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細見美術館「20周年記念展・はじまりは伊藤若冲」 ~細見家が最も愛した絵師の神髄が揃う

2018年01月03日 | 美術館・展覧会



近代美術館前の最寄りバス停から歩くと見えてきます 京都・岡崎の細見美術館で、館の持つ素晴らしい江戸絵画コレクションをお披露目する開館20周年記念展覧会の第一弾「はじまりは、伊藤若冲」がスタートしました。「よくぞ集めた」と見る者に感じさせるオーラを持つ細見美術館の若冲や琳派のコレクションの中からまず、館の持つすべての「若冲」作品が登場します。

細見美術館の若冲コレクションは、おなじみの鶏以外にも犬や野菜など様々なモチーフの作品が揃っています。また若冲の創作活動の初期から晩年までを俯瞰することもできます。若冲の表現の多様性をあらためて楽しむには、まさにうってつけの展覧会なのです。

細見美術館のコレクションは、昭和初期に大阪府泉大津市で毛織物業により財を成した細見良による仏教美術の蒐集から始まりました。今や細見美術館の看板コレクションとなった江戸絵画は、おもに二代目の細見實が蒐集を始めたもので、若冲との出会いが蒐集のきっかけとなったと言います。

蒐集は三代目の現館長・細見良行に受け継がれ、1998(平成10)年に美術館が開館しました。 良行館長によると、祖父・良はおもに中世、父・實はおもに近世と方針が異なったことから、「親子戦争」と呼べるほど蒐集をめぐって対立していました。

しかし若冲だけは唯一、二人の興味が一致していました。二人の蒐集方針の差は、結果的に館のコレクションの幅の広さにつながっています。伊藤若冲は館にとってまさに、幅の広いコレクションの中心におくべき大切な絵師なのです。

「糸瓜群虫図」はヘチマをモチーフにした若冲の初期の作品で、よく見ないと気づかないほどの大きさで11匹の虫が描かれています。可能な限り単眼鏡を持参してこの絵を見ることをおすすめします。

虫の描写は驚くほど丁寧で生命感があり、今にも絵の中から飛び出してくるようです。「もっと虫を大きく描けばよくわかるのに」と思ってしまいますが、若冲はあえてそうしなかったと私は思います。観る者にサプライズを感じさせる、やはりこれが若冲の大きな魅力ではないでしょうか。

展覧会チラシを飾る「雪中雄鶏図」は、「糸瓜群虫図」と並んで本格的に絵筆を取って間もない頃の作品です。若冲の代表作である「動植綵絵」を彷彿とさせる精密描写が早くもできていたのです。

【展覧会チラシPDFの画像】 雪中雄鶏図、糸瓜群虫図

平安時代の鳥獣戯画と見間違うようなパロディーが面白い「鼠婚礼図」や、モノクロながらモノクロと感じさせない暖かみのある表現で描いた「群鶏図」は、若冲の晩年の作品です。いずれも背景空間を大きくとった中に水墨画で描いており、主役のモチーフをモノクロの世界の中で引き立たせる円熟の技量を感じさせます。

展覧会は、江戸時代に京都で活躍した他の絵師たちの作品が若冲作品の脇を固めています。若冲の弟子と考えられる「若演」、「俵屋宗達」「尾形光琳」「池大雅」「冷泉為恭」といった江戸期の京都画壇の大物、知名度は高くないものの江戸後期に優れた大和絵を残した「浮田一蕙」たちです。絵師の名前だけを見てもまさに豪華ラインナップです。

鑑賞後にはアートキューブと名付けられたミュージアム・ショップもぜひ。この館のセンスを感じさせる逸品のミュージアム・グッズと出会えます。

ショップの横にはイタリア的設えのカフェもあります。このカフェの雰囲気は、館の持つ日本美術のトーンと絶妙に調和しています。美術館にあるカフェの中でとても異色で、他では味わえない空間です。

【公式サイト】 ARTCUBE SHOP

こんなところがあったのか。
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさんあります。



細見コレクションが誇る江戸絵画図録、主に若冲・風俗画・やまと絵を収録

細見美術館「開館20周年記念展 I  細見コレクションの江戸絵画 はじまりは、伊藤若冲」
http://www.emuseum.or.jp/exhibition/ex057/index.html
主催:細見美術館、京都新聞
会期:2018年1月3日(水)~2月25日(日)
原則休館日:月曜日
※この展覧会は、他会場への巡回はありません。



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