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「裸踊り」法界寺・京都 ~中世の伽藍と奇祭を間近で体験

2018年01月07日 | 祭・行事・季節の花


祭の前に行われる荘厳な読経

法界寺(ほうかいじ)は、京都の山科盆地の東南にある醍醐寺の近くにある古刹です。国宝の阿弥陀堂と平安貴族が一心不乱に祈った阿弥陀如来が美しく、伽藍にも平安時代の浄土信仰の名残を色濃く残していることが魅力です。

正月明けには奇祭の「裸踊り」が行われ、夜のとばりの中、境内は荘厳さに包まれます。見ごたえのある寺社が多い京都の“端っこ”の中でも、中世の趣と奇祭を充分に体験できる数少ないスポットです。

法界寺のあたりは日野(ひの)という地名で、特に室町時代に有力な貴族であった日野家の領地でした。日野家からは浄土真宗の開祖・親鸞聖人や室町幕府8代将軍・足利義政正室の日野富子が出ています。法界寺のすぐそばには親鸞聖人の生誕地とされる地に「日野誕生院」が西本願寺によって建立されています。


800年間立ち続けている国宝・阿弥陀堂

法界寺の創建時期は複数の説があるようですが、末法思想がピークだった平安時代後期の1051年には日野家によって薬師堂が設けられ寺として成立していたようです。宇治の平等院鳳凰堂の完成(1053年)とほぼ同時期です。

現存する阿弥陀如来は創建当初の造立と考えられています。平等院鳳凰堂の阿弥陀様とよく似ており、美しい定朝様式です。極楽に行けるように祈る貴族たちを温かく包み込むようなぽっちゃりした柔和で優美なお顔です。平安時代後期の阿弥陀様としては、宇治・平等院鳳凰堂と加茂・浄瑠璃寺と並んでまさに最高傑作です。

現在の阿弥陀堂や薬師堂は創建当初のものではありません。鎌倉時代初期に後鳥羽上皇が鎌倉幕府追討に兵をあげて敗れた承久の乱の際に伽藍は全焼しています。現在の阿弥陀堂は焼失後まもなく再建されたもので、ピラミッド型の屋根が美しい曲線を描く阿弥陀堂建築の典型例です。堂内にはわずかに創建当初の壁画が残っており、堂内空間をより神秘的に見せてくれます。

境内には小さい池があり、浄土庭園のような趣を感じさせます。伽藍は創建当初からあまり変わっていないと考えられており、浄瑠璃寺と並んで京都では数少ない中世の面影を色濃く残すお寺です。


裸の男たちが体をぶつけあうと湯気が上がる

裸踊りは、阿弥陀堂の正面の縁側で行われます。踊りの前には、阿弥陀堂に隣接する薬師堂で本尊・薬師如来に荘厳な読経が行われます。闇夜に響く僧の声はとても幻想的です。言葉の意味は分かりませんが、とても心が落ち着きます。

裸踊りはまず、子供だけで行われます。「頂礼(ちょうらい)、頂礼」と唱えながら頭の上で合掌し、裸の体をぶつけあいます。「頂礼」とは仏様にひれ伏して敬礼することです。新年の五穀豊穣を祈った「修正会(しゅうしょうえ)」の儀式の最終日に裸踊りは行われることから、仏様に感謝する意味があるのだと考えられます。

子供の部が終わると、大人の部になります。体の大きさが違うこともあって、とても迫力があります。体がぶつかると湯気が立ち込め、一心不乱に「頂礼」と叫びながら頭の上で合掌する姿がとても神秘的です。境内では地元の方による粕汁の接待があります。志納した上でぜひご賞味を。寒空の中でどんな味がするかはご想像の通りです。

裸踊りへの人出は正直多くありません、縁日屋台も出ていません。しかしその分踊りの様子を間近で見ることができます。写真を撮るのに苦労するようなこともありません。京都らしい祭と中世の面影をストレスなく感じられるこの寺をぜひおすすめします。

こんなところがあったのか。
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさん。



定番・古寺巡礼シリーズで法界寺の魅力を再確認


法界寺(京都市観光協会サイト)
https://kanko.city.kyoto.lg.jp/detail.php?InforKindCode=1&ManageCode=1000206
法界寺「裸踊り」(京都市観光協会サイト)
https://kanko.city.kyoto.lg.jp/detail.php?InforKindCode=2&ManageCode=1000124
会期:毎年1月14日 19:00頃~21:00頃
※仏像や建物は、公開期間が限られている場合があります。



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