ローマへ2週間ほどの旅に出た。
ちょっとした縁があって、滞在中にローマ大学で簡単な書のワークショップを行うことも目的の一つであ
った。
モスクワ経由、16時間近く空を飛んでローマに到着。
数日をローマ観光で過ごし、いよいよワークショップ当日。
待ち受けていたものは・・デモだった。
現在イタリアでは、政府による大学への予算削減に反対する学生デモが全土に広がり、通常の授業は全てスト
ップしているという・・
大丈夫だろうか・・
不安を抱えつつ教室の下見に行くと、、、
おやおや??
とてもデモ中とは思えぬのんびりした雰囲気。
学生は特にやることも無い様子でべチャクチャおしゃべりを楽しんだり、大きなトレイに手作りしたティラミ
スを皆で分け合っていたり・・・
「食べますか?」なんて丁寧に皿に分けてくれるものだからお言葉に甘えて頂く。
うん・・ブォーノ(美味い)。さすがイタリア!
聞くと先生も学生も、授業がないからデモというより休暇みたいな感覚なんだとか。
そんな状況の中、結局30~40人の学生たちが集まってくれた。感謝。
今回対象になる学生の多くは東洋文化科の学生で、それぞれ日本や中国の文化や言語を学んでいる学生であるが、筆を持つのは皆初めてという。
だから良いとか悪いとかの評価を求めるのではなく、書くという「経験」を得てもらえればそれでよいと思う。
初めに30分ほどかけて漢字の成り立ちや歴史的変遷、それに日本に於ける漢字の受容について駈け足で説明。
その後好きな字を好きなように書いてもらった。
思い思いの字を・・・
それぞれのスタイルで・・
かなり熱中して書いてくれたので予定の2時間を目いっぱいに使いきった。
なにより楽しそうに取り組んでくれたことが1番嬉しかった。
ところで妙な字を見つけた。
「紙」であるが特に「氏」の部分。草書のくずしである。
古来、草書の傑作として名高い唐の孫過庭(648~703)「書譜」にもこのようなくずしが出てくる。↓
そんな資料は持ってきた覚えはないし・・気になって書いた女学生に「これは?」と問うと。。
「これです!」と、安い半紙の入っていた透明のビニール包装を差し出した。
見るとそこには商品名である「特選和紙」という字がよくあるパソコンの行書体で印刷されている。
写真がないが、、たしかこんな感じだったかな・・↓
そうか・・・でも行書を見てなんでこんなくずしになるんだろう・・
漢字文化圏の人間には絶対にありえない見え方だ、と一人感心してしまった。
ローマで時空を飛び越えたような字に出くわしてなんだか妙な気持ちになったが、
考えてみれば平安時代に「女手(おんなで)」といわれる「ひらがな」を生み出したのは、正式な漢
字の教育を受けていない女性たちであったという。。
「美」の前では余計な知識は邪魔になるだけだな・・
用意した半紙が無くなったので、予備として持っていた条幅用の長い画宣紙も自由に使ってもらった。
とある学生が熱心に辞書を引きはじめ、、揮毫した言葉は・・・
団結万歳!!
そうか、、、一応デモやってんだもんね!
今回の授業以外、旅行中の出来事については近くまたアップします。