僕は最初の数年間、
聞こえてるフリをして過ごした。
気付かれないように注意して、
注意深く、唇を読み、その言葉を繰り返した。
誰にも知られてはいけなかった。
その後の数年は、
見えない事を隠し通した。
身体に馴染んだその場所を、離れなければ、
なんとか家にも辿り着いた。
今思うと、どうやって暮らしたのか判らない。
誰にも気付かれない事だけが、命題だった。
あの日、
僕はあなたの眼を潰し、
あなたは僕の耳を塞いだ。
そして、お互いをかばいあって、
他の誰かには、
それを知られないように気をつけた。
いつしか僕の眼は役に立たなくなったし、
僕が話せなくなったから、
あなたの耳も、必要を失くした。
その後の事は、知ってる通り、
僕はその場所を捨てたし、そのすべてを失った。
あなたもここを出ていった。
戻る場所もなく、行く宛もなかった。
けれど代わりに、眼と、耳を取り戻した。
それでもいつかは、そこへ戻るフリをして、
その後の数年を過ごした。
そのうちにいつしか、それは嘘になった。
判っていても認めたくなかったから、
今までずいぶん時間がかかった。
嘘になってしまったその言葉を、
今でもまだ思い出せる。
言葉だけなら、僕だってたくさん持っている。
気持ちだけなら、
もっと。
聞こえてるフリをして過ごした。
気付かれないように注意して、
注意深く、唇を読み、その言葉を繰り返した。
誰にも知られてはいけなかった。
その後の数年は、
見えない事を隠し通した。
身体に馴染んだその場所を、離れなければ、
なんとか家にも辿り着いた。
今思うと、どうやって暮らしたのか判らない。
誰にも気付かれない事だけが、命題だった。
あの日、
僕はあなたの眼を潰し、
あなたは僕の耳を塞いだ。
そして、お互いをかばいあって、
他の誰かには、
それを知られないように気をつけた。
いつしか僕の眼は役に立たなくなったし、
僕が話せなくなったから、
あなたの耳も、必要を失くした。
その後の事は、知ってる通り、
僕はその場所を捨てたし、そのすべてを失った。
あなたもここを出ていった。
戻る場所もなく、行く宛もなかった。
けれど代わりに、眼と、耳を取り戻した。
それでもいつかは、そこへ戻るフリをして、
その後の数年を過ごした。
そのうちにいつしか、それは嘘になった。
判っていても認めたくなかったから、
今までずいぶん時間がかかった。
嘘になってしまったその言葉を、
今でもまだ思い出せる。
言葉だけなら、僕だってたくさん持っている。
気持ちだけなら、
もっと。