
SADE は、寡作で息の長い活動を続けているイギリスのバンドだ。
デビューは80年代なのだが、オリジナルアルバムは現在までに6枚しか出ていない。
活動を休止したかと思われるほど作品間が長いのだ。そしてその間、ライブやツアーなどを行わないこともある。
メンバーは4名。
ヴォーカル、ギター&サックス、ベース、キーボードからなる。
ヴォーカルの Sade Adu はナイジェリア出身の黒人女性。ジャケットの写真も彼女だ。
ジャズの影響が色濃く感じられる、洗練されたサウンドメイク。
ジャンルとしては、R&Bにカテゴライズされることが多い。
とくにファースト、セカンドアルバムあたりでは、ボッサのビートやホーンアレンジなど、ジャズ的要素が多く見られる。
当時のブラックミュージック(ブラック・コンテンポラリー、略してブラコンなどと呼ばれた)の中にあって、
彼らの音はひときわお洒落な音楽と評された。
しかし彼らは少しずつ、独特のオーガニックなヴァイヴを深化させていったように思える。
このアルバムは、憂いを含んだような内省的な曲が多い。
その中で、#5 Kiss of Life がとくに素晴らしい。明るい曲調で、とっても聴きやすい。
メンバーにドラムがいないことからも分かるとおり、このバンドの楽曲はビートを強調しない。
それは例えばクラシックの歌曲のような感じというのとも違っている。
アメリカのR&Bのように、ガツンとノックするようなビート感は無い。
ところが意外にも、彼らはクラブミュージックファンからの支持が篤い。そのサウンドメイクが評価されているのだろう。
前述どおりサックスやエレクトリックピアノの演奏がジャズっぽい。
さりげなく配されたパーカッションは、使い方が上品で適切。
Sade Adu のコーラスワークも、もちろん絶品だ。
彼らのクラブミュージックへの親和性を象徴するような作品がこれ↓
『the Remix Deluxe』
彼らの楽曲をリミックスしたものだ。この中に収録された# Stronger Than Pride は、
Herbie Hancock が自身のカバーアルバム『The New Standards』で取り上げていた楽曲。
オリジナル(『Stronger Than Pride』収録)はほとんどアカペラに近い状態で歌われているが、
ここではレゲエビートを取り込んで軽快さを演出しつつ、オリジナルの静謐な雰囲気も残して、
非常にうまいリミックスに仕上がっている。
この1曲のためだけに、この盤の買う価値はある。
『Remix Deluxe』というタイトルの通り、本稿の『Love Deluxe』の姉妹盤のようなものなので、
このバンドを気に入ったなら併せて持っていて頂きたい2枚。
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