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奈良 唐招提寺の青空にハート形のうちわが乱舞_うちわまき 5/19

2019年05月04日 | 祭・行事・季節の花

奈良・唐招提寺の名物行事「うちわまき」がまもなく5月19日に行われます。魔除けにご利益がある、ハート形で神秘的なデザインの「うちわ」を求めて多くの人が詰めかけます。

  • 鎌倉時代の唐招提寺の中興の祖・覚盛(かくじょう)上人の命日に行われる伝統行事
  • 鼓楼の上から鐘の合図に合わせてうちわがまかれ、とても威勢がよい
  • 唐招提寺は奈良でも有数の新緑が美しい寺、池に咲く菖蒲もこの時期は見事


普段はとても静かな唐招提寺が、とても活気づきます。賑やかな唐招提寺も清々しいものです。


ハート形のうちわ

唐招提寺は、誰でも知っている鑑真大和上が開祖ですが、寺にとっては中興の祖・覚盛も鑑真と並んであがめています。覚盛が唐招提寺にのこした足跡は、今年2019年の冬に奈良国立博物館の展覧会でも紹介されていました。

覚盛は僧の生活規律である”戒律”復興に、西大寺の叡尊(えいそん)と共に生涯をささげました。覚盛の人物像を物語るエピソードが、うちわまきのルーツであるとされています。

覚盛が蚊に刺されるのを見て弟子が蚊をたたこうとすると、覚盛は「自分の血を捧げている」と弟子を戒めたと言います。覚盛がこの世を去った際に、その話を聞いた法華寺の尼僧がハート形のうちわを供え「せめてうちわで蚊を追い払おう」と祈りをささげました。

ハート形のうちわは、覚盛の人柄や功績を象徴するとともに”追い払う”というゆかりから、あらゆる魔除け・厄除けにご利益がある”縁起物”のような存在として人々に知られるようになります。うちわには梵字が描かれており、中国的な趣が漂う唐招提寺らしいデザインです。竹製の持ち手部分も長いため、うちわには全く見えないところに、どこか愛嬌も感じます。


青色の抽選券で私はうちわをゲットできました

うちわまきは以前、節分の豆まきのように一斉にまき、ゲットした人だけが持ち帰ることができるやり方でした。奪い合いになってケガをしたり、うちわが引きちぎられたりするため、現在はそうしたことが起こらないやり方になっています。

うちわまきに参加してまかれるうちわをゲットしたい人は、当日朝から先着400名に無料配布される「参加券」を入手する必要があります。2019年は日曜日ですので、2時間以上前から並ばないと入手できない可能性があります。うちわは400本まかれますので、参加者は一人一本を必ずゲットすることができます。逆に言うと、一人二本以上ゲットすると白い眼の集中攻撃に会います。

うちわまきに参加できない場合、抽選で1,000本が無料配布されます。朝から配布されている色で区別された「抽選券」を入手し、うちわまき開始直前の当選の色の発表を待ちます。

抽選でもゲットできなかった人には、最後の救いの道が用意されています。一本1,000円で有料販売されています。物理的に入手できないことがないよう、3通りのやり方が用意されています。


鼓楼からうちわがまかれる

15:00のうちわまきに先立って、13:00から講堂で覚盛上人の年忌法要・中興忌梵網会(ちゅうこうきぼんもうえ)が行われた後、講堂前広場で舞楽が奉納されます。舞楽の音色はいつ聞いても雅(みやび)です。

舞楽は14:00頃に終了します。うちわまきが始まるまでの1時間ほどは、輝くような唐招提寺の新緑が楽しめます。名物の戒壇の池の菖蒲も見頃です。会場の国宝の鼓楼の周囲にも、様々なデザインや著名人からの奉納うちわが展示されています。5月の陽気の下で見ると、心が和みます。

金堂の本尊・毘盧遮那仏にも必ずお会いしましょう。とても美しいお顔に心が洗われます。金堂の屋根瓦もいつ見てもとても美しく感じます。平成の修理の際に、本物の天平時代の鴟尾(しび)と入れ替えるために新調された黄金色の鴟尾も、青空に輝くように映えています。


鐘の合図でうちわがまかれる

15:00が近づき、まき役の僧侶が壇上に登って準備を始めると、見物客もかなり集まっており、賑やかになります。報道陣のカメラもセットされ、ますますムードは盛り上がってきます。

15:00の開始直前に抽選券の当選色が発表され、会場は歓喜とため息に包まれます。うちわがまかれる鼓楼の背後で撞かれる鐘を合図に、うちわがまかれます。うちわはハート型の部分が羽の役割をするため、まっすぐに飛んで落ちるものから、ひらひら舞うものまで、複雑な動きをするのが面白いと言えます。

豆まきのような掛け声はありませんが、まく合図となる鐘が、心地よく会場に響き渡ります。”ゴーン”と鐘が鳴って白いうちわが青空を舞う様子は、5月にピッタリの風情です。


瑞々しい菖蒲、美しい

唐招提寺では重要な行事が続きます。6月5~7日の鑑真大和上の年忌法要である開山忌(かいざんき)です。この3日間は、国宝の鑑真和上像が開扉される年に一度の機会です。御影堂は修復工事中のため、2022年までは新宝蔵が会場になります。

5月と6月は、唐招提寺が最も華やぐ季節です。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



著者に仏教の魅力を語らせると池上彰のように上手

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<奈良県奈良市>
唐招提寺
中興忌梵網会、うちわまき
【寺による行事解説サイト】
【奈良県観光公式サイト】 中興忌梵網会(うちわまき)

会期:毎年5月19日(日付で固定)2019年は日曜日
  中興忌梵網会 13:00~14:00頃 講堂
  うちわまき  15:00~15:10頃 鼓楼

※うちわまきの参加/見物共に拝観料が必要です。
※うちわまきに参加するには、当日9:00から配布される先着400名分の無料参加券を受け取る必要があります。
 20~60歳で、酒気帯びしていない人だけが参加できます。
※うちわ抽選券は9:00~14:30に希望者全員に無料配布されます。当選本数は1,000本です。

※雨天中止の場合があります。
※スタート時間は当日の法要・神事の進行や天候に左右される場合があります。
※この寺は観光目的で常時公開されています。



近鉄橿原線「西ノ京」駅下車、東口から徒歩5分

R大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:1時間15分
JR大阪駅→JR環状線→鶴橋駅→近鉄奈良線→大和西大寺駅→近鉄橿原線→西ノ京駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には有料の駐車場があります。
※道路の狭さ、渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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