through the frozen window

ふさわしい言葉を探しているうちに、小さな羽音だけを残して、遠くへ。

I saw you last night, too.

2004-08-30 | Weblog
また会ったね。
昼間ですら、気を抜くと思い出してしまうくらいだから、
無防備な夜は、気をつけなくちゃ。
傍に立つ時は、教えてよ。
僕は横たわって、眼をつぶってるのに、
走る姿を追いかけている。
だけど、時間が経ち過ぎて、
いくら思い描いても、
もう僕の知っている姿はそこに残っていない。
今では姿ではなく気配になった。

あなたはこの姿に、気付く事はないでしょう。
たとえ傍に佇んでみても。
私をこの絵の中に残し、去っていった。
誰も眼にしたことのないこの姿は、
あなたがあの日、私に話してくれた、あの姿。
私は決して忘れない。
だからこうしてそれを、手に入れた。
この姿を願うことにしたのです。

本当にいつも感じていることが出来たなら、
それを見分けることもできるはず。
眼をつぶっても、
それが何か判るはずなのに。

お願いだから、
まだ、連れ去っていかないで。
まだ準備が出来ていない。
受け入れることも、拒むことも、そして、それに気付くことさえ。
僕が持ってるすべてを費って、
いまのうちに、覚えておきたい。
もう少しだけ、
もう少しでいいから、その時間を下さい。
その姿が、判らなくなっても、
ちゃんと見分けられるように。

夢の中に出て来たときに、振り向いてくれるように。
振り向いてくれたら、顔だって判るでしょ。

sacrifice

2004-08-30 | Weblog
一番最初に名乗り出たい。
身体をなげだして、誰かの身代わりになれたなら、
支払いは済むのだと、願いたい。
大切なものがたくさんあったあの頃、
僕はずっと、僕達、私達が幸せなら、
自分達がなんとか、苦難をやり過ごせますように、と、
祈っていた。

何をしても、何を費やしても、
償いは終わるどころか足りることもない。
支払いを続けても、払いきれるほどやり遂げられないのだから。燃え残りの時間が余ってるだけ。
どうせ持て余してるくらいだから、
勝手に持っていって、使っていいよ。
一番最初に、申し出たい。


あの時、僕の手を握るあの小さな手が、
大きく手を拡げて、求めた腕が、
すこしでも、たった1日でも多く、
穏やかに過ごすことができるとしたら。
僕の分を、
しっかりと生きてくれるなら。
もうそれだけで幸せだ。

例えばニュースで聞いてくれるかな。
誰かがそれを伝えてくれるかな。
そこがもしも、届く所にあるのなら。
それで、僕の気持ちを示すことができるのかな。
カタチを残すことができるなら。
そこが、声の届く場所だとしたら。

ずっと、思い続けてることを、
大切に思う気持ちを、忘れずにいることを。
届かない所へいってしまった、大切な人たちに投げ上げたい。
何かと引き換えればすむことなら、
喜んで、差し出すつもりです。
僕にできることを、教えて欲しいよ。

bare necessity

2004-08-29 | Weblog
残念だけど、
生まれて来たからって、
何か特別な意味があるなんて思えない。

誰かが、あらかじめそれを授け、
その答えを探す為に、それを全うする。
もし僕にそんな意味があるとしたら、
僕の役割は、誰かを悲しませることばかり。
こんな役割を授けられることなんて、あるのだろうか。
僕はマイナスに向かって歩いている。

誰かが、その苦しみを乗り越えて、
何かをやり遂げる時、
僕はその横を、重なることなく歩いて、
その誰かに、重荷を負わせる。
そんな罪を犯し続けるのは、
僕の役割。
くだらない物語の、脇を固める醜い悪役。
それとも、何か、
どこかに抜け出す方法があるのだろうか。
最後にそれを、償う機会があるというのか。
それもまた、白々しい映画の一コマ。
あるはずのない、クライマックス。
これは僕の為のストーリーではない。
その画面の意義は何。
何故ここで僕は憎まれ、消えるのだろう。

盗むつもりもなく、盗んでしまうことを、
自覚せずに、まわりを傷を付けて歩くことを、
気が付く度に、悔いてみても、
今さら何が変わるのか。
せめて終わりまで、ずっと気付かずにいられれば、
痛みにおびえることも無く、
役割をやり遂げられる。
みんなよりずっと早く、幕が落ちるまで。

The rain fell in sheets.

2004-08-27 | Weblog
眠る前に、確かめておきたいことはありませんか。

明日、目覚める迄、
まぶたの裏に、
焼きつけておきたいことは。

何度も目を閉じては、
思い起こせることを確かめる。
もし、目が覚めなくても、
いつまでも、失くすことがないように。
呼び出すことができるように。
あの時のように、探しまわらなくてすむように。
見えなくなってしまっても。

灯りを消す前に、

明日が来ることを、
あたりまえだと思えるように。
またきっと、会えるのだと思うことが、
自然なことに感じるように。

時間が何処かに進む手応えはない。
空が明るくなる、確信がない。
何かにしがみついて、
共有できるものを探して歩く。
共鳴するものを繋げて、
身体のまわりに並べていく。
落ち着きが取り戻せるまで。

気配をたぐり、
指でなぞって確かめる。
この線の上に、
夜が明け、朝が来て、また明日が繋がっていることを。

1日が終わる時に、

身体の暗闇に、
響かせておきたいこと。
その中に溺れるように浸って、
朝が来るまで、
光が射込むまで、
それが、反響することを。

目を閉じた後までも、
音をとどめておく装置。
波紋の広がりが、
これ以上、遠くへ消えていかないで。
滞まって。
そのままで。
目覚めるまで、傍にいて。
指先に感じる。
波打つ水面、それとも風紋。
壁に囲まれた音の反射。
雨の気配を探す。
走り去るその匂い。
部屋の中を通り過ぎる。

水を運ぶ鳥の声。
準備ができる頃には、朝が来る。

24

2004-08-27 | Weblog
24日は、
僕にとって特別な日だ。
いくつもの重要な事柄が、そこに重なる。
忘れては、イケナイ。
いや、忘れることなんてできるはずがない。
いろいろなことを、思い出し、
あの時の気持ちに戻る日だ。
そのカタチの現れとして、
その日は大抵、仕事の合間に時間を作って、
無理にでも、
墓参りをする。
別にそれがすべてではないし、
ただそれが、その日を象徴する。
そうすることで、やらなければイケナイ事を、
少しでも果たしたことにしたいと願う。
わすれてないよ。
毎月そうして、あの頃の記憶を確認する。
一人それをなぞらえる。
線香が燃え尽きて消える迄、
そこに立ち、
まだ何も上手くできていないことを、詫びる。
そこで空を仰ぎ、その非力さを、
切なく思う。


今月は、どうしても、今日までどうしても行けなかった。
でもずうっと気になっていて、
眠りについても、何度も眼を醒ましました。
今日、ようやく行くことが出来ました。
誰かの供えた花が枯れ、
誰かの置いた水が渇き、
燃え残った灰が流れ落ち、
雨に洗われた石が、黒く光っていました。
指でなぞると、こみあげて来る。
下を向くことができない。


誰かの願いを、小さな願いを見つめてあげて。
僕の十年じゃ、不足ですか。
今すぐに差し出したい。
僕が何か、人の為になることをすれば、
その分をまわしてくれますか?
どうすれば、
守ってくれますか。
僕に何ができるのだろう。

気付いたら、名前を呼んでいる。

手のもつカタチ。

2004-08-24 | Weblog
手に弾かせない。

ある、音楽家の言葉です。
この言葉は、僕の中に留まりました。
自分を表現するには、その意識、その熱意もさることながら、
やはり、最低限以上の技術力は、欠かせません。
どれだけそれを思うことが出来ても、一生懸命でも、
形にできなければ表現できない。
最も当たり前のことです。
僕達は、形になった結果でしか、それを見つめてもらえない。
コンセプトも、プロセスも、
結果が有ってこそなのだから。
チカラがなければ意味がないのです。

その為に、下積みをし、練習を繰り返し、
我慢して、その技術を磨く。アイディアで補えないかと模索する。
長い時間と、情熱を費やすのです。
音楽、絵画、料理、工芸、スポーツ、芸能、文筆、その他ほぼすべて...。
どのジャンルにも言えることです。

そうして、手に入れた技術を、
黙っていても、身体が覚えたやり方で発揮することで、
表現する段階が来ることを願う。
そしてそれをベースに、その上に自分自身を映し出す。
または、あるべき形を、自然に調和させる。

けれど彼の言葉は、またその上を目指す。
絵画でよく言われるタッチ。
そのストロークが自分の使い慣れた、手なりの線になってしまうと、
それは、一つの決まりきった形を出ることができない。
彫刻も然り。形に添うことのないタッチは、
ただのテクスチャーにしかあらず。
音楽も然りだと言うのです。
物理的に産まれる音を、手によってコントロールする時、
手が勝手に弾くリズムや、メロディーは、
その手に自然に馴染んでしまった、いつもの音になってしまう。
それでは、予定調和しかできないと。

重い言葉です。
自分に馴染んだスタイルで仕事がしたいし、モノが作りたい。
それが安心だし、予想もつく。
快適に製作していくことができるのですから。
けれど、今までを積み上げた手に任せてばかりいては、
その先のものは作れない。
この目は、気付かぬうちに、同じものをなぞるように見てばかりいる。
一度手にした作風を、
ただ繰り返し使ってしまう。

言葉も同じ。いつしか、
同じ言葉を繰り返し使っている。
これでは、何も、伝えられない。


できることなら。

2004-08-20 | Weblog
僕はたいしたものは持ってないけど、
何かに代える事ができるなら。
大事ものを奪ってしまったせいで、
代償を払う。
支払えるものなら、何でも持ち去って欲しい。
償いたい。

それを償いと呼ぶのだろうか。
もしそうだとしたら、
執行猶予こそ、苦しみの塊だ。
ひと思いに、切り落として欲しい。
どんな事をしても、
願い、祈り、乞う、それでも、
許されることはない。
後を振り向いても、道は残っていない。
前は崖のはずなのに、
なぜか平たい地面が永遠に続く。
砂粒を一つずつ数える。
先に進むのを躊躇する。
自分だけが許された事に、戸惑う。
生温い汗が、頸をつたう。

その間もずっと、時間だけが進んでゆく。
そして、薄れるはずのない傷を、
時間が癒すと、誰かが云う。

知らない。

2004-08-15 | Weblog
知らない。
僕達は知らな過ぎる。
そこで何が起きていたのか。
大きな虚空の為に、その旗印の下に、
疑いもなく進むしかなかった。
疑問には、仕方なく眼をつぶり、
誰かの為に、自分を投げ出す事にする。
まずここを乗り越えなければ、
生き延びていけないのだと。
何かと引き換えに、
その犠牲を、その代償を、
大きく支払った。

それを知らない僕達には、
今、その気持ちを、
なんとか、懸命に想像してみても、
充分に汲み取る事はできない。

僕達は知らな過ぎた。
誰が何をして、
誰が、どんな事をされて、
誰が悲しみ、枯れ果ててしまったのか。

憎しみと、あきらめは、
時間が癒し、忘れさせてくれたのだろうか。
その痛みは、何によって慰められていくのだろうか。
知らない事で、
罪を犯してはいないだろうか。
その罪を深くしてはいないか。

美しい水

2004-08-13 | Weblog
彼女はまっすぐに前を向く。
強い陽射しに怯まずに、それを信じている。
この先へ、まっすぐに歩いてゆけば、
必ず湖がある事を、信じて疑う事はない。
今よりもう一歩先に、踏み出せば、歩き続ければ、
もうすぐそこに辿り着ける。
彼女が向かうその先こそ、「前」なのだ。

臆病な僕達は、迷っている。
どちらが前になるのだろう。
裏切られる事を畏れて、それを疑ってばかりいる。
辿り着く時には、その水はもう消え失せてしまっていたら、
のどの渇きを怖れて止まない。
もし他の誰かに、先に奪われてしまったら、
目を光らせて、辺りをうかがう。
まだ手に入らないそれが、まるで自分のモノとでも云うように。

だからそれを奪い合い、失う事を、足りない事を怖れて、
自分の取り分を主張する。
明日のエクストラを、その次の日の分を、欲張ってしまう。
信じる事を止め、憎しみあい、諍いを繰り返す。

彼女のように、
湖がみんなの為にある事を、
信じる事ができるなら、
自分を信じていられるのなら、
その水を分け合える。
手を差し伸べる事もできるだろう。

手をあわせる

2004-08-08 | Weblog
食事の度に、
思い出す事の一つ。
その国では、本当に安いお金でご飯が食べられます。
同じアジア人として、とてもおいしい、とても口に合うご飯です。
しっかりと手をかけた食事。
質素だけれど、素晴らしい食事。
それでも1ー2ドル。
古い小さなマーケットの隅っこの、
いつもの屋台でとる、いつもの食事。

けれども、それを食べられない人も、
勿論、その国には本当にたくさん住んでいます。
僕の食事を、じっと見つめる子供がいます。
食べ終わるのをじっと待っているのです。

僕は、すべてを平らげる事は出来ません。
彼は、待っているのです。
ほんの少し離れて、彼は待ちます。
少しでも、食べ物が残る事を。
少しでも多く、残るのを。

僕達は知っています。
彼等も知っているのです。
誰が、食事を食べ残し、
誰が、食事をわざと残してくれるのかを。
彼等は判っているのです。

僕はスープと混ぜずに、ご飯を傍らに避けて食べます。
彼は僕のテーブルの皿から、残したご飯を持ち去ります。
それをプラスティクバックに入れると、
僕に手を合わせます。

僕は、手を合わせられるような事を、してはいません。
けれど彼等は、毎日僕に手を合わせます。食事の為に。
ただ、毎日の繰り返しです。
僕達の間に、差はないのに、
ただ、この国に生まれた為に、ただその事だけで、
僕達の位置が決まってしまったのです。

世界は廻って、遠くの知らない国の誰かを、
知らない間に、僕達は搾取しています。
そのおかげで、この暮らしを維持する事が出来ている。
日本はそう云う国なのです。
僕はそう云う人なのです。

手を合わせ、謝らなければイケナイのは、
僕の方だと思います。

食事の時、思い出す事の一つです。

いつもの事。

2004-08-08 | Weblog
彼が近寄ってきました。
彼に限らず、いつもの事です。
何かを買ってくれと、何かをくれないかと、
流暢とは云えないけれど、充分すぎる英語で話しかけてきます。
何か知りたい事を、教えようか?
僕には親は居ないけど、たくさん兄弟がいるんだよ。
お金を作ったら、学校に行くんだ。
いつもの事です。

また、今度は彼女が来ました。
学校は?行かなくていいの?
行かないの、これを売らなくちゃ。
お金があれば行くんだけど。
手伝ってあげたいんだけどね、
ごめん、いらないよ。
いつもあなたは、私から買ってくれないのね。
ごめんね、いらないんだ。
ごめんねばっかり。謝るの上手ね。
でもいつも会う度に謝ってばかりで、
結局あなたは買ってくれないから、
私はお金を手に入れられないし、あなたも何も手に入らないのよ。
いつもの事よね。

あなたにとって、痛くも痒くもないお金じゃない。
また明日会いましょう。

ねえ、ホテルのランドリー高いでしょ。
そうだね。
いいところ知ってるんだけど。連れていこうか?
10分の1くらいだからさ。
その分を、地元の人に、落としてくれないかな。
いいよ。もちろん。
食事はどうしてるの?
マーケットの屋台でしてるよ、いつも。
そうして欲しいな。
地元にお金を落として欲しいんだよ、少しでも。
いつもの事です。

それでも彼等は、チップや、物乞いや、
押し売りに近い商売で、1日にかなりの外貨を得る。
それも勿論労働だけれども、
屋台の食事を売る人の、
働いて得る利益と比べたら、
かなりの利益を上げる事になる。
ましてや、工場で働いたりする人、
洗濯などで生計を立てている人よりも。

そんな1日も、1日かかって得る分は、
それでも、ぼくたちにとっては、
オフィス街に売りにくるお昼のお弁当一食にも満たない。
ほんとうに、恥ずかしいくらい、
痛くも痒くもないお金。
同じ人間なのにとよく云われるけれど、
この違いは、何処に始まるのだろう。

それでも彼等の笑顔は、美しい。

picture window

2004-08-06 | Weblog
物凄いと云うのがあてはまる、
素晴らしい夕暮れでした。
僕は色の感覚が偏っていて、
普段どちらかと云うと、B&Wに物事を見ているけれど、
引き剥がされるような色でした。

京浜東北線の北へ向かう列車の窓に、
嘘のような別世界が広がる。

窓から見上げた東の空は、
桜とも、橙ともつかない柔らかな滲みが、
濃く沈んだ群青の隙間を埋めてゆく。
ねっとりとした、濃密な絵の具の混ざりあい。
筆にまとわりつく重ささえ、感じられそうな。

そう、なぜか、東の空なのだ。

同じようにこの空を見上げる人がいるだろう。
会えなくなった人たちは、どこかでこれを見上げるだろうか。
同じように思う人が、いつか見上げている時に、
僕は生活に埋もれてしまって、
頭の上の贈り物に、気付かないに違いない。
その手を赤く染めても。

このおかげで、
もう一度、何かを思う事ができる。
1日だけ、のばす事ができる。
そっとしておくことができる。

忘れない

2004-08-04 | Weblog
あの日、
大切な人を失くしました。
一緒に過ごせる最後の時間だった事を、
僕は自覚していないうちに、
その灯は消え去ってしまった。
当たり前のように、浪費して、
何もカギを残せなかったから、
急にそれは閉じてしまって、
最後の温もりを、思い出せない。
ちゃんとお別れも言えなかった。
抱きしめる事すら、してあげられなかった。
そこら中に散らばっているはずのカケラを、
今になっても、探しまわって、
手探りでかき集める。
そして、きっといつになっても、
僕はそこから離れられない。

この夏を、大切な人と過ごすあなたへ。
この夏を忘れないで。

Dialog in the dark

2004-08-04 | Weblog
眼を閉じて生活する事を、想像する事は難しい。
どれだけ、その気持ちを汲み取ろうとしても、
それはある一部をまさに掬った事にしかならない。
自分の掬い取れる嵩の小ささに、
つくづくがっかりしてしまう。
まして、眼を閉じて誰かとcomunicateする事を、
あなたはどの位感じられますか?

言葉の通じない相手と、電話で話すようなもの。とは、
言い過ぎだろうか。

僕達の認識は、見る事を基準に成り立っている。
事象を、それ以外のアプローチからdiscribできますか?
けれど、それは、本当に信じられる判断なのだろうか。
眼に映る世界のすべては、現実ですか。

僕は見えない。
そのかわり、僕達には手がある。
耳が、鼻が、あるではないか。
芳しい香りが、水を打つ静けさが、
指に触れる柔らかい肌が、温もりと湿りを持って、
そこに有るではないか。
それでも、
眼以外のもので、見ると言う事以外で、
あなたの事を、
見分ける事ができるだろうか。
僕は信じている。

住み慣れた部屋の灯りを、眼をつぶって灯せますか?

ミツバチのささやき

2004-08-04 | Weblog
僕は、いそいでいた。
今聴こえてくるこの小さな羽音を、
目に見える空気の粒を、
降り積もる光の嵩を。
書き留めておきたくなった。

暖かい湿った腕に触れた指先が、
乾いてしまう前に。
まだそれを、思い出せるうちに。

まだこの指が動くうちに。
すべてを忘れてしまうのを、
気付いている事ができるうちに。