この1週間ほど、忙しくて「黒猫のつぶやき」の記事を書く時間がありませんでしたが、その間の黒猫が何をやっていたか、というのが今回の記事です。
先週の末、事務長の太田さんと、事務員の○山君から「過払い金の返還請求をやってくれ」というお話がありました。何でも、それまで過払い金の返還請求の仕事をやっていた事務のKさんが、あまりの件数の多さに潰れてしまったというのです。
そこで、今週から黒猫が過払い金返還請求の仕事に乗り出すことに。太田さんからもらったリストによると、正確には数えていないがA4版で2ページ分あって、ざっと50件以上はありそうな感じ。太田さんの言うには、まだ請求書も出していないというので、とりあえず全件について請求書を出す仕事から始めることになりました。ただ件数が多く、1件ずつ請求書を出すのは面倒なので、請求先の業者ごとにまとめて請求書をFAXで送ることにしました。
最初は請求書にFAX送信書を付けて発送していましたが、別々に作るのが面倒になってきたので、間もなく請求書に相手先の電話番号とファックス番号、送信枚数などを書く欄を設けて、1枚で請求書とFAX送信書を兼ねる書式に変更しました。
太田さんが持ってくる過払い金の計算書をもとに、黒猫が請求書を作っていると、あるとき太田さんから待ったがかかりました。
「その件は、取引経過が途中開示なので、その金額を書いちゃうとまずいんだよ。」
なるほど。途中開示であれば、先に全部開示するよう督促状でも送らないといけないですね。そこで、途中開示の際にKさんが使っていた書式を見ると、文面はまるで揉み手でもせんがばかりのお願いモード。取引経過の開示義務自体が争われていた時代ならともかく、最高裁判決で取引経過の開示義務が認められている時代にこんなお願いモードの文面を使う必要がどこにあるか。
そこで、開示督促状の書式を新しく作ることに。取引経過の開示義務をはっきり認めた最高裁判決の判旨を引用し、「さっさと全部開示しないと、金融庁への行政指導の申立てをして、訴訟で慰謝料請求かましたるぞ!」という趣旨の文面を作り、重要なところは太字でアンダーラインも引いて、これもA4版1枚でファックス送信文兼用の書式が完成。これに、最高裁のHPからプリントアウトした当該際高裁判決の要旨と本文をくっつけて、合計4枚になる定型書式を作り、途中開示などふざけたことをやってくる業者に片っ端から送りつけてやりました。
その作業が一段落し、また請求書を作る作業に戻ったところ、待てど暮らせど請求書が出てこない。既に過払い金の金額が出ているのに、どうして計算書を出すのにそんなに時間がかかるのか太田さんに問いただしてみると、入出金の入力に間違いがないかどうか確認しているとのこと。
待っていても仕方ないので、黒猫も確認作業を手伝うことに。もっとも、過払い金返還請求の作業をやりつつ、裁判所での審問やら個人再生委員との面談やら新規債務整理事件の依頼者との面談やら、弁護士としての仕事も入ってくるので、確認作業に専念することもできず、頭の切り替えが大変でしたが。
そんな中、某信販会社に対する過払い金の2件について、向こうから利息制限法に基づく引き直し済みの計算書を送ってきた(しかもこちらの計算と比べてもこちらに不利ではない)ところがありました。奇妙だなと思ってその開示書類を見てみると、文面もやたら紳士的。送付元の記載を見ると、どうやら債権回収会社に回収委託された債権らしい・・・
待てよ。債権回収会社といえば、たしか債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)の規定により、利息制限法違反の利息の請求はたとえ裁判外のものであっても禁止されていたはず。もし違反して法務省に告発されると、債権管理回収業の許可を取り消される可能性があるので、わざわざ利息制限法による引き直し計算済みの開示を行い、しかも念には念を入れて顧客に最も有利な計算方法(過払い金額が多くなる計算方法)で計算しているという推測が成り立つ。
そうであれば、単にその金額で異議はありませんという文書だけ送ってやれば、ごねられる可能性もまずなく、さっさと返還を受けられるはず・・・
そう気が付いて、思わず「なんでこんな簡単な請求すらやっていなかったんだ」と口走ると、事務の○山君から「だから、過払い案件が多すぎて処理できなかったんですよ」という返事が戻ってきました。
・・・なるほど。黒猫がいない間、ここは実質弁護士のいない事務所だったから、簡単だということすら分からなかったわけですね。
とりあえず、債権回収会社の案件については、その金額で異議ありませんという別の書式を作って、すぐ請求書をFAXで発送しました。
その後、太田さんから「業者から問い合わせが来たら、何割以上なら和解すると答えればよいか」という質問が来ました。たしかKさんの場合、8割くらいの金額で和解している例が多いというので、それで何割を和解ラインにするか聞いていたのでしょうが・・・
「和解などするか。過払い金額の計算が間違っているという話なら聞くが、それ以上はびた一文負けんぞ!」
「でも、それでは和解が成立しないかも・・・」
「四の五の抜かす奴は、3月上旬を目途にまとめて訴訟じゃ!」
もちろん、最初から脅しただけで業者が過払い金を全額返してくるとは考えにくいので、請求書の発送作業が終わったら返事も待たずに訴状起案にとりかかり(すでに少し書き始めていますが)、依頼者から訴訟委任状を取り付け、3月上旬になったらまとめて本当に訴訟を起こすつもりですが。
そんなやり取りを経て、金曜日くらいになると、どうも請求書の発送作業が思うように進まない。太田さんいわく、他の仕事もあるので入出金の確認作業がなかなか進まないということ。そして、3月上旬に訴訟というご期待には添えないかもしれませんが・・・という弱気な発言も。まあたしかに、黒猫が確認したものにも間違いが数件あったので、確認の必要性がないとは言いませんが・・・。
そもそも、入出金のデータ入力は誰がやったのか尋ねてみると、太田さん自身とのこと。・・・ただでさえ、年齢のせいか事務処理能力がやや鈍っている太田さんが自らデータを入力して、太田さん自身が確認したところで、その正確性はたかが知れているような・・・
しかも太田さんによると、過払い金の件数は最初のリストにあったものだけではないとのこと。
「それじゃあ、全部で何件くらいあるの?」
「240件くらい・・・」
・・・・・・・・・・・・!!!
これには黒猫も絶望しました。
まあ、太田さんも、過払い金関係の仕事以外にも、先物取引事件の仕事とか、事務長としての仕事とか、所長のお守りとか厄介な仕事を色々抱えて大変なのは分かりますが・・・。
だめだ。このおやじさんのペースに付き合っていたら、訴訟起こす前に年が暮れてしまうわ。
とりあえず、来週からは確認作業は省略して、とにかく1月中に全件請求書を送りつけてやり、間違いがあるなら言って来いモードでやることにしよう。そして、過払い案件がたとえ200件あろうが300件あろうが、こうなったら意地でも3月上旬に訴訟起こしてやる。内心そう固く決意して、今週の仕事を終えました。
もっとも、ここに書ききれなかった出来事や、書けない出来事も色々あったんですけどね・・・。
先週の末、事務長の太田さんと、事務員の○山君から「過払い金の返還請求をやってくれ」というお話がありました。何でも、それまで過払い金の返還請求の仕事をやっていた事務のKさんが、あまりの件数の多さに潰れてしまったというのです。
そこで、今週から黒猫が過払い金返還請求の仕事に乗り出すことに。太田さんからもらったリストによると、正確には数えていないがA4版で2ページ分あって、ざっと50件以上はありそうな感じ。太田さんの言うには、まだ請求書も出していないというので、とりあえず全件について請求書を出す仕事から始めることになりました。ただ件数が多く、1件ずつ請求書を出すのは面倒なので、請求先の業者ごとにまとめて請求書をFAXで送ることにしました。
最初は請求書にFAX送信書を付けて発送していましたが、別々に作るのが面倒になってきたので、間もなく請求書に相手先の電話番号とファックス番号、送信枚数などを書く欄を設けて、1枚で請求書とFAX送信書を兼ねる書式に変更しました。
太田さんが持ってくる過払い金の計算書をもとに、黒猫が請求書を作っていると、あるとき太田さんから待ったがかかりました。
「その件は、取引経過が途中開示なので、その金額を書いちゃうとまずいんだよ。」
なるほど。途中開示であれば、先に全部開示するよう督促状でも送らないといけないですね。そこで、途中開示の際にKさんが使っていた書式を見ると、文面はまるで揉み手でもせんがばかりのお願いモード。取引経過の開示義務自体が争われていた時代ならともかく、最高裁判決で取引経過の開示義務が認められている時代にこんなお願いモードの文面を使う必要がどこにあるか。
そこで、開示督促状の書式を新しく作ることに。取引経過の開示義務をはっきり認めた最高裁判決の判旨を引用し、「さっさと全部開示しないと、金融庁への行政指導の申立てをして、訴訟で慰謝料請求かましたるぞ!」という趣旨の文面を作り、重要なところは太字でアンダーラインも引いて、これもA4版1枚でファックス送信文兼用の書式が完成。これに、最高裁のHPからプリントアウトした当該際高裁判決の要旨と本文をくっつけて、合計4枚になる定型書式を作り、途中開示などふざけたことをやってくる業者に片っ端から送りつけてやりました。
その作業が一段落し、また請求書を作る作業に戻ったところ、待てど暮らせど請求書が出てこない。既に過払い金の金額が出ているのに、どうして計算書を出すのにそんなに時間がかかるのか太田さんに問いただしてみると、入出金の入力に間違いがないかどうか確認しているとのこと。
待っていても仕方ないので、黒猫も確認作業を手伝うことに。もっとも、過払い金返還請求の作業をやりつつ、裁判所での審問やら個人再生委員との面談やら新規債務整理事件の依頼者との面談やら、弁護士としての仕事も入ってくるので、確認作業に専念することもできず、頭の切り替えが大変でしたが。
そんな中、某信販会社に対する過払い金の2件について、向こうから利息制限法に基づく引き直し済みの計算書を送ってきた(しかもこちらの計算と比べてもこちらに不利ではない)ところがありました。奇妙だなと思ってその開示書類を見てみると、文面もやたら紳士的。送付元の記載を見ると、どうやら債権回収会社に回収委託された債権らしい・・・
待てよ。債権回収会社といえば、たしか債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)の規定により、利息制限法違反の利息の請求はたとえ裁判外のものであっても禁止されていたはず。もし違反して法務省に告発されると、債権管理回収業の許可を取り消される可能性があるので、わざわざ利息制限法による引き直し計算済みの開示を行い、しかも念には念を入れて顧客に最も有利な計算方法(過払い金額が多くなる計算方法)で計算しているという推測が成り立つ。
そうであれば、単にその金額で異議はありませんという文書だけ送ってやれば、ごねられる可能性もまずなく、さっさと返還を受けられるはず・・・
そう気が付いて、思わず「なんでこんな簡単な請求すらやっていなかったんだ」と口走ると、事務の○山君から「だから、過払い案件が多すぎて処理できなかったんですよ」という返事が戻ってきました。
・・・なるほど。黒猫がいない間、ここは実質弁護士のいない事務所だったから、簡単だということすら分からなかったわけですね。
とりあえず、債権回収会社の案件については、その金額で異議ありませんという別の書式を作って、すぐ請求書をFAXで発送しました。
その後、太田さんから「業者から問い合わせが来たら、何割以上なら和解すると答えればよいか」という質問が来ました。たしかKさんの場合、8割くらいの金額で和解している例が多いというので、それで何割を和解ラインにするか聞いていたのでしょうが・・・
「和解などするか。過払い金額の計算が間違っているという話なら聞くが、それ以上はびた一文負けんぞ!」
「でも、それでは和解が成立しないかも・・・」
「四の五の抜かす奴は、3月上旬を目途にまとめて訴訟じゃ!」
もちろん、最初から脅しただけで業者が過払い金を全額返してくるとは考えにくいので、請求書の発送作業が終わったら返事も待たずに訴状起案にとりかかり(すでに少し書き始めていますが)、依頼者から訴訟委任状を取り付け、3月上旬になったらまとめて本当に訴訟を起こすつもりですが。
そんなやり取りを経て、金曜日くらいになると、どうも請求書の発送作業が思うように進まない。太田さんいわく、他の仕事もあるので入出金の確認作業がなかなか進まないということ。そして、3月上旬に訴訟というご期待には添えないかもしれませんが・・・という弱気な発言も。まあたしかに、黒猫が確認したものにも間違いが数件あったので、確認の必要性がないとは言いませんが・・・。
そもそも、入出金のデータ入力は誰がやったのか尋ねてみると、太田さん自身とのこと。・・・ただでさえ、年齢のせいか事務処理能力がやや鈍っている太田さんが自らデータを入力して、太田さん自身が確認したところで、その正確性はたかが知れているような・・・
しかも太田さんによると、過払い金の件数は最初のリストにあったものだけではないとのこと。
「それじゃあ、全部で何件くらいあるの?」
「240件くらい・・・」
・・・・・・・・・・・・!!!
これには黒猫も絶望しました。
まあ、太田さんも、過払い金関係の仕事以外にも、先物取引事件の仕事とか、事務長としての仕事とか、所長のお守りとか厄介な仕事を色々抱えて大変なのは分かりますが・・・。
だめだ。このおやじさんのペースに付き合っていたら、訴訟起こす前に年が暮れてしまうわ。
とりあえず、来週からは確認作業は省略して、とにかく1月中に全件請求書を送りつけてやり、間違いがあるなら言って来いモードでやることにしよう。そして、過払い案件がたとえ200件あろうが300件あろうが、こうなったら意地でも3月上旬に訴訟起こしてやる。内心そう固く決意して、今週の仕事を終えました。
もっとも、ここに書ききれなかった出来事や、書けない出来事も色々あったんですけどね・・・。
ど素人な質問ですいません。
弁護士の名義貸しとして問題になるのは、弁護士がそうした必要最低限度の監督すらせず、実質的な決定を事務員さんの独断で行わせてしまっているような事案です。もっとも、名義貸しをしているという自覚はなくても、弁護士の監督が十分に行き届いていないと、事実上名義貸しに近い状態になってしまう危険性は常にあるんですけどね。
計算間違いも2つあって、過払い金を多く計算したときと、少なく計算したときとがありますが、少なかったときには取り返しようがないですよ。
あと、サービサーに回っていても、そんなに債務者に優しい計算などしていないですよ。
しかし、文面からは弁護士の監督が十分に行き届いていないように読めるのですが。
医師の監督下で行われていることが建前の病院の医療行為と同じで、公開しないほうがいいのでは。