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江戸時代の三井の本拠地は京都だった_三井越後屋京本店記念庭園

2018年12月22日 | 城・屋敷・歴史遺産

京都の現代のメインストリート・烏丸通のすぐ西側の室町通りは、江戸時代以来の繊維問屋街です。その一角に、江戸時代に日本最大級の豪商だった三井家の本店の跡地が、ひっそりと佇んでいます。

  • 三井家の本拠は明治になるまでは京都であり、江戸・日本橋は出先に過ぎなかった
  • 三井家の商売の原点をしのべる場所として、三井不動産によって現在も大切に守られている


江戸時代に高級呉服の生産で繁栄していた京都の輝かしい時代をしのべる場所でもあります。歴史の重みを感じさせる一角です。


室町通に建つ門

三井家興隆の礎を築いた四代・高利(たかとし)は、1673(延宝元)年に京都に呉服の仕入れ店を開業し、三井家の本拠を定めました。この仕入れ店は記念庭園のある室町二条ではなく、少し南の室町蛸薬師にありました。

高利は当時の商人たちが理想とした江戸店持京商人(えどだなもちきょうあきんど)を軌道にのせます。京都を本拠にして出先の江戸で商売するやり方です。江戸時代の高級呉服の生産地は京都の西陣であり、京都で仕入れた呉服を大消費地である江戸や大阪で売りさばき、成功したのです。

高利は死に際して、子たちが力を合わせて商いを行うよう遺言します。高利の長男が相続した北家(ほっけ)を惣領家とし、他の10家とあわせた三井十一家で共同経営を行いました。この共同経営のシステムは、戦後に財閥解体されるまで続いていました。

現在の記念庭園は、室町蛸薬師の本店が手狭になったため、1704(宝永元)年に室町二条に移転した敷地の一部です。明治になって三井家が本拠を東京に移して以降も、三越京都支店として1983(昭和58)年まで営業を続けていました。閉店後敷地は売却されますが、1/10以下のわずかな土地だけを残し、三井不動産が三井家の商売の原点の地として守り続けていくことになったのです。



記念庭園は公開されていませんが、門の横の欄間からわずかに内部をうかがうことができます。シンプルな庭園と朱い鳥居が見えます。鳥居は三国稲荷大明神で、江戸時代に本店があった頃から祀られています。白壁で囲まれた記念庭園の敷地は、オフィスの多い周囲の町並の中では異彩を放っています。ここが特別な空間であることをうかがわせます。

室町通は現在も呉服を扱う会社が多く立ち並んでいます。祇園祭で豪勢な飾りつけを競った富裕な町衆の多くは呉服で財を成しており、室町通は京都でも有数のお金持ちが住むエリアでした。祇園祭の山鉾を出す町が現在も室町通周辺に集中しているのは、この江戸時代の名残です。記念庭園の一角は、そんな華やかな時代を今に伝える生き証人です。


記念庭園の門に刻まれた家紋

三井北家にとって京都にはあと二つ思い出の地があります。一つは、二条城の向かい、現在のANAクラウンプラザホテル京都と京都国際ホテル跡地にあった屋敷です。明治以降の京都における邸宅として使用していましたが、1958(昭和33)年にこの敷地を手放していました。

2014年に営業を終了した京都国際ホテルの跡地は、現在三井不動産が取得しており、高級ホテルの建設が進められています。半世紀の時間を経て、三井グループの中核企業が思い出の地を買い戻した形になります。特別な地に建設されるホテルがどのような姿になるか、今から楽しみです。

もう一つは2016年から一般公開されている旧三井家下鴨別邸です。現存する三井北家が使用していた建物はほとんどないため、三井北家の財力と趣味がうかがえる貴重な建物です。明治から大正にかけての趣を色濃く残し、重要文化財に指定されています。こちらは常時公開されています。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



三井家は知っていても三井高利は知らない

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三井越後屋 京本店 記念庭園
【三井広報委員会 公式サイト】 三井越後屋 京本店 記念庭園

※庭園は常時公開されておらず、敷地内に立ち入ることはできません。次の公開時期は未定です。
※外観はいつでも無料で見学できます。



◆おすすめ交通機関◆

地下鉄烏丸線「丸太町」駅下車、6番出口から徒歩3分

JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:15分
京都駅→地下鉄烏丸線→丸太町駅

※この施設には駐車場はありません。
※道路の狭さ、渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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