through the frozen window

ふさわしい言葉を探しているうちに、小さな羽音だけを残して、遠くへ。

Made in Sweden

2004-10-18 | Weblog
うっそうと茂る草の上で、
彼は時間をやり過ごす。
少しのびた軒先の、
雨のあたらない場所に、半分だけ。
いつもそこから、
道で遊ぶ子供達を見つめている。
頭の上に、小さな枇杷が生る場所。
彼の定位置がそこにある。
愛想のない表情と、
持て余すほどの身体を、
遠く冬の国から運んで来た。
陽射しと強い風に晒されて、スクラッチされた、
肌からは艶が失せ、その重さと、
皮膚の分厚さだけが、際立つ。
目は少し濁り、遠くを見ているように、
焦点が結ぶ位置を、
感じさせない。

彼の鼓動も、漁船のようなリズムを刻む。
小船のように身体を揺する。
ゆっくり過ぎるほどの挙動。
一度少し顎があがる。
そして、その後、前のめりになる。
右に少し傾いて、ちょっと遠回りする。
寝起きに少し咳き込む。
東京の夏には、合わないらしい。
彼の体温は、寒い故郷に合うように出来ている。
つきあう方も、ようやく馴れて来た。
年を重ねた者なら、当たり前の様子が、彼にも現れている。
何度となく、辛い時期を乗り越えた。
からだじゅうに、それが、
ゆがみとなって刻まれている。

艶のない褪せたグレー。
少し衰え始めた、後ろ姿。
けれど僕は、愛している。
彼のその、充分美しい後ろ姿を。
長年の坂道を共に歩いて来た彼を。
先は長くはないかもしれない。
けれど、
約束を果たすまで、
どちらかが力尽きるまで、
まだ歩き続ける。

13 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ジワ‥ (uniko)
2004-10-18 17:04:02
ホントに大切にされてるんデスネ。

キモチがイッパイ溢れてマスヨ。



冬の国のクルマってコトは‥ボ○ボサン?

シト○エンサンかな‥?

なんてモワモワ考えちゃいマシタ。

返信する
うに姉さんの言葉で (mk)
2004-10-18 23:46:35
気付いたのでした、あぁあぁ愛してるのは…。

だって私の中には何だか大きな動物のイメージが(動物園…?!)

それだけ愛が溢れてるってことなんですね、行間に。
返信する
コメントありがとうございます。 (トモロヲ)
2004-10-19 00:36:47
来て下さって、ありがとう。

Vの方です。

最近見なくなった、真四角の....。

レンガと言うあだ名の付いた、

240、と言うカタチです。



いろいろな方達から、

ヒントを頂いては、

自分のカタチにさせて頂いています。



unikoさんからも、

いろいろなインスピレーションを頂きました。

まず、そのうちの一つが、これです。

読みに来て下さって、ありがとうございました。

返信する
mkさんありがとう。 (トモロヲ)
2004-10-19 01:41:39
確かに。

すごく、カバに似ています。

見た目が。

その通りです。

それを思い浮かべて、書きましたし。



いいんです。

大事なモノなら、なんであっても。

僕にとっては、彼でしかない。

ただそれだけなのですよ。



他のモノを思い浮かべる人も、

人間を思い浮かべる人も、

それを自分の大事な者に、重ねる人も。

そうしてくれる事が、嬉しいのです。
返信する
Unknown (yuki)
2004-10-19 01:51:54
Vサンでしたか。



同時性として似たようなフレーズが出てくるので

たまにドッキリしてしまうのです。

返信する
Unknown (yuki)
2004-10-19 02:33:50
いや、自分が撒き散らした欠片が

創造に役立っていればいいのです。



搾取。願ったり叶ったりですね。
返信する
Unknown (トモロヲ)
2004-10-19 05:49:39
>yukiさん、コメントありがとう。

そう。

艶のないマットなグレー。

その言葉を書いた時に、

僕もそう思った。

(でも、衰え始めた後ろ姿は....。違うでしょ)



破片を、拾いながら歩く。

そうして、歩いた足跡を、

順序とは逆に辿る。

時には、見失いながら。

拾い集めた何かを、組み立てて、カタチにする。

あなたたちは種を蒔き、

僕はそれを、芽が出た時に知る。

僕がその豊穣を収穫する時、

初めて、何の種子なのかを、その手の中に確認する。



枝を繁らせ、

花が咲き、

また種子が実る頃、

その葉の陰に、面影を見る。
返信する
偶然 (loquat)
2004-11-19 00:17:17
枇杷の側にいらっしゃるとは。
返信する
よく見つけましたねえ。 (トモロヲ)
2004-11-19 03:18:21
loquatさん。コメントありがとうございます。

よくこんなところを見つけましたね。

びっくりしました。

あなたのお名前を、はじめて見た時に、

いい名前だなと思いました。

そして、どうしてこの名前を付けられたのだろうと。

そして、蛇足ですけど、

アメリカ人に、あの味の繊細さって解るのかなって。

言葉(名前)があるって事は、

それを食べることがあるのかなって。

あまり見た事ないから、あっちでは。

話を戻しますけど、

a_loquat、いい名前ですね。
返信する
私もびっくり (loquat)
2004-11-19 13:53:26
この名前にしたのは、好きだったこと。^^

それに。。食べられる時期が短くて

この果物を好きだという人あまりいなくて。

種ばっかり大きくて、味は甘みがスゴク遠くから

やってくるような甘みで。

これといってインパクトのない中途半端な感じ。

私自身のバランスの悪さその他もろもろ。

はっきりしてないところ似てるような気がして。

メロンとかすいかみたいに王道行ってないでしょ。笑



こんな前のエントリーにコメントしちゃって

スイマセン。
返信する

コメントを投稿