黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

翻訳しにくい外国の地名・・・

2010-12-19 21:12:06 | 歴史
 相変わらず,ブログの更新が滞りがちで申し訳ありません。ただ黒猫の場合,既に弁護士会のお偉方に目を付けられている関係で,あまり頻繁にブログ更新を続けていると,既に健康が回復したものと勘違いされて,会費免除申請に支障が出るという問題もあるのですが・・・。

 それはともかく,現状ではとても仕事を引き受けられる状況にないので,割と気分が安定しているときは,外国製の歴史シミュレーションゲームをプレイすることが多くなっています(コーエーなど和製のゲームは,最近携帯ゲーム機でもプレイできるお手軽ゲームの方向に流れてしまって,黒猫のような本格派SLGが好きなプレイヤーは,もはや外国製ゲームの日本版に流れるしかなくなっているのです)。
 その一環として,某外国製ゲームのMODで用いられている地名を日本語に訳す作業をしてみたのですが,それが思ったほど簡単には行かないのです。以下,若干翻訳に困った地名をリストアップしてみることにします。

1 わりと有名だけど,知らないと訳せない地名
・Prague チェコ共和国の首都プラハのこと。英語表記だと思わず「プラグ-」などと読んでしまいそうになるが,日本ではチェコ語の発音に倣い「プラハ」と表記するのが一般的。なお,日本では最近「Prague(プラハ)」と名乗るロックバンドがメジャーデビューを果たしたそうです。
・Rheims フランスの都市で,英語表記からはとても想像できないが,日本では「ランス」と訳すのが一般的。
・Buda ハンガリーの首都ブダペストのこと。13世紀にモンゴル人の侵略でハンガリーの国土が荒廃した後,時の国王ベーラ4世がブダ城を建築し,その近くにあるペストの町といつの間にか合併して,「ブダペスト」と呼ばれるようになったらしい。このゲームでは,ご丁寧にもブダとペストを別の都市として定めているようであるが,その一方で「マジャルオルサグ(マジャール人の国)」を「ハンガリー(フン族のガリア)」と呼ぶのはいかがなものかと思う。
・Bordeaux フランスの都市ボルドーのこと。ワインの産地として有名だが,英語の綴りから「ボルドー」という発音を想像するのは極めて困難である。
・Kutais 「クタイシ」と読むのが一般的らしい。黒海東部にあるグルジア共和国のうち,ロシアに占領されて事実上グルジアから独立している地域(アブハジアと南オセチア)を「ジョージア」と呼び,その中でトビリシに次いで大きな都市らしい。
・Florence イタリアの都市フィレンツェのこと。英語読みだと「フローレンス」になるが,日本ではイタリア語の発音に近い「フィレンツェ」と読むのが一般的。
・Athens 古代から続くギリシャの都市で,現在でもギリシャの首都であるアテネのこと。都市名はギリシャ神話の女神アテナに由来するものの,古代から複数の異称があり,1453年にオスマン朝がこの地を征服して以来,都市としては低迷を続けた。19世紀のギリシャ独立にあたって首都に選ばれ,古代の読み方である「アテナイ」が再採用されたものの,1970年代に公用語をカサレヴサ(当時大量に混じっていたトルコ語の語彙を排し,その穴を古代ギリシャ語の語彙で埋めたものであるが,日常会話としては殆ど用いられず,公用文書でも俗語である「ディモティキ」を併用せざるを得ない状況だった)からディモティキに変更するにあたり,ギリシャ語の公式名称としては「アティーナ」が用いられることになったらしい。
・Milan 英語の綴りでは「ミラン」と読みたくなるが,日本では「ミラノ」と訳すのが一般的である(現代イタリア語では,むしろ「ミラーノ」に近い発音らしい)。なお,古代ローマ時代はラテン語で「メディオラーヌム」などと呼ばれていたが,ゴート戦役で東ゴート族によって完膚無きまでに破壊された後,古代ケルト人による呼称が復活したものらしい。

2 読み方が必ずしも一定していない地名
・Constantinople 日本では「コンスタンティノープル」という英語読みがほぼ定着しているが,ある程度ローマ史に詳しくなると,むしろ「コンスタンティノポリス」と訳したくなるのではなかろうか。
 なお,コンスタンティヌス大帝による建都以前の地名は「ビザンティオン」であり,これが東ローマ帝国の異称である「ビザンティン帝国」の語源になっていることは言うまでもない。そして,現在の呼称はトルコ語の「イスタンブール」であるが,この呼称が定着したのはトルコ革命後の1930年であり,オスマン朝時代は「イスタンブール」という異称も徐々に使われるようになったものの,正式名称は「コスタンティニエ」(ペルシャ語では「クスタンティーナ」)が長く使われていたという。
 そして,「イスタンブール」という名称の語源には様々な説があり,具体的にはギリシャ人がコンスタンティノープルのことを「イス・スティン・ポリ(都市の中の都市)」と呼んだことに由来するという説,コンスタンティノポリスを縮めた「スタンプール」という形が語源になっているという説,スラブ人らが旧市街を指して呼んでいた「スタンブル」という地名がトルコ語にも取り入れられたとする説,さらにはイスラムの地を意味する「イスラーム・ブール」というオスマン朝時代の美称が定着したものとする説などがある。
 ちなみに,現代ギリシャ語では「コンスタンディヌーポリ」と発音するらしく,現在もヨーロッパを代表する巨大都市の一つでありながら,これだけ名称が様々に変遷する都市は他に類を見ないだろう。
・Nicaea 古代から歴史に名を残すギリシャ系の都市(ただし,アナトリア半島にあるので現在はトルコに属する)であるが,その読み方は「ニカエア」「ニカイア」「ニケーア」などと訳者によってばらばらであり,たぶんどれも絶対的な正解ではないのだろう。黒猫は迷った挙げ句,単に一番読みやすいとの理由から「ニケーア」を選択した。

3 日本での知名度が極めて低く,定着した訳語もない地名
・Tzernigov ロシアにある地名らしいが,ウィキペディアでも言及されておらず,どのような町であったのかも分からない。
 ネットで記事を探しても,ほとんどこのゲームに関するもの(どう読むのか)しかないので,仕方なく現在の有力説である「ツェルニコフ」という読み方を採用した。
・Qulzum エジプト北東部にある寒村で,現代の「スエズ」にあたるらしい。19世紀のスエズ運河完成により港町としての重要性が増していったが,第二次中東戦争及び第三次中東戦争で街は破壊され,その後復興が進められたという。結局,中世時代の読み方ははっきりしないため,単に「スエズ」と読むことにした。
・Al-Mahdiya 現代のチュニジアにあるイスラムの都市。ウィキペディアでは「マジア」ないし「マディア」の訳語が使用されていたが,塩野七生氏が『ローマ亡き後の地中海世界』で「マフディーヤ」という訳語を使用していたため,これを採用するものとした。

 こうして調べてみると,単に外国の地名を訳すというのも,正確にはその外国の歴史を遡って検証する必要があり,必ずしも容易な作業ではないことが分かります。そんな外国の地名なんてどうでもいいと笑う人もいるかも知れませんが,もし外国人が中世までの日本を戦略マップに加えたゲームを作る場合,日本の都市は一体どういう扱いになるのか,興味深いところです。戦国時代以前には「Tokyo」も「osaka」もありませんでしたからね。

3 コメント

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ゲーム (ルル)
2010-12-21 14:21:05
テレビゲームは回復に役立つと言われています。
どんどんテレビゲームをやって、ブログの更新頻度をあげてくださいね。
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日本の地名も難しい (蘇鉄)
2010-12-23 23:43:22
学校より楽しい講義ありがとうございます。私の住む地名はほとんどの人が読めません。でも説明すると覚えてもらいやすいです。簡単すぎるより良いかもしれません。 次回の講義楽しみにしています。
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うつ病 (たかぽん)
2010-12-25 09:43:07
回復したと思って無理をして、再発するより
ある程度、ストレスに強くなってから、復帰
した方が気持ちよく仕事ができると思います。
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