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興福寺 国宝館 リニューアル・オープン ~奈良の不可欠スポットがグレード・アップ

2018年01月02日 | お寺・神社・特別公開



非日常空間に入ることを感じさせる新しい入口 阿修羅など世界に誇る美仏を展示する奈良・興福寺の国宝館が、耐震改修工事を終え2018年1月1日にリニューアル・オープンしました。1年間の休館中は、美仏にお会いできない期間もあっただけに「お待ちしておりました」という気分です。

外観はシックになり、館内はよりゆったり鑑賞できるようレイアウトされています。順路に沿って進んでいきましょう。

リニューアル前までは、向かって右側が入口、左側が出口で、順路は反時計回りになっていましたが、すべてが逆になっています。館内は白壁が美しく、より荘厳な空間になった印象を受けます。

順路は、今年2018年10月に約300年ぶりに再建が完成する「中金堂」ゆかりの国宝から始まります。初代の中金堂が奈良時代の710(和銅3)年に創建された際に、地下に地鎮(地の神に建設の許しを得る儀式)のために埋納された宝物です。

水晶や瑠璃・金銀を贅沢に使った容器や装身具に、天平的なエキゾチックな装飾が施され、まるで正倉院展を見ているようです。再建「中金堂」にも1300年前と同ように捧げたい、という寺の思いを感じさせる展示です。

次は鎌倉復興期の仏像のコーナーです。ここはリニューアル前と展示構成は変わりませんが、作品の間のスペースに以前よりゆとりを感じます。館内全般で通路や鑑賞者が立ち止まるスペースも広くなっており、より落ち着いた鑑賞空間づくりに配慮した寺の姿勢がうかがえます。

日本で最も筋肉美の表現が見事な「金剛力士像」や、お茶目さがファンの心をとらえて離さない「天燈鬼・龍燈鬼」の両国宝にもじっくりとお会いできるようになりました。

続いて展示室の背後の回廊を通って反対側の展示空間に移動します。この回廊はリニューアル・オープン当初は興福寺を紹介するパネル展示がされています。都度、柔軟に展示構成を変えていくと思われます。

反対側の展示空間(建物の右側半分)の最初は「板彫十二神将」」です。東金堂の本尊・薬師如来の台座周囲に貼りつけられていたと考えられる状態を再現しており、各将のバラエティーに富んだ表情を間近で見ることができます。木の芯を頬の中心にあわせて彫刻することで、芯の同心円そのものを顔の表現に活かしています。素材利用の計算の巧みさと表現の美しさは、まさに国宝にふさわしい「美」です。

その横、鎌倉復興期の仏像コーナーに相対するコーナーは、以前通り「仏頭」と「釈迦如来坐像」ですが、この2体しか安置されていません。こちらもゆとりに配慮したと感じさせる空間であり、展示構成の変更にも対応しやすいのでしょう。

順路の最後は「阿修羅」をセンターにした「八部衆」と「十大弟子」です。八部衆のうち上半身しか現存しない「五部浄」がお立ち台から降り、ガラスケースにお入りになっています。

壁が白くなったこともあり、「八部衆」の美少年や動物のお顔立ちや、「十大弟子」の性格や生き様までがわかるような幻想的な表現が、さらに美しく見えるようになっています。1300年、幾度の火事から大切に守られてきた興福寺の至宝であり、世界の至宝です。

センターの阿修羅にお会いした後は、その場で必ず背後を振り返ってください。以前と同じく、国宝館の主とも言える「千手観音立像」が観る者に微笑みかけています。手を合わせ、美仏にお会いできたお礼とともに、様々なお願い事をお祈りしましょう。千手観音は何でもかなえてくれる 仏様です。


お正月の南円堂は、初詣客で長い列

こんなところがあったのか。
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさんあります。


 
世界遺産の紹介文から歴史文化用語の英訳が学べる

興福寺
http://www.kohfukuji.com/

原則休館日:なし
※展示作品は、展示期間が限られているものがあります。


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