はなかげ おとかげ

日本画家・書家 足立正平のブログです。

「満天の星」

2010年04月11日 | 過去のBlog記事

「きみたち、『満天の星』と書いて何と読むか知っているかい?」

つい何年か前に急逝した作家の百瀬博教さんが生前、テレビ番組で2人組のタレントを相手にぶつけた質問だ。

ポカンとしている2人を前に、続けて

「”ドウダン”と読むんだよ。」

瞬間、僕はひとりテレビの前で感激していた・・

子供の頃、祖母の家にはドウダンが植えてあった。

年に一度、白いスズランのような可憐な花々を、枝という枝いっぱいに咲かせる姿はまさに「満天星」であった。

いつの頃からか、その「満天星」は理由もなく枯れてしまい、以来、わざわざドウダンを注意して観ることもなく大人になってしまったが、百瀬さんの答えを聞いた瞬間に、僕の脳裏にはあのころ眺めた「満天星」が鮮やかに蘇ってきたのだった。

なぜこんな事を言うのかといえば、近所の雑木林で見事なドウダンを見つけたのである。

Doudan_1

薄暗い中で光を求めてか、かなり高いところで花を咲かせている。

近くで観ると・・

Doudan_sessha

かわいい丸型。星砂のよう。

下から見上げると・・

Doudan_miage_2

余計に「満天の星」らしい。

ドウダンは今でも古い家の玄関先や垣根でよく見かけるが、そのほとんどは雪だるまのように地面からコンモリと丸く刈り込まれていて、このように自然に近い姿で見られる事はほとんどない。

良い春を迎えられた。

Sakura

最後の写真はおまけ。

このブログの第1回で取り上げた桜も、見事な春を迎えていた。


印とアートフェア

2010年04月01日 | 過去のBlog記事

友人からメールが届いた。

天気が良いので昼休みに乃木神社に散歩に出かけた、と写真が一枚添付されていた。

Nogi 

乃木希典の像だろうか・・

子供を諭すように頭に手をあてている。

「印」という字を思い出した。

Photo

手で上から押えて、ひざまづかせている形。

上からおおう様に押さえる動作から、印鑑の「印」の意味で使う様になった。

メールをくれた友人、東園基昭氏は年齢は僕より一つ上だが予備校で知り合って以来、大学でも同じクラスで日本画を学び、今日に至るまでお互いに変わらぬ友情をはぐくんできた貴重な存在である。

制作の方も最近めざましい活躍をしている将来性豊かな日本画家である。

4月2日から開催される「アートフェア東京」に、彼はとある老舗画廊から個展形式で作品を発表することになっている。

ぜひ多くの方に足を運んで頂き、生の作品の素晴らしさにふれて頂きたい。

ちなみに彼の作品の右上に押されている「恬淡(テンタン)」という印は、以前彼に依頼されて僕が彫ったものである。

Photo_2

いつもいつも使ってもらえるのは、友として嬉しい限りである。

広い会場内で見つける事ができるかな・・

絵や書を観る時には、作品の内容そのものの陰に隠れたこうした部分に目を配ることで、より広く、深く楽しめるはずである・・

最近はそのあたりの意識が描き手の側でさえ不十分なことが多いので、ぜひ観る側からでも意識を高めていただければ・・