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京都 仁和寺 最上級の祈りの空間 ~金堂裏堂 五大明王壁画 史上初公開

2018年11月13日 | お寺・神社・特別公開

京都・御室(おむろ)の仁和寺(にんなじ)で、国宝の金堂の本尊の裏に描かれた五大明王壁画が史上初めて公開されています。江戸時代に京都御所の紫宸殿を移築した金堂は、王朝文化の情緒が色濃く残されています。その金堂は不定期にしか公開されていないため、内陣を参拝できる良い機会にもなります。

内陣正面の仏画や裏堂の五大明王壁画は非公開で光があてられなかったことから保存状態が良く、美しい彩色が見事にのこされています。内陣正面と裏堂のドラステイックな空間美の変化が実に見応えがあります。

仁和寺と言えば御室桜がとても有名ですが、秋の紅葉も京都御所を歩いているような上質さで楽しむことができます。京都の門跡寺院を代表する寺の境内は、やはり違います。



仁和寺は平安時代の天皇が造営した著名な別荘の一つで、888(仁和4)年に宇多天皇によって創建されました。元号が寺名になっていることから天皇肝いりの寺であり、御室とは宇多法皇の御殿の名前です。以来日本で最初の門跡寺院として、天皇の実子である親王クラスの皇族が入寺し続けます。境内に現存する「御殿」は門跡の居住エリアである御室の名残です。

仁和寺は応仁の乱で伽藍が全焼した後、江戸時代初めの門跡・覚深(かくしん)入道親王が三代将軍・家光の援助を受け再建したのがほぼ現在の伽藍です。家光の援助を得たことには政治的な思惑も見え隠れします。

覚深入道親王は後陽成天皇の第1皇子で、出家前には良仁(かたひと)親王と呼ばれ、秀吉の後押しで次期天皇になることが内定していました。しかし秀吉がこの世を去ると後陽成天皇は良仁親王ではなく、実弟の八条宮智仁(はちじょうのみやとしひと)親王に譲位したいと言い出します。

紆余曲折ありましたが家康の裁定で、良仁親王の弟で豊臣色がない後水尾天皇が皇位を継承します。良仁親王と八条宮智仁親王は豊臣色が濃かったことが徳川から敬遠されました。

後水尾天皇は修学院離宮に代表される巨額の寄進を家光から得ていたことで知られています。皇族と京都の町を掌握したい家光にとっては、自らの意向で天皇になれなかった二人の存在も無下にはできませんでした。その結果が、八条宮智仁親王に桂離宮、覚深(良仁)入道親王に仁和寺の整備という、こちらも巨額の寄進でした。


金堂の蔀戸(しとみど)のデザインはまさに紫宸殿

金堂は屋根が檜皮から瓦に葺き変えられていますが、外観は紫宸殿そのものです。現存最古の御所建築として国宝にふさわしい風格と優雅さを供えています。堂内も門跡寺院らしい上質さと荘厳さにあふれています。

本尊の阿弥陀三尊の背後に描かれた西方極楽浄土の光景である「浄土変」が実に見事です。美しい彩色と荘厳な佇まいは約400年前の移築時と変わっていないように感じます。代々の門跡が極楽往生を祈った空間として、格別の趣がのこされています。

背後の裏堂に回ると、薄暗い空間ではありますが、五大明王の憤怒の表情と燃え盛る炎に圧倒されます。内陣で包容力のある阿弥陀様に祈った後でもあり、身が引き締まる思いがします。代々の門跡も自らの煩悩と向き合う気持ちを新たにしたことでしょう。内陣と対比することで裏堂の美しさがさらに強く印象付けられます。


経蔵

裏堂公開とあわせて隣接する重文・経蔵も公開されています。こちらも保存状態が良く、荘厳な室内空間が保たれています。

仁和寺創建当初の金堂本尊で国宝の阿弥陀如来が安置されている霊宝館もほぼ同時期に公開されています。例年4-5月と10-11月の計約4か月間だけ公開されます。この時期に仁和寺を訪れらるなら必見です。



仁和寺は門跡寺院の中の門跡寺院です。その格別さは金堂の堂内に集約されています。

こんなところがあります。
ここにしかない「美」があります。



もっと知りたいシリーズは仁和寺を知る基本

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仁和寺 秋の特別拝観
第51世門跡晋山記念 初公開:金堂裏堂 五大明王壁画/経蔵
【寺による特別公開案内サイト】

会場:金堂、経蔵
会期:2018年10月13日(土)~12月16日(日)
原則休館日:10/29-11/2、11/13-14、11/27-12/2、12/7
入館(拝観)受付時間:9:30~16:00

※この特別公開は定期的に行われるものではありません。
※金堂内陣の特別公開(本尊を正面から拝観)も定期的に行われるものではありません。
※仁和寺で建物内部が常時公開されているのは「御殿」だけです。



◆おすすめ交通機関◆

JR嵯峨野線「円町」駅下車、「西ノ京円町」バス停から市バス26系統「御室仁和寺」下車、徒歩1分
JR嵯峨野線「花園」駅下車、徒歩15分
京福電車北野線「御室仁和寺」駅下車、徒歩3分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:30分
京都駅→JR嵯峨野線→円町駅/西ノ京円町バス停→市バス26系統→御室仁和寺

【公式サイト】 アクセス案内

※京都駅から直行するバスもありますが、鉄道とバスを乗り継ぐ方が、時間が早くて正確です。
※この施設には有料の駐車場があります。
※春秋の観光シーズンは、渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


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