裸の腕で、その小さな塊を抱きしめる。
抱きかかえられた種子は、
柔らかく包まれてはいても、
その覆われた包みの中に、
無数の棘を隠し持っている。
気をつけているつもりでも、
僕の腕は傷だらけになる。
それは、水なしで呑み込むには、大きすぎる。
顔を歪めてそれを口にすると、
唇が切れていた。
眼を閉じて、
その血の味を確かめる。
そのまま水で流し込む。
眼を瞑って、喉を通るのを感じている。
その棘が、喉を、胸を、腑を傷つける。
そしてそこに、棘をいちいち残してゆく。
血の味と、しみる痛み。
しばらく経つと忘れている。
けれどいつしかそれは、身体の中で芽を出して、
小さな双葉が顔を出す。
僕の身体の養分を吸い、その茎は少しずつのびてゆく。
枝が伸び、若葉が芽を出し、
若い樹の持つ伸びやかさが、
いつの間にか僕とひとつになってゆく。
僕はそれを養い、樹は強く僕を支える。
木立は、しなやかに森をつくる。
身体の中で、その木が揺れる。
その枝が揺れる音。
その葉が風になびく音。
陽射しが葉陰をつくる、音にならない音の繰り返しが、
身体の中で共鳴する。
その音が、僕の口からこぼれ出る。
溢れだした音が、
あなたの前で、カタチを作る。
水面を揺らし、弧を描く。
その環が拡がって、伝わって行く。
幾重にも重なって、同心円を描いて行く。
何気ない言葉のひとつが、そうして僕から離れて行く。
僕から生まれ、また何処かで種子になる。
抱きかかえられた種子は、
柔らかく包まれてはいても、
その覆われた包みの中に、
無数の棘を隠し持っている。
気をつけているつもりでも、
僕の腕は傷だらけになる。
それは、水なしで呑み込むには、大きすぎる。
顔を歪めてそれを口にすると、
唇が切れていた。
眼を閉じて、
その血の味を確かめる。
そのまま水で流し込む。
眼を瞑って、喉を通るのを感じている。
その棘が、喉を、胸を、腑を傷つける。
そしてそこに、棘をいちいち残してゆく。
血の味と、しみる痛み。
しばらく経つと忘れている。
けれどいつしかそれは、身体の中で芽を出して、
小さな双葉が顔を出す。
僕の身体の養分を吸い、その茎は少しずつのびてゆく。
枝が伸び、若葉が芽を出し、
若い樹の持つ伸びやかさが、
いつの間にか僕とひとつになってゆく。
僕はそれを養い、樹は強く僕を支える。
木立は、しなやかに森をつくる。
身体の中で、その木が揺れる。
その枝が揺れる音。
その葉が風になびく音。
陽射しが葉陰をつくる、音にならない音の繰り返しが、
身体の中で共鳴する。
その音が、僕の口からこぼれ出る。
溢れだした音が、
あなたの前で、カタチを作る。
水面を揺らし、弧を描く。
その環が拡がって、伝わって行く。
幾重にも重なって、同心円を描いて行く。
何気ない言葉のひとつが、そうして僕から離れて行く。
僕から生まれ、また何処かで種子になる。