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「茅原大とんど」吉祥草寺・奈良 ~圧巻の大松明を間近で体験

2018年01月08日 | 祭・行事・季節の花


大とんどは雄雌のペア

吉祥草寺(きっしょうそうじ)は、奈良盆地の東南、飛鳥のちょうど西側にある修験道ゆかりのお寺です。修験道の開祖で大峰山や吉野・金峯山寺を開いたと言われる役行者(えんのぎょうじゃ)の生誕地に建立されたと伝わるパワースポットとして、また真冬の圧巻の風物詩である「大とんど」が行われることで知られています。

役行者は役小角(えんのおづの)とも呼ばれ、飛鳥時代の呪術師です。呪術師として当時かなり名をはせた実在の人物ですが、修験道の開祖としての認定や、“伊豆大島から海の上を歩いて毎日富士山に登った”といった様々な逸話は後世に成立したものと考えられています。

宗派の象徴として主観的にあがめられる存在と考えるとわかりやすいでしょう。真言宗の開祖・空海も“墨を付けて投げた筆が川の対岸の額に字を書いた(神護寺の硯石伝説)”といった、科学的には説明がつかない逸話がたくさんあるのと同じです。


境内にある役行者の産湯の井戸

寺は平安時代に醍醐寺の開祖・理源大師聖宝によって中興されましたが、南北朝時代の兵火で全焼しています。現本堂は室町時代に再建されたものです。境内には「役行者の産湯の井戸」や、開山堂内に江戸初期の役行者像が伝わっており、長い時の流れを感じることができます。

寺のある地名を付けた正月明け恒例の「茅原(ちはら)大とんど」は、高さ5mの大松明を燃やしてその年の五穀豊穣を願う左義長(さぎちょう)行事です。数多く行われる奈良県内のとんどの中でも最大規模で、闇夜の勇壮な炎のセレモニーが本当に見事です。

伝説によると、無実の罪で伊豆に流されていた役行者の帰国を村人が大松明で祝ったのが始まりとされています。境内の発掘調査によると、少なくとも江戸時代初期には大とんどが行われていた形跡があるようです。いずれにしろ、とても長い間地元の人たちに愛され続けてきた行事であることは間違いありません。


参道に並んだ縁日屋台を通って続々と見物客がやってきます

夜になると、広い境内には少しずつ人が集まってきます。1月14日の真冬の夜に外で待つことになりますので、甘酒など体を温めるものが縁日屋台でよく売れています。広い境内の中心には、早い時間から雄雌ペアで松明がセットされています。松明の周囲では地元消防団が待機し、万が一の事態に備えています。

本堂の前には山伏が並び、特別な場である雰囲気が伝わってきます。消防団の法被姿も場の空気をピンと引き締めています。点火を前に20時頃から僧侶や山伏の読経が始まり、境内は一層荘厳な雰囲気に包まれます。20時半頃には点火されます。


点火の瞬間

雨で松明が湿っていない限り、炎はあっという間に燃え広がります。風が強い場合は風下を避けないと、おそらく火の粉で服に小穴が開くでしょう。このような巨大な炎を間近で見ることはめったにないこともあって、何とも言えず見事です。寒空の中、待った甲斐があったと感じられます。

カメラのストロボもたかれるため、漆黒の闇夜をキャンバスに複雑に絡み合った光のショーが幻想的です。30分ほど燃え続けると松明が自然と倒れます。倒れる瞬間の迫力もあっと驚かせるものがあります。

お祭りやカメラファンの方には特におすすめのド迫力行事です。間近で見られるライブ感がやはり素晴らしいです。最寄り駅からは徒歩5分ほどですが、本数が少ないため事前のダイヤ確認をおすすめします。クルマには無料駐車場が150台分用意されています。天候も確認しなければなりませんが、それだけの価値はあるでしょう。

こんなところがあったのか。
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさん。



全国8つの聖地による日本の山岳信仰理解に最適の一冊


吉祥草寺
http://www.en-chan.com/index.htm
茅原大とんど(奈良県観光公式サイト)
http://yamatoji.nara-kankou.or.jp/01shaji/02tera/02west_area/kisshosoji/event/0000000001/
会期:毎年1月14日



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