はなかげ おとかげ

日本画家・書家 足立正平のブログです。

わすれないうちに・・・

2012年01月22日 | 過去のBlog記事

先日台湾の総統選が行われ、結果は現職の馬英九が再選を果たした。

ニュースをみれば親中路線を進める国民党が競り勝ったことで日米は中台海峡の安定に安堵したというが、、

世界のどこよりも親日感情をいだいている方々が多い台湾が、徐々に中国と接近していくのは少しさびしい気持ちもする・・・

そういえば去年の鎌倉での展示直前、かなり無理な日程を組んで台湾を訪れた。

忘れないうちに振り返っておこう・

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北京留学時代、僕には彫刻を志す2人の大切な友人がいた。

一人は兄のように面倒をみてくれた日本人アツシさん、もうひとりは同い年のネパール人、キショール。

それぞれ帰国後、紆余曲折をへてアツシさんが台湾の大学で木彫を教えはじめたころ、入れ替わるようにキショールが、今度は日本に彫刻を学びに来た・・・

そのとき、僕はキショールとある約束をしていた。

「いつかアツシに会いに一緒に台湾に行こう」

ところが実現できないうちにキショールがネパールへ帰ることになった・・

 

 

あれから数年、キショールから突然の連絡。

「今度台湾で開かれる彫刻シンポジウムにアツシに呼ばれて参加するんだ。

滞在中に台湾で会おうよ! 日本で約束しただろ?」

そうか・・約束は守らなければ約束ではない・・

そんなことがあって、滞在わずか40時間弱の強行軍を敢行したのだった・・・

でも無理して行って、本当によかった。

約束は守れ・・・大学時代、ある先生がポロっとみなの前でもらした言葉。

これからも大切にしていきたい・・

いくつか写真をランダムに・・

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意外かもしれないが、台湾は木材が豊富だ。

数年来の台風で流された巨木を、台湾政府?が建国50周年を記念して億単位の予算を組んだのが、このたびの木彫シンポジウム。

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会場には世界中から集められた彫刻家が競って制作をした大作が並んでいた。

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移動中の新幹線で。

10年ほど前、台湾に来たときは新幹線はまだなかったが、今はずいぶん早く移動できる。

日本製だから内装はほとんど変わらない。

が。向かいの美しい女性と母親だろうか。テーブルの使い方が斬新だ・・・・

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町の食堂で見かけた鳥かご。

ニワトリなのかアヒルなのか・・・

上の段はニワトリ、下の段はアヒル。トサカがあるけどアヒルのかごにいたからアヒルなのかな・・・

 

とにもかくにも・・旧交をあたためた楽しい旅であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


年末の個展

2012年01月05日 | お知らせ(展覧会)

昨年末の個展

京橋のアートスペース羅針盤にて。

10月の鎌倉での個展を踏まえ、「おとづれ -境ー」というタイトルで行った。

テーマについては鎌倉の回で触れたので詳細は省くが、短く言うと色や形、数字などでは掬えない「おと」=「神の声」(前回参照)を墨で譜面に起こそうと試みたのが「おとづれ」。

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そしてそんな「おと」を聞きうる場所として描いたものが「境」。

よくみれば「境」という字にも「音」が隠れているではないか・・云々という文章を展示に際し書いてもみた。

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そんな「境地」がどんな場所か?

陶淵明が1500年以上前に想像した桃源郷のような場所だろうか?

メモのように書き留めた陶淵明の「桃花源記」を「ノート」と題して出品したら、とある評論家に噛み付かれてしまった。

「君は陶淵明の『人となり』をどれだけ知っているんだね?」

『人となり』・・・?

そんなもの知っているわけがないから「知らない」と答えると、今度はひどい剣幕で

「陶淵明は君が考えるより遥かに高尚な人物だ。私はよく知っている!」

と強く断言されてしまった・・

だが僕はこの言葉を大いに不審に思った。

陶淵明といえば東晋、書聖 王羲之とほぼ同時代・・どんな専門家であろうと1500年以上前の人間の人となりを「よく知っている」と断言することが可能だろうか・・・

ふとこの数年お世話になっている美術史家のX先生のことが頭に浮かんだ。

X先生が僕の絵についておっしゃるひと言ひと言は、どういうわけか僕にはひどく響いてくる。

X先生には口癖がある。

「私は歴史屋だから現代のものは見ないんです。客観的に見れっこないから・・。」

現代は見ない、と言いつつも、いつも僕の心まで的確に見透かした評論をしてくださる。

もちろん響いてくる、と感じている自分の感覚が正しいわけではないが・・

何が正しいのかは誰にもわからない。

今回の展示を通じて、ただ「求める」姿勢だけは失わないでいようと強く思った。

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「求」・・・剥ぎ取った獣の皮の形。

この獣の持つ霊力によって祟りを祓い、望むことが実現するよう求めること。

うわべの知識や小手先の技を剥ぎ取ってしまい、はらわたをさらけ出して成長していきたい。