…最終的処置?」 「そう最終的処置。私の体内に流れる潤滑油そうね。人間で云う血液かしらね。」 「その成分までは解析出来なかったみたいね。」 「ハイペロン微粒子が混ざっているの。」 「もう。お分かりのようね。」 「別名、重核子とも云うわ。」 「脳細胞を破壊する事の出来る中性子を放出する事が何を意味するかしらね。」

「微粒子は空気中に拡散され、全世界に拡がる。」

「うふふ。」 不適な笑みを浮かべるイローゼ。

「成る程。」と返事をした真田は手錠と足枷のパルス量を上げ、再びイローゼを気絶させた。

「ハイペロン…脳細胞を破壊、脳死した人類の記憶を操作、その後、生き返らせる…。」 「不可能では無いが……。」

「……我々は、もう一度、イスカンダルへ赴く必要がある_。」真田はそう呟いた。

◆◆◆◆

「山岳エリアは放棄!」 「第308ブロックから319ブロックを閉鎖!」

「総統!思った以上に敵の侵攻速度が早く、後退を余儀無くされています!」 通信クルーからの報告が旗艦「ネオ・ガミラス:デゥスーラー級戦闘空母デスラーズⅠ世」ブリッジ内を飛び交っていた。

「タラン参謀。首都バレラスを中心に半径50ブロックを絶対防衛線とせよ。」 「全艦を後退せよ。」 「首都で避難誘導中のヒス首相を呼び出せ。」

「ザーベルク!」

百戦錬磨の攻撃型の布陣でガミラスは対抗するも、奇襲により戦局は悪化、郊外エリアを失うまでに追い詰められていた。

「総統。ヒス首相と回線、繋がります!」

「うむ。」

「ヒス首相。第75ブロックから第50ブロックまでを閉鎖、臣民を50ブロック以内に避難させよ。」 「今から第75ブロックから50ブロックまでは最前線と成る。」 「避難を急がせろ。」

「ザーベルク!」

「タラン!全艦、艦首そのまま、機関逆進いっぱい!」 「全艦!後退しつつ、デスラー戦法隊形!」 「第一空母へ!全攻撃機隊を発艦!発艦と同時に敵艦隊を陽動せよ!」 「第二空母へ!急降下爆撃機隊全機発艦!発艦と同時に瞬間物質転送波エリアへ!」 「第三空母へ!雷撃機隊全機発艦準備!」 「デスラー機雷を打ち上げろ!」

【デゥスーラー級戦闘空母デスラーズⅠ世】

「転送波座標、突撃してくる敵前衛艦隊上空!」

「…総統!それでは戦力が分散され、本来の奇襲攻撃になりません!」

「タラン君。我がガミラスは、不利な状況なのだよ。」 「急降下爆撃機隊に推進機を狙わせ、間髪入れずに、雷撃機隊にブリッジを狙わせろ。」 「この状況を打破する!」

「ハハッ!」タランは右手を胸の前に当て、腰から約15度で体を曲げた。

「転送波、座標入力完了!」

「攻撃機隊、全機発艦!」 「つづいて、急降下爆撃機隊はデスラーズ前方30メートル転送波エリアへ!」 「転送後、各個に敵艦艇推進機を狙え!」 「つづいて、雷撃機隊全機、発艦へ!」 目まぐるしい程に指示とクルーたちが動き回る。 後退しつつ、撒き散らしたデスラー機雷に暗黒星団帝国ガミラス星侵攻前衛艦隊は、速力を落とせざる得なかった。

「第一波転送開始!!」

「味方、第一波、第二波奇襲に成功!」 「敵前衛艦隊、八割を消失!!」 歓喜に沸くガミラス兵たち。 だが、その喜びもつかの間、痺れを切らしたデーダーは旗艦プレアデス前進させた。

「主砲、一番、二番、撃てぇッ!!」

「しっ司令!今、この座標で撃てば我が方の前衛残存艦にも被害が……。」

「撃てと云ったら撃つんだ!!」

「御意。」 「…主砲、一番、二番、発射ッ!!」

地獄の業火のような閃光が真一文字に突き進む。 その射線上に展開する味方、駆逐型戦闘艦を霞める。 ブリッジが「グニャ」と溶け落ち、爆沈した。 真一文字に突き進む閃光は、それでも衰える事なく、ガミラス艦艇を貫いた。

「凪ぎ払え!焼き払え!」 デーダーは自席から身を乗りだし、指示を飛ばした。

プレアデスの勢いは収まる事を知らない。 みるみる内にデスラー戦法隊形は右翼側から崩されて行った。 僅か10分もしない内に七隻ものクリピテラ級航宙駆逐艦を撃破された。

「グワッハッハッハッ!」 「脆いぞ。ガミラス。」

「砲手!一番主砲の座標を首都へ向けろ!」 「二番は五月蝿く飛び回る奴らの母艦だ!」 「赤以外、緑、紫、青の母艦なら何れでも構わん!」 「赤いのは儂が、この手で葬(や)る!」

「御意!」

「艦長!我々も艦載機隊を発艦させろ!」 「第一波攻撃機隊は五月蝿く飛び回るガミラス機の相手をせよ!」 「第二波攻撃機隊はガミラス艦隊を引き付けろ!」 「第三波攻撃機隊は奴らの首都を空爆だ!」

「御意!」

「ディッツ提督!」

「なんだ。」 デスラー総統の命により、イスカンダル星、侵攻を阻止する為にイスカンダル星上空に陣を敷く、ディッツ艦隊艦隊司令を兼任するガル・ディッツは旗艦ハイゼラード級タルタロスのブリッジで歯痒さの中、メインモニタを見つめていた。

「我々は、何時までここに待機するつもりですか?」 「我が同胞が苦戦を強いられているのに、ただ眺めているだけの艦隊ですか?」

「総統からのご命令で、我々は、ここにいる。」 「奴らがイスカンダルへ侵攻して来ないという保証はない。」 「万が一に備え、イスカンダルを死守せよとの仰せだ。」 「儂とて、大佐。貴公以上に切り込みを掛けたいと思っているのだよ。」 いきり立つ士官に握る拳を震わせながら答えた。

「そ、総統!」 「敵機、複数抜けて行きます!」 「奴ら!バレラスに侵入!空爆を行っているもよう!」

「第二空母、爆沈!!」 「誘爆に巻き込まれ空母護衛群壊滅!!」

「タラン!残機を全機、遊撃に向かわせろ!」 「これ以上、臣民に犠牲者を出してはならん!」

「此方、デスラーズのタランだ!」 「メルダ大尉!聞こえるか!」 「残機を纏め、首都バレラスへ急行せよ!」 「バレラスに侵入した敵機を排除せよ!」

「ザーベルク!」

だが、その頃、先行して侵入したプレアデス艦載機隊は、ガミラス星侵攻時と同じように殺戮を繰り返していた。 低空でアクロバットな飛行を見せつけ、女、子供、老人も容赦なく袋小路に追い込み機銃を撃ち込む。

「クックッ。」 「物陰に隠れてもムダだよ嬢ちゃん。」

「……助けて…お兄ちゃん…。」

機銃掃射の弾痕、土ぼこりが舞い、静けさを取り戻す。

兄の形見「ヤマト」の模型がバレラスの大地に転がっていた__。

「もう大丈夫だ。」 「もう怖がらなくても大丈夫だ。」

「……お、お姉ちゃん……。」 「ありがとう。」 ガミラスの少女イリィは間一髪のところ、急行したメルダ大尉に救われた。

「さぁ。私が安全なところまで連れてゆく。」

「あっ。待って…。」 「ヤマト…お兄ちゃんのヤマト……。」

「ヤマト!?」

「ん。お兄ちゃん……形見のヤマト…。」

メルダは壊れたヤマトの模型を拾い、イリィを抱え、愛機、真紅のツヴァルケで脱出した。 「安全なところなどと云ってしまった…。」 「もう、バレラスもこの有り様じゃ……。」 メルダはそう心の中で呟いた。

「クッ。奴らやりたい放題しやがって、母艦を失なっか…。」 「デスラー総統の艦(ふね)に降りるしかないか。」 メルダの帰る場所、第一空母は沈み、本来とは違うが、デスラー総統座乗のデスラーズⅠ世に着艦した。

「メルダ大尉!ブリッジに上がります!」

「うむ。」

コツコツとブーツの踵を奏で、イリィと共にメルダは、デスラーズのブリッジに上がった。

「ご苦労だったな。大尉。」

「…ん!?」 「その少女は、大尉。君の娘(こ)かね!?」

「えっ!!あっ!」 「申し訳ございません。」 「この娘は壊滅したバレラスで救う事が出来た孤児です。」

「……。」 デスラーは少女が大事に両手で持つやヤマトの模型に目を向けた。 「…それはヤマトか?」

「……デスラーのおじ様。ヤマトを知ってるの?」 イリィは、今にも泣き出しそうな顔を笑顔に変え、話はじめた。

「ヤマトを知ってるの?」 「ヤマトは凄く強いんだよ!ガミラスを救ったんだよ!」 「地球の英雄なのよ!」 「わたし、ヤマトに助け貰った事があるだよ!」 満面の笑みを浮かべ、話に夢中に成るイリィだったが、改めて壊れたヤマトを見て、笑みは雲ってしまう。 両手の手の掌に乗せた壊れたヤマトの模型を見つめ、瞳に涙を滲ませた。 その涙は瞳から溢れ、頬を伝わり、溢れ落ちた。

「……お兄ちゃん……。」

「大尉。その娘を連れ、特使としてイスカンダルへ行け。」 「提督とスターシャには、私から話を通しておく。」 「地球へ。ヤマトへゆけ。」

「…ザーベルク。」

イスカンダル星、王都イスク・サン・アリアー女王の間ー

「メルダ。お久しぶりですね。」 スターシャの言葉にメルダは胸の前に右手をを当て、腰から15度に曲げた。

「ルードゥ・イスカンダル。」

「メルダ。話はデスラー総統から聞いています。」 「ですが、イスカンダルの宇宙船(ふね)シュヘラザードは、お貸しする事が出来ません。」

その言葉にメルダは困惑を隠せずにいた。

「…陛下。何故です。」

「今、ガミラスがどんな状況かは、陛下もご存知なはずです。」

「大尉の仰る通り、存じています。」 「ですが、シュヘラザードはお貸しする事は出来ません。」

◆◆◆◆

暗黒星団帝国の奇襲によるガミラス星内での戦闘で、大気は汚染、首都バレラスから離れた郊外の街は壊滅、僅かな緑地や山岳部には灰の絨毯が敷き詰められ、首都バレラスさえも今や、死の都と化していた_。

「どうやら間に合ったようだが、通常空間(洋上)は、ど偉い事に成ってるようだ。」 「ハイニ。親父(ディッツ提督)に暗号通信を打て。」

「アイサー。」

「砲雷士。一番から四番、魚雷装填。」 「一番、二番は通常空間魚雷、三番ホーミング魚雷、四番、亜空間魚雷装填急げ!」

「アイサー!」 「一番から四番まで装填完了!」

「うむ。」

「目標。中央の巨大戦艦!」 「一番、二番は推進機を狙え。」 「四番は、あの"大口"を狙え。」

「アイサー!」

「一番、二番、発射!」 「続いて三番ホーミング発射!」

「さぁ。猟をはじめるとしようか。」 推進機を狙う通常空間魚雷を交わすには、逃げるか魚雷を墜すしかない。 だが、エンジン音に喰らいつくホーミングが、つけ狙う。 機関停止で交わせるが、通常空間魚雷に喰われる。

「どう。交わすか見物だな。」 「四番の亜空間魚雷は、目の前に突如、出現する奇襲の魚雷だ。」 「それも特上の栄養剤入りだ。」

「魚雷、二本、後方に急接近!」

「何ッ!!」 「交わせ!たかが空間魚雷二本だ!」

「いつの間に、奴ら亜空間潜航艦を…。」

「待って下さい!」 「魚雷、もう一本、前方から来ます!」

「ウググッ。」 「後進だ!!いや、待て全速前進だ!!」

「魚雷!コースターン!喰らい付かれました!!」

デーダーは、歯ぎしりが聞こえる程にいきり立っていた。

「…ホーミングか?」 「オペレーター!機関停止だ!」 「後方からの魚雷を墜とせ!!」

「御意!」

だが、ここまでは百戦錬磨のフラーケン大佐にとっては予想済み。 あたふたする様子が目に映るように浮かんでいた。 そして、フラーケンは既に四番の亜空間魚雷を発射していたのだ。 右往左往する巨大戦艦プレアデスの眼前に突如、出現した亜空間魚雷は大きく口を開いたプレアデス艦載機口内に雪崩れ込む。

「前方にもう一本、魚雷!!」 「回避、間に合わない!!」 顔を伏せるプレアデスのクルーたち。

「艦載機発着口に魚雷ッ!!」 「……ふ、不発のようです!!」

「……不発!?」 「時間差で爆発するかも知れん!早急に空間(そと)に放り出せ!」

だが、その魚雷は思いもよらないものに変化した。 デーダーの予想通り時間差で、その魚雷は、爆発というよりは破裂、中から腐食ガス(ガス生命体)出現した。 うねうねと動き、もやもやと大きく成ってゆく。 艦載機発着口内で腐食ガス生命体は、プレアデスを喰らい成長してゆく。

「が…ガスだ!!」 「ガスが生き物のように!!」

「……なんだと、ガスが生き物……。」

「大格納庫、沈黙!!」 「機関に異常発生!!」 「プレアデスの兵装、使用不可!!」

「ガスなどに……。」 「通信オペレーター!残存艦を纏め、儂につづけと伝えよ!」 「我がプレアデスと残存艦を首都にぶち当てる!!」

「…御意!」

ガス生命体に内部から喰い荒らされながらプレアデスは、残存艦を纏め、デスラーズ残存艦隊の砲撃の雨を掻い潜り、首都バレラスへの体当たりを敢行、自爆した。 デスラー総統をはじめ、ガミラス軍高官たちは、予想外の結末を味わう事に成る_。

「…首都バレラスの消滅を確認……。」

「ゆ、誘爆が地下までに拡がっているようです!!」

※【腐食ガス=ガス生命体】 ミルベリア星系で発見された原始的なガス。 過去にデスラーは対ヤマトに使用した。

◆◆◆◆

「メルダ大尉。貴女なら理解出来るはず。」 「何故、貴女にシュヘラザードを貸さないのか。」

メルダには分かっていた。 ヤマトは、地球人たちはスターシャ陛下との約束を反故にし、波動砲を量産してしまった。 だから、自分を地球へ行かせたくないのだと。 行けば、必ずヤマトをはじめとする波動砲搭載艦艇を連れ戻る事をスターシャ陛下は懸念していると。

「それでも私はガミラスを救いたい。」 「例え、ヤマトが波動砲を使ったとしても、ガミラスが救われるなら…望みをヤマトに託したい。」

スターシャはメルダをじっと見つめるが、首を縦に振る事はなかった。

「メルダ。私は地球人に私と同じ罪を犯して欲しくないのです。」 スターシャは、そう切り出し、話はじめた。

その昔、私が「スターシャ」を襲名、代を即位する以前、イスカンダルは大帝国を築き、その頂点に君臨していました。 私の二代、先代にあたるスターシャは、それを放棄すると宣言なさったのです。 突然の皇帝の座を降り、帝国を解体、富を築き上げた一握りのイスカンダルの民たちの怒りは、時のスターシャに向けられた。 そして、それは暴動へと発展し、内戦へと拡大した。 「スターシャを女王から引きずり下ろせ。」と息巻く反スターシャ派と「スターシャ陛下を御守りせよ。」と掲げるスターシャ派とイスカンダルは二分、内戦へと突入した。 膠着状態がつづく中、私の母が産まれた。 反スターシャ派は、時のスターシャを倒しても、産まれて来た子が、女王の座を取り返すかも知れないと、産まれたばかりの子を暗殺しようと企てたの。 その事を知った二代前のスターシャは、長引く内戦も終わらせ、我が子も全てをイスカンダルそのものを棄てる覚悟を決めた。 そして今でも、この王都イスク・サン・アリアの地下深くに眠る「ハイペノン=重核子ミサイル」を起動させた。 だけど、二代前のスターシャと母は死ぬ事を許されなかった。

「貴女方は罪を償うまで死なせない。」と、女神テレサによって生かされたの。 女神テレサは、こう告げた。

「貴女方に今、死を与える事は褒美を取らせるようなもの。」 「貴女方には罰を与える。」 「イスカンダルの民たちの供養と、この宇宙に存在する救済を求める、知的生命体の救済。」 「これらを成し遂げた時、貴女方を無罪放免とします。」 「私はテレザートのテレサ。」 「無限に拡がる大宇宙の平和を願い、悪きしものが芽吹かぬよう、アクエリアスの神から仰せ使った使者。」

そして、そのテレサから手渡された"波動のエレメント"コスモリバースの元と成るもの。 そこまで話た時だった、五歳に成る娘サーシアが顔を出した。

「あっ。メルダ。」 「また遊びに来たの?」

「サーシア様、お久しゅうございます。」

「サーシア。お客様の前です。」 「ユリーシャは、どうしたのです?」

「私なら此処に居ます。」ユリーシャは円柱の影から姿を表した。

「ユリーシャ、貴女がついていながら…。」 スターシャの話の腰を折るように娘サーシアが割って入った。

「お姉ぇちゃん、遊ぼう。」 メルダの後ろに隠れるように立つ、十歳に成るイリィを見つけ、歩み寄った。 笑顔を見せるイリィ。

「サーシア。イリィのお姉さんとお部屋へ行きなさい。」

「は~い。お母様。」 返信をするとイリィの手を取り、自分の部屋へと歩き出した。

「…お姉様は、もう十二分に罪を償ったではありませんか。」 「いずれ、サーシアも代を継ぐ日が来ます。」 「あのサーシアにも、お姉様が歩まれた路を進ませるのですか?」

「それがイスカンダルを背負う者の運命(さだめ)。」 「あの娘(サーシア)も理解する時が来ます。」 「地球の民に引き継ぐ事は出来ない。」 「これはイスカンダルの王家を継ぐ者に課せられた罪。」 「アベルトが、ねじ曲げた解釈で愚行を行ったように地球の民もまた、その路を歩みはじめた。」 「この事がユリーシャ。貴女ならどういう事か分かりますね?」

「救済を求める知的生命体が存在し続ける…。」 「コスモリバース……負のスパイラル……。」

「サーシアやその子が引き継ぐには、重すぎる…。」

「…非情と罵られても、ガミラスの歴史と地球の歴史を終わらせる。そう決めたのです。」

「これでメルダ。貴女もお分かりね。シュヘラザードをお貸し出来ない理由が。」

「……地球も!?」

「そう。地球もです。」 「地球にも既に刺客を送りました。ハイペノン微粒子を持たせてね。」

「…お姉様……。」 呆然と立ち尽くすユリーシャ。 そのユリーシャを横目にメルダが再び口を開いた。

「スターシャ陛下。以前、こう申されましたね。」 「イスカンダルもガミラスも地球も、元々は一つの民だったと。」 「ならば、我々ガミラスも地球も同じ罪人。」 「罪を償う事もまた、我々に課せられたもの。」 「サーシア様、一人に背負わせてはいけない。」 「この真実を私は総統に伝え、地球へ赴きます。」 「こうしている間にも、多くのガミラスの民たちが苦しんで居ます。」 「ご無礼をお許し下さい。」 メルダは深々と頭を下げた。

と、その時であった王都イスク・サン・アリアが大きく揺れた。 同時に雨のように降り注ぐ隕石群。 何事かと大きな窓の外に目を向けた。 イスカンダルの空に映し出されたガミラス星の崩壊。

「お母様~。」と不安げな顔を覗かせるサーシアがイリィと共に駆け寄って来る。

スターシャ、ユリーシャ、メルダそして、サーシア、イリィたちは、言葉を失い立ち尽くすだけだった_。

大マゼラン銀河サレザー太陽系:第四惑星双子星ガミラスは、消滅した。 奇襲侵攻による惑星内での戦争により、星の寿命を待たずにして、その生涯を閉じた_。

自転軌道上にゆく宛もなく彷徨うように群を連なり、浮遊する流星。 その僅か数十キロ離れた場所に存在するもう一つの双子惑星のイスカンダル。 そのイスカンダルにも、変化が訪れていた_。

双子の惑星の特徴として、お互いの星の重力で引き合いながら自転し、公転軌道を回る。 その一方が突然、消滅した事でバランスが崩れたイスカンダルの自転軌道は、大きくずれてしまったのだ。 その為、異常な程に大気は不安定と成り、また地中内部地殻でも変動が始まっていた。 マグマの大元、マントル膨れ上がり、マグマが溢れ出すのも時間の問題と成った。 身体に感じる地震は、大小合わせて既に百回を超えた。

マントルとは、惑星や衛星などの内部構造で、核(コア)の外側にある層である。

急激な地殻変動、異常気象、イスカンダル星そのものが、狂いはじめた。 休火山や海底火山が一斉に噴火した。 公転軌道上を逆走しはじめるイスカンダル。 その逆走する加速は衰えを知らない。 グングンと加速した。 そんな中、スターシャは女王の間をシェルターモードに切り替え、娘サーシアとイリィを庇うように膝を折り、両腕で包み込んだ。

◆◆◆◆

「タラン参謀。スターシャへホットラインを繋いでくれ。」

「ザーベルク。」

「総統!スターシャ陛下とのホットラインが繋がりません!」 「モニタを見る限り、王都は無事のように見えますが…。」

「…総統!サン・アリアの丘が噴火したようです!!」 「火砕流が発生したと思われます!」

「スターシャとのホットラインはまだ、繋がらないのか!」

「ダメです!!繋がりません!!」

「……タラン参謀!我がデスラーズ以外はイスカンダル星上空に待機、私はスターシャ救出に向かう!」 「デスラーズをイスカンダルに降ろせ!」

「総統!お待ち下さい!」 「イスカンダルの北極側から大量のマグマが爆発、噴出しました!」 「イスカンダルの加速、更に上昇!!」 「今、イスカンダルにも降りるのは危険過ぎます!!」 慌ただしく、エリア監視オペレーターが告げて来る。

「イスカンダルの加速、亜高速に到達!!」 「ジャンプするのも時間の問題です!!」

「ぐっ!」 「タラン参謀!全艦艇に通達!」 「ジャンプ準備だ!」 「エリア監視オペレーター!イスカンダルがジャンプしたら予測転送位置を全艦艇に伝えよ!」

「ザーベルク!!」

「……スターシャ…。」 悲しい顔を覗かせアベルトは、呟くように云った_。

「イスカンダル!ジャンプしました!」 「転送位置を計測開始!」

イスカンダルは、ワープしてしまう。

ー天の川銀河オクトパス星団宙域ー

イスカンダルが公転軌道を外れ、ワープ。ワープアウト同時に「マゼラニックストーム」に吸い寄せられ、加速、超長距離ワープした。 その超長距離ワープが開けた反動でイスカンダルは一時的に暴走前と変わらぬ静けさを取り戻していた_。

「古代、島、疲れているところすまんな。」 「これを一刻も早く見せたくな。」 「これは十日前、天の川銀河、オクトパス星団宙域で観測されたものなのだが。」

「オクトパス星団?」 島が問う。

「ああ。オクトパス星団だ。」 「イスカンダル航海時、日程から云っても、ここを本来は通過するはずだったのだが、リスクが高過ぎると沖田艦長の意見を重視し、迂回した為、今までの航海図からは削除していた宙域だ。」

「このオクトパス星団が、どうしたと云うのですか?」 島に続き、古代も問う。

「問題は、このオクトパス星団そのものではなく、その10光年先のものだ。」 「その部分を拡大したのが、コレだ!」 真田は端末機を「カタカタ」と叩き、拡大映像を観せた。

「……これは、これはイスカンダル星じゃないか!」 思わず、古代は声のトーンを上げてしまう。

「古代もそう見えるか。」 「最初は、自分の目を疑ったよ。」 「でも、これは、この惑星は間違いなくイスカンダルだ。」 「イスカンダルへ赴いた者なら分かる。」

「ど、どういう事です。真田さん。」

「はっきりした事は、イスカンダルはワープして、この宙域にワープアウトしたという事だけだ。」 「古代、俺はこの事をはっきりさせる為、ここへ行くべきだと思うが。」 「それと、今、調査している「あるもの」との関連があると確信している。」

「あるもの?」

「ああ。」 真田は白いカーテンで仕切った奥を指、指した。


後編へつづく。

この物語りは私設定が混ざった《宇宙戦艦ヤマト2205ー新たなる旅立ちー》の二次創作です。 使用している画像はイメージです。また一部、Ps版「宇宙戦艦ヤマト・ イスカンダルへの追憶」等の設定資料から引用。


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