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龍泉菴 妙心寺を象徴する堂々とした空間_京の冬の旅 特別公開 3/18まで

2019年01月20日 | お寺・神社・特別公開

京都・妙心寺の塔頭の中でも最大規模の方丈を持つ龍泉菴(りょうせんあん)で、京の冬の旅5年ぶりの特別公開が行われています。

  • 四派(しは)と呼ばれる妙心寺塔頭の4系統の中で最古の龍泉派の本庵
  • 方丈の100面にも及ぶ日本画家・由里本出(ゆりもといずる)による襖絵は圧巻
  • 大きな方丈にふさわしい雄大な庭園にも、本庵としての風格が現れている
  • 長谷川等伯や松村景文らの絵も素晴らしい


妙心寺本坊並の大きさと風格を感じさせる塔頭です。普段は非公開です。貴重な機会になります。


方丈

臨済宗妙心寺派は、臨済宗全体で約7,000ある寺院の約半数を占める巨大宗派です。京都では、臨済宗寺院の特徴を「~面(づら)」と呼びます。妙心寺は算盤面(そろばんづら)と呼ばれ、組織の結束力が特徴としてあげられています。

妙心寺派の寺院は四派のいずれかに必ず属しており、四派の各本庵は現在も巨大組織を束ねる機能を担っています。塔頭は、中心伽藍に近いところにあるほど格式が高くなるのが一般的です。妙心寺四派の本庵、龍泉菴・東海庵・聖沢院・霊雲院はすべて中心伽藍に隣接しています。

妙心寺の四派は、応仁の乱後に伽藍を再興した雪江宗深(せっこうそうしん)が、4人の弟子に交代で住職を務めるよう定めたものです。龍泉菴は四派の中でも最も早く、1481(文明13)年に創建されました。開祖は景川宗隆(けいせんそうりゅう)、開基は時の権力者・細川政元(ほそかわまさもと)です。


庫裏

拝観受付のある庫裏も、その大きさに驚かされます。龍泉菴を訪れる人の多さがうかがえます。方丈との間に設けられた坪庭は、禅寺らしくとてもシンプルです。この後すぐに方丈南の大きな庭園が目に入ってくるだけに、はかないようにさえ見える坪庭のシンプルさがかえって印象にのこります。


庫裏と方丈の間の坪庭

【京都国立博物館公式サイトの画像】 枯木猿猴図

方丈では、長谷川等伯の代表作の一つ、枯木猿猴図(こぼくえんこうず)が展示されています。重要文化財の原本は京博に寄託されており、展示は複製品です。手長猿の顔は鼻以外ほとんど描かれていません。手長猿がのぼる木の枝の描写は、等伯の水墨表現の円熟味を感じさせる見事な出来栄えです。全体としてとても幽玄に仕上がっています。

加賀藩主・前田利長の旧蔵品で、描かれた手長猿が夜な夜な手を伸ばして、利長の眠りを妨げたという逸話があります。等伯が猿を完璧に幽玄に描いたからこそ、生まれた逸話のような気がします。

方丈では、堂本印象の弟子・由里本出による多様な襖絵を楽しむことができます。日本各地の自然風景を描いていますが、部屋によって色彩の使い方が全く異なる点に見応えがあります。ダイナミックな表現は、大きな方丈空間とも実によく調和しています。


方丈南庭

方丈南庭は、苔と白砂のエリアを方程式のような曲線で区分しただけのシンプルな庭です。苔の部分に植えられた背の高い木が、大きな庭の空間を引き締める役割を果たしています。

書院では松村景文の「松に禽の図」が目を引きます。落ち着いた描写で、龍泉菴の趣によくあっています。狩野探幽や谷文晁の作品も展示されています。


山門から見える方丈と庫裏

室内や庭の空間、所蔵絵画、いずれも奇をてらわず堂々と落ち着いている印象を受けます。巨大組織・妙心寺を象徴するような空間を体験できます。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



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第53回 京の冬の旅
非公開文化財特別公開 ~秘められた京の美をたずねて~
妙心寺 龍泉菴
【主催者による特別公開公式サイト】

主催:京都市観光協会
会場:妙心寺 龍泉菴
会期:2019年1月10日(木)~3月18日(月)
原則休館日:2/28-3/1
入館(拝観)受付時間:10:00~16:00
※1/27 11:00~12:00は法要により拝観休止

※一部展示作品/場面が入れ替えされる場合があります。
※この特別公開は定期的に行われるものではありません。
※この寺・堂宇は観光目的では常時公開されていません。次の公開時期は未定です。

妙心寺 龍泉菴
【妙心寺公式サイト】 https://www.myoshinji.or.jp/worship/keidai/320



◆おすすめ交通機関◆

JR嵯峨野線「花園」駅下車、北口から徒歩7分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:25分
京都駅→JR嵯峨野線→花園駅

【妙心寺公式サイト】 アクセス案内

※この施設には有料の駐車場があります。
※道路の狭さ、渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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