鹿嶋少将の航海日誌second

宇宙戦艦ヤマト新作情報・二次創作他、気になったものなどをお届け(^-^)

Marionette.黒き獅子の涙◇機動戦士ガンダム外伝◇第十話

2021-04-11 22:39:00 | 機動戦士ガンダム外伝

「マームのお父さん?」

「うん。マームのお父さんよ。」

「そう。お父さんの名前は?」

「ロキアよ。ロキア・リオよ。」



ロキア・・・
何だ、同じ穴の狢(むじな)か。

「うふふ。」

「ロキア!お前、ネオ・ジオンに拾われたのか?」
「お前みたいな落ちぶれたパイロットを拾うほどネオ・ジオン残党は、よほどパイロット不足なのか?

「ロキア!この声に聞き覚え無いかい?」
「アタシだよ。真鶴だ!」
「今、良いもの観せたげるわ。」
「映像通信チャンネル07219だ!」

俺は何事かと云われた映像通信チャンネルに合わせた。
映し出された映像には娘のマーム、俺は驚きを隠せずにいた。
手の震えが止まらない。
ガンダムに娘が搭乗していた事実。
この手でガンダムを仕留めようとした事実。
俺の心をかき乱す現実。
動きを止めたハウンド・ドッグを掠めるビーム光弾。
ジリジリとその掠める距離は修正されて行った。

「ロキアさん!ロキア少尉!」上段席に座るエリカは何時に無く険しい表情を覗かせ、無反応な俺を呼んでいた。
そんなエリカは「カタカタ」とキーボードを叩き、操縦系コントロールA.Iを自席で受け持つコントロールA.Iに並列化した。
これでハウンド・ドッグはエリカさん1人で操れる。
そんな中、ガンダム・ビーナスからの攻撃が突然、止んだ。

「……。」

「マーム。何故、止めた?」
「撃て!」

「お父さんは悪くない。」

「モニタは赤いだろ!?」
「赤い光は何だ?」

「赤い光は悪い人。」

「ならば、撃て!」

「嫌。撃たない。お父さんは悪くないもん。」

「マーム!撃たないと鞭討ちだよ!」まぁ。今、逆らったから鞭討ちだけどね。

「……。」
「嫌だ。撃たない……。」

「強情な娘だねッ!!」と真鶴は席から身を乗り出し、マームの髪を掴み引っ張っり揺さぶった。
「きゃぁぁぁ。」今にも泣き出してしまいそうなくらいの痛みがマームを襲った。
目に涙を浮かべながら振り替えるマームは下唇を噛んで堪えていた。

「真鶴のお姉ちゃんキライ!」

「嫌いで結構!ガキッ!!撃つんだよ!!」マームに平手打ちが飛んだ。

「まだ、撃たないか!強情なガキがぁぁーーッ!!」平手打ちは尚も首を縦に降らないマームに二度、三度と飛んだ。
その勢いで、マームはコックピットに並ぶ計器に側頭部を強打、悲鳴を上げた。

「きゃぁぁぁぁぁぁぁーーーッ!!」
マームの目から赤い涙が流れ、頬を伝わった。
ブルブルと震え、シートに蹲(うずくま)っていた。

「目が……目が……目が見えないよ………。」

その光景を目の当たりにした俺は、怒りに震えた。

「真鶴ッ!!貴様ぁぁぁぁぁーーーッ!!」

俺は無意識にハウンド・ドッグを加速させようとしていた。
だが、ハウンド・ドッグの全てのコントロールは、エリカさんが掌握していた。

「ロキアさん!冷静に!」
「わたくしが仕留めます!」
エリカは4(基)のIフィールド・キャノンを操っていた。
ハウンド・ドッグの加速は通常の二倍達していた。

「無茶だ!!目の不自由なエリカさん貴女に、この速度でハウンド・ドッグを操縦しながらIフィールド・キャノンを4(基)も操れやしない!!」

「ご心配はご無用。」
「わたくしには心の眼で全て観えています!」
「感応波と云えば解りやすいかしら。」

「えっ!?」
「……エリカさんあんたニュータイプだったのか。」

ハウンド・ドッグとガンダム・ビーナスがすれ違う。
4つの小さな光の輪がモニタ越しに見えた。
同時に両手、両足を失ったガンダム・ビーナスを確認した。



振り替えるハウンド・ドッグ。
バランスを崩し、空間に浮遊するガンダム・ビーナス。
ゆっくりとハウンド・ドッグは浮遊するガンダム・ビーナスに近づいた。
ガンダム・ビーナスを確保した俺は、ハウンド・ドッグのコックピットハッチをオープン、ガンダム・ビーナスのハッチを開けた。

「……真鶴!お前をあの時、助けた事を俺は後悔していなかった。」
「だが、今、俺は後悔している。」
「娘をお前らに拐われた事をな。」
「娘は返して貰う。」俺は娘マームを抱き上げ、ハウンド・ドッグに戻った。

「ごめんな。マーム。」
俺の目からこぼれ落ちた一筋の涙。

◆◆◆◆




「ロキアさん。マームちゃんは大丈夫よ。」
「あと二、三日で包帯は取れるわ。」
「視力も一週間くらいで元に戻るわ。」

「先生。ありがとう。」

娘のマームはネオ・ジオンの軍医の施した応急手当てによって、大事には至らなかった。
あとはコロニーで待つカレン先生に診察して貰えば、完治するだろう。

「ロキアさん。マームちゃん。お別れね。」
双子の姉妹キイコさんとユウカさんが見守る中、エリカさんから、お別れの挨拶を告げられた。

「エリカのお姉ちゃん。また逢える?」

「逢えるわ。」

マームは「ニコリ」と満面な笑みを覗かせた。



"紅いザンジバル改級"は俺たちの前から遠ざかり、姿を消した。
俺たち親子はランチボートに揺られ、コロニーを目指した。

コロニーに戻った俺はジャンヌさんにも、礼を云おうとしたが、既にジャンヌさんは、アナハイムを退社し、何処か別の地に移り、暮らしているとカレン先生から告げられた。

俺は操り人形なのかも知れない・・・


「お父さん。お風呂、一緒に入ろう。」

嬉し涙が溢れ、こぼれた。


~fin~





加速する深紅のザンジバル改級ブリッジの艦長シートに座乗する赤を主体的とした旧ジオン軍軍服に身を包む上級士官は、同乗する技術士官に告げた。

「例のモビルスーツの完成を急がせろ。」

「はい。」


この物語りは「機動戦士ガンダム」の二次創作外伝です。
登場する人物、企業等は全て架空です。
実在する人物、企業等は関係ありません。
使用している挿し絵的画像はイメージです。
※この物語りに登場するガンダムは「ガンダムF91」がモチーフです。

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