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京都 東福寺 The king of 紅葉 ~京都の多様性が集約

2018年11月14日 | 祭・行事・季節の花

京都に紅葉の名所は幾多もありますが、その質と量で東福寺をNo.1にあげる人が最も多いでしょう。東福寺の境内は東山からの清流が形成する渓谷を巧みに取り入れています。その渓谷・洗玉澗(せんぎょくかん)を紅葉が埋め尽くす光景はまさに圧巻です。

真赤な渓谷を、3つの橋で渡りながら楽しめるのも東福寺の紅葉の大きな魅力です。渓谷沿いに立体的に見える紅葉の光景は京都市内とは思えません。日光や箕面のような山でしか見られないような光景が東福寺にはあります。有名な通天橋(つうてんきょう)は、そんな立体的な紅葉が楽しめるベスト・スポットです。


臥雲橋から見た通天橋

京都の禅寺をその特徴を冠して「~面(づら)」と呼ぶ習慣が古くからあります。東福寺は伽藍面(がらんづら)と呼ばれています。境内が大きい、というのが特徴です。明治の廃仏毀釈で塔頭は半分以下に縮小されましたが、それでも25か寺が今に伝わる大寺院です。

そうした伽藍の大きさを象徴していたのが、明治まであった大仏でした。東福寺は、鎌倉時代初期の摂政関白で朝廷を牛耳っていた九条道家(くじょうみちいえ)によって創建されました。南都の二大寺院である東大寺と興福寺から一字ずつとって寺名とし、1236(嘉禎2)年から19年をかけて、東大寺とほぼ同じ高さ15mの大仏と伽藍を造営しました。

京都の大仏が、秀吉が造営した方広寺とともに東福寺にもあったことは案外知られていません。東福寺には、1881(明治14)年の火災で焼け残った2mの大仏の「手」だけがのこされました。文化財はのこされていれば記憶が受け継がれますが、なくなると忘れられます。その絶対的事実にはあらがえません。

九条道家は、鎌倉幕府3代将軍・源実朝が暗殺され、頼朝直系が途絶えた際に、頼朝の血縁があった子息を4代将軍に送り込んだ実力者です。鎌倉幕府の実権は執権の北条家が握っていましたが、将軍を出した家として九条家は京都で絶大な権勢をふるうようになります。

鎌倉幕府としても、京都を掌握するために新しい宗派である禅宗を利用したい思惑もあったと考えられます。そんな時代背景の下で創建されたことが、東福寺の巨大伽藍の原点でしょう。


洗玉澗の下から上を眺める

洗玉澗は3つの橋の上から見るだけでなく、渓谷におりて散策することができます。東福寺の紅葉は見る角度を変えて楽しめることが最大の魅力です。ぜひ渓谷沿いから上を眺めるよう散策することをおすすめします。頭を360度かつ上下に動かしながら愛でる紅葉はここでしか味わえません。


通天橋の人込み

通天橋はその絶景がゆえに混雑は避けられません。週末などピーク時には入場制限がかかることもあります。朝の通勤電車並みの混雑で、写真撮影もままなりません。ピーク時に橋の上では撮影禁止になります。人出の多い「ピーク時」「週末」「午前中」を避けて訪れることが肝要です。

通天橋は木造に見えるのでそんなに人が通って大丈夫なのかと不安になりますが、大丈夫です。史上最悪の被害を出した1959(昭和34)年の伊勢湾台風で倒壊した後、鉄筋コンクリート製で再建されています。


通天橋の北にある普門院

東福寺は京都の寺の中でも渓谷美を楽しめることが最大の魅力です。通天橋もそもそも渓谷を渡るのに不便なため、かけられたものです。通天橋を北に渡ると、九条道家が開山に迎えた聖一国師・円爾(しょういちこくし・えんに)を祀る開山堂と普門院の庭園が、禅寺らしいエキゾチックな趣を見せてくれます。

東福寺のこれら紅葉の名所は通年公開されています。紅葉の名所は春から初夏にかけて新緑がまばゆい「青もみじ」としても楽しむことができます。冬の雪化粧も絶景です。紅葉期以外の四季ぞれぞれにも、東福寺は豊かな大自然の多様性を見せてくれます。紅葉期以外は通天橋が混雑することはなく、絶景をほぼ独り占めできます。京都の四季が見せる光景の多様性は実に奥深いのです。



通天橋の東・上流側にある偃月橋(えんげつきょう)を渡った先の塔頭・龍吟庵(りゅうぎんあん)では、紅葉期と春に現存最古の国宝の方丈が公開されます。次回は龍吟庵をレポートします。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



水野克比古が見た京都の紅葉

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東福寺
看楓特別拝観
【寺による特別公開案内サイト】

会期:2018年 11月1日(木)~12月2日(日)
原則休館日:なし
入館(拝観)受付時間:8:30~16:00(通常より30分早くスタート)

※この特別公開は毎年秋(11月頃)に行われ、通天橋・開山堂・方丈と龍吟庵が公開されます。
※龍吟庵以外の通天橋・開山堂・方丈は、看楓特別拝観期間中以外も常時公開されています。



◆おすすめ交通機関◆

JR奈良線・京阪電車「東福寺」駅下車、徒歩10分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:20分
京都駅→JR奈良線→東福寺駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には無料の駐車場がありますが、紅葉期間中は閉鎖されます。
※道路の狭さ、渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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