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京都で最もぬくもりのある節分_2/3 千本釈迦堂 おかめ節分

2019年01月19日 | 祭・行事・季節の花

京都・北野天満宮の近くにある千本釈迦堂(せんぼんしゃかどう)は、洛中最古の建造物や数多くの美仏で知られていますが、京都を代表する庶民信仰の寺でもあります。正月が終わると次は節分とあわただしく日が過ぎてきます。千本釈迦堂の節分はそんな京都の日常の中で、背伸びすることなく行われているのが最大の魅力です。

  • おかめ福節分と呼ばれ、夫婦円満や縁結びを祈る女性に特に人気
  • 豆まきだけでなく、上七軒の舞妓の舞なども披露され、演目が充実
  • 鬼を追いかける様子は狂言で演じられ、とてもコミカル
  • 北野天満宮・千本ゑんま堂は徒歩圏内、京都の著名な節分祭をはしごできる


洛中最古の建造物・本堂が鎮座する境内は、歴史の重みの割にはかしこまっておらず、とても入りやすく親しみを感じます。とてもぬくもりのある節分祭です。


豆まきの前に狂言で鬼を追い払う

千本釈迦堂は、正式には大報恩寺(だいほうおんじ)と言います。正式名は、昨年2018年秋に東博で話題を呼んだ大報恩寺展で記憶した方も多いかもしれません。京都では覚えやすい通称が定着している寺が多く、庶民信仰がとても盛んだったことがうかがえます。

節分の一連の行事は、洛中最古の建造物である国宝の本堂で行われます。本堂は鎌倉時代初めの寺創建直後、1227(安貞元)年の上棟です。応仁の乱では寺付近は主戦場であり、それを生き抜いた本堂はまれにみる強運の持ち主なのです。本堂の本尊や東博の大報恩寺展で鑑賞者を魅了した快慶・肥後別当定慶らによる十大弟子と六観音も、創建時の制作ですが完存しています。

【寺公式サイトの画像】 十大弟子、六観音(寺宝・文化財)

日本では十大弟子や六観音が完存していること自体が極めて貴重です。しかも京都の文化財の多くがリセットされた応仁の乱を生き抜いています。寺の僧だけでなく、周囲の民衆の協力なくして守り続けることはできません。こうした状況からも千本釈迦堂が、昔から庶民にいかに愛されてきたかをうかがうことができます。



15:00が近づくにつれ続々と人が集まってきます。先に行われている北野天満宮からはしごしてきた人も少なくありません。

節分祭の前後で華やかな晴れ着を着せてもらったおかめの像に、夫婦円満や縁結びを祈る人がたくさんいます。おかめは、主に関東では「おかめ・ひょっとこ」の道化として知られていますが、京都では由来が異なります。

おかめは、鎌倉時代初め、千便釈迦堂の本堂建立大工の棟梁の妻の名前です。仕事のミスに頭を抱えた夫に名案を伝授して窮地を救いますが、それが明るみに出れば夫の恥と、上棟直前に自害してしまいます。夫の棟梁は上棟式にあたって妻の冥福と本堂の加護を願い、妻に似せた福の面を柱に飾りました。

本堂は実際に応仁の乱を生き抜いたことで、おかめ伝説は瞬く間に有名になりました。現在でも京都の建造物の上棟式では、大工たちはおかめの面を柱に飾ります。女性たちはおかめ塚を訪れることを絶やしません。千本釈迦堂の庶民信仰を象徴するのが、おかめ伝説なのです。



節分祭のフィナーレを飾る豆まきに至るまで、様々な奉納が行われるためとても華やかです。変化に富んでいるため見ていて飽きません。

近隣の花街・上七軒の舞妓による舞で節分祭は始まります。外気に触れる屋外の舞台で見る舞は、屋内以上に伝統が積み重ねた美しさ感じます。中世までは屋外の舞台で舞うのが通常でした。これから本堂が特別な空間になっていくことを見事に知らせているようです。

ただしこの舞は公式プログラムには記載されておらず、行事スタート時間15:00の10分ほど前から始まります。行事の詳細演目のスケジュールを詳細に公表しないことは、京都の行事では珍しくありません。世界レベルの観光都市としては、大いに疑問を感じる習慣です。



鬼を追い出す追儺式(ついなしき)は、千本釈迦堂では狂言の演目として行われます。これも実に京都らしい演出です。着ぐるみを着て大声で叫ぶのではなく、コミカルな動きで笑いを取るような鬼の動きは実にすばらしい日本の古典芸能です。これだけでも見る価値が充分にあります。

豆まきは近隣の名士や舞妓により行われます。豆をまく人の数に比べて、豆を受け取る参拝客の数の多さが目立たないため、手を伸ばしていると結構豆をキャッチすることができます。こじんまりした豆まきも実に乙なものです。



千本釈迦堂の節分祭は15:00スタートです。ただし舞妓の舞はその10分ほど前から始まります。以下のスケジュールで3か所の節分をはしごすることができます。

  1. 北野天満宮  13:00 狂言・舞妓の舞・豆まき(千本釈迦堂から西へ徒歩5分)
  2. 千本釈迦堂  15:00 狂言・舞妓の舞・豆まき
  3. 千本ゑんま堂 19:00 狂言・豆まき(千本釈迦堂から北へ徒歩5分) ※こんにゃく煮きは9:00~20:00


今年2019年の2/3は日曜日です。京都の節分三昧をたっぷりとお楽しみください。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



節分からハロウィンまで、日本の定番行事を易しく解説

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大報恩寺(千本釈迦堂)
節分会(おかめ福節分)
【寺による行事公式サイト】

会期:毎年節分の日、2019年は2月3日(日)
催行時間:15:00~16:00頃

※スタート時間は当日の法要・神事の進行や天候に左右される場合があります。
※この堂宇は観光目的で常時公開されています。
※節分祭当日、本堂は終日拝観できません。霊宝殿は午後から拝観できません。



◆おすすめ交通機関◆

地下鉄烏丸線「今出川」駅下車、3番出口から烏丸今出川バス停、京都市バスで「上七軒」下車、徒歩3分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:35分
京都駅→地下鉄烏丸線→今出川駅→烏丸今出川バス停Bのりば→市バス203系統→上七軒

【公式サイト】 アクセス案内

※京都駅から直行するバスもありますが、地下鉄とバスを乗り継ぐ方が、時間が早くて正確です。
※この施設には無料の駐車場があります。
※道路の狭さ、渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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