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京都 大覚寺 王朝文化を伝える美仏と書_「天皇と大覚寺」展 5/13まで

2019年05月01日 | お寺・神社・特別公開

京都の西北の”端っこ”にある王朝美の殿堂・大覚寺(だいかくじ)で「天皇と大覚寺」展が行われています。大覚寺とのゆかりが深い天皇や上皇の肖像や手紙に加えて、大覚寺に伝わる密教美仏の数々が一堂に公開されます。

  • 鎌倉時代に大覚寺を再興した後宇多(ごうだ)法皇自筆の国宝の手紙は、筆の動きがとても滑らか
  • ゆかりのある多くの天皇の肖像画は、大覚寺が伝える王朝文化の質の高さを物語る
  • 明円(みょうえん)作の重文・五大明王は、優美なお顔立ちが素晴らしい密教彫刻の美仏


皇室とのゆかりの深さでは、大覚寺は京都でも有数の寺です。新天皇と新元号を祝うにふさわしい展覧会です。


菊の御紋が新緑に映える

大覚寺の地には平安時代初め、空海を重用して政治と文化の両面で絶大なリーダーシップを誇った嵯峨天皇が離宮を営んでいました。寺の東側にある中秋の名月で名高い大沢池は、離宮造営の際に人工的に造られた日本最古の庭園の林泉(りんせん、森と池)です。

876(貞観18)年に嵯峨天皇の皇女が離宮を寺に改め、大覚寺として再出発します。その後一時衰退していましたが、鎌倉時代後期の後宇多法皇が再興し、嵯峨御所と呼ばれて院政を指揮していました。

世継ぎになる可能性のない天皇の子息である親王が代々入寺し、京都でも有数の門跡(もんぜき)寺院となっていきます。歴代天皇が使用した建物も多く移築されており、大覚寺にしかない優美な空間を形成しています。



宸殿(しんでん)は、後水尾天皇の皇后で2代将軍・徳川秀忠の娘・東福門院和子(とうふくもんいんまさこ)が使用していた御殿を下賜されたものです。御影堂(みえどう)は、京都御所で行われた大正天皇の即位の礼で使われた建物を下賜されたものです。

京都御所や桂離宮は建物内部に入って鑑賞することはできないため、王朝文化の室内空間の趣をリアルに味わえるのは大覚寺と仁和寺だけです。京都御所にいる錯覚を起こすような見事な宸殿造の建物です。


五大堂

展覧会は霊宝館で行われています。宸殿の狩野山楽の金碧障壁画の原本や明円作の五大明王といった大覚寺ならではの文化財が、春秋の公開期間中は常時展示されています。並行して企画展示も行われており、今年の春は「天皇と大覚寺」です。後宇多法皇ほか、大覚寺ゆかりの天皇の自筆の手紙である宸翰(しんかん)や肖像画の名品が並びます。

大覚寺所蔵の2件の国宝がともに展示されており、いずれも後宇多法皇の宸翰です。「御手印遺告(ごていんゆいごう)」は、大覚寺と真言密教の隆盛が長く続くよう、法皇が願いを書き残したものです。法皇の赤い手形が押された宸翰は、力強い文字が流れるように綴られており、大覚寺に対する熱い思いが伝わってきます。

「弘法大師伝」は法皇が自ら編集執筆した弘法大師の伝記です。経典のように理路整然と文字が綴られており、とても荘厳な印象を受けます。法皇の真言密教に対する帰依の深さを感じさせます。

重文の後宇多法皇の肖像画からは、法皇の実直そうな人柄が伝わってきます。出家後に描かれたものと考えられており、法皇の実像をよく表しているでしょう。

後水尾天皇時代に製作された「日本帝王系図屏風」は、神武天皇以来の系図だけを描いた、とても珍しい屏風です。気位の高かった後水尾天皇は、さぞかしご満悦だっただろうと想像してしまいました。文字しか描かれていないためか、ものすごい迫力があります。



明円は、仏師集団・円派(えんぱ)の隆盛の最後を飾った鎌倉時代初めの仏師です。円派は、平安時代後期に京都で六勝寺の仏像造立を主に担当するなど、院政期の法皇に寵愛されていました。いわば王朝文化好みの優美さを作風としますが、鎌倉時代には衰退します。

重文・五大明王は、現存唯一の明円作品です。平安時代の一般的な五大明王に比べ、像高が低いこともあって、とても優美で洗練された印象を受けます。写実的であり、今にも動き出しそうな生命感があります。

大覚寺にもう一組ある五大明王も展示されています。こちらは一般的な等身大に近い一般的な大きさです。制作時期が室町時代と江戸時代に分かれ、室町時代作の三体が重文です。明円作と比べ明王らしい迫力がより強調されています。個性の違う五大明王に並んでお会いできます。どちらが美しいか、じっくりと見比べていると時間の経つのを忘れてしまします。


庭の消火スプリンクラー

真言密教と歴代門跡の名品が味わえる展覧会です。大覚寺のもたらす”品格”のようなものを感じることができます。庭のスプリンクラーの囲いにも、そんな大徳寺の”品格”が現れています。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



古刹のバイブル、新版古寺巡礼

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<京都市右京区>
大覚寺
奉祝 皇位継承記念 平成31年春季名宝展
「天皇と大覚寺」
【寺による展覧会公式サイト】

会場:霊宝館
会期:2019年3月15日(金)~5月13日(月)
原則休館日:会期中なし
入館(拝観)受付時間:9:00~16:30

※会期中に展示作品の入れ替えは原則ありません。
※この展覧会は、今後他会場への巡回はありません。

※この寺は観光目的で常時公開されています。
※霊宝館は、毎年3月中旬~5月中旬と10月初旬~12月初旬の2回の企画展開催時のみ公開されます。



◆おすすめ交通機関◆

JR嵯峨野線「嵯峨嵐山」駅下車、北口から徒歩15分
嵐電「嵐山」駅下車、徒歩25分
阪急嵐山線「嵐山」駅下車、徒歩35分

JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:40分
京都駅→JR嵯峨野線→嵯峨嵐山駅

【公式サイト】 アクセス案内


※この施設には有料の駐車場があります。
※道路の狭さ、渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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