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今しか見れない仁和寺の魅力_観音堂&御殿 特別公開 7/15まで

2019年05月19日 | お寺・神社・特別公開

6年の修理を終えた京都・御室・仁和寺(にんなじ)の観音堂の落慶法要が行われ、33体もの仏像が居並ぶ圧巻の空間が公開されています。あわせて王朝文化を色濃く伝える御殿でも、庭の特別公開が行われています。

  • 勢揃いした二十八部衆は色彩がのこりとてもリアル、荘厳な密教ワールドは格別
  • 普段は入れない御殿の庭の中から、普段は見られない御殿の表情をうかがうことができる
  • 6年続いた観音堂を囲む足場がなくなり、御室の青い空がとても大きく見えるようになった


仁和寺も近年は様々な行事を通じた寺の文化遺産の活用に積極的です。京都の楽しみ方がまた一つ増えました。



平安時代前半に宇多(うだ)天皇によって創建された仁和寺は、日本最古の門跡寺院です。今回庭が特別公開されている「御殿」は門跡となった皇族が居住したエリアで、宇多天皇の御殿「御室」の名残でもあります。

応仁の乱で全焼しているため、現在の伽藍はほぼ江戸時代初めの再建です。今回特別公開される観音堂は、建物や仏像を含めすべてがこの際に新造されたものです。金堂は御所・紫宸殿を、御殿は御所・常御殿をこの際に移転したものです。金堂は現存しており国宝ですが、御殿は明治の大火で焼失し、大正時代初めに再建されたものです。


観音堂

観音堂は仁和寺の重要な宗教儀式に使われており、修理前も常時/定期公開されていませんでした。修理落慶法要がなった今回の特別公開も、春秋の約2か月間ずつに限定されています。

観音堂は金堂よりも一回り小さめのサイズです。その中に本尊・千手観音に従う二十八部衆が居並ぶ姿は、密教ワールドが凝縮されたようでとても”濃い”印象を受けます。昨年2018年冬の東京国立博物館「仁和寺と御室派のみほとけ」でも話題を呼びました。

二十八部衆には京都・清水寺・内々陣や和歌山・粉河寺・本堂でもお会いできますが、仁和寺・観音堂は制作が新しく、色彩がのこされていることからとてもリアルな印象を受けます。

仏像群の背後の観音障壁画も保存状態が良く、色彩がきちんとのこっています。製作された江戸時代初期から400年という時間の経過が、新しすぎず古すぎない絶妙のバランスを示しています。仏教美術はとかく古さばかりが語られがちですが、やはり保存状態が良くないとなかなか”美しい”とは感じられません。


御殿 北庭

御殿は常時公開されており、「庭の特別公開」と聞くと「何それ?」と思ってしまいますが、修理工事に伴う特別なイベントです。宸殿の屋根の葺き替え工事により足場が組まれて建物の外観が鑑賞できないため、普段とは異なる角度から御殿を見てもらおうとするものです。近年人気の「今しか見られない修理現場公開」と同じ原理です。なお宸殿の室内は通常通り拝観できます。

白砂が大きく広がる南庭では、ほぼ中央まで歩道が設置されています。普段は見られない白書院の外観を味わうことができます。北庭では池に張り出すように歩道が設置されています。北庭の借景となる五重塔がより身近に見えます。


中門から仁王門をのぞむ

仁和寺は金堂や観音堂といった主要堂宇を常時/定期公開しない寺ですが、近年は公開頻度が上がっています。御所の趣を色濃く残す国宝の金堂も、「春/秋の非公開文化財特別公開」や「京の夏/冬の旅」で毎年のように公開されるようになってきました。昨年2018年秋にも、移築以来初めて金堂裏堂の五大明王壁画を公開しています。

仁和寺に限らず、特別公開や展覧会への出展頻度を増やすのは、近年の京都/奈良の寺社全般に共通する傾向です。拝観/イベント収入を修理/再建費用にあてがう経済原理にのっとった取り組みが浸透しつつあります。日本は文化財保護予算が非常に少ないという側面もありますが、寺や神社であっても継続するには経済原理を無視できないことは言うまでもありません。

観る側の者も、積極的に参加することで、自身の心の豊かさの醸成+かけがえのない文化遺産の持続への貢献というwin&winを成立させることができます。「もっと公開して」と多くの方に声を上げていただくことを願ってやみません。


オムロン発祥の石碑

仁和寺からは徒歩15分ほどかかりますが、京都駅に出るのに便利なJR嵯峨野線の花園駅を目指して歩いていると、かなり大きめの石碑が目につきました。御室にちなんだネーミングで知られる電子機器ブランド「オムロン」の発祥の地を示す石碑です。

企業としてのオムロンは大阪で創業していますが、戦後すぐに御室に移転し「オムロン」ブランドを製品に名付けます。周辺は普通の住宅地になっていますが、石碑からはどこか御室が悠久の歴史を積み重ねたエリアであることを感じさせます。

江戸時代前期随一の作陶家・野々村仁清と尾形乾山が窯を開いたのも「御室」です。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。


仁和寺の密教ワールドを”音”で体験

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<京都市右京区>
仁和寺
観音堂 修復落慶記念 特別内拝 春季
【仁和寺公式サイト】 観音堂春季特別内拝

会場:観音堂
会期:2019年5月15日(水)〜7月15日(月)
原則休館日:期間中なし
入館(拝観)受付時間:9:30~16:00

※常時公開されている御殿の拝観受付時間は9:00~16:30です。
※御殿・庭の特別拝観は2019年12月31日までです。
※霊宝館は毎年春(4~5月)と秋(10~11月)に公開されます。

※この寺の境内は常時公開されています。
※公開期間が限られている仏像や建物・美術品があります。




◆おすすめ交通機関◆

JR嵯峨野線「円町」駅下車、「西ノ京円町」バス停で市バス乗り換え「御室仁和寺」下車、徒歩1分
JR嵯峨野線「花園」駅下車、徒歩15分
京福電車北野線「御室仁和寺」駅下車、徒歩3分

JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:30分
京都駅→JR嵯峨野線→円町駅/西ノ京円町バス停→市バス26系統→御室仁和寺

【公式サイト】 アクセス案内

※京都駅から直行するバスもありますが、鉄道とバスを乗り継ぐ方が、時間が早くて正確です。
※この施設には有料の駐車場があります。
※春秋の観光シーズンは、渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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