桃とかなへび

いらっしゃいませ。

死にがいを求めて生きているの

2023年03月15日 | ブックエンドとスクリーン
螺旋プロジェクト2冊目は、「死にがいを求めて生きているの」朝井リョウ
時代は平成。いきなり言うのもなんだが、海族と山族がことさらに争っているわけではない。しかし共生する両者の違いは明らか。
たしかに平成は、競ったり争ったりしない時代だった。


螺旋プロジェクトの中の作品ではあるけれど共通ルールとか関係なく、面白い読書だった。電車から降りる時に本を閉じるが、歩きながらあれこれ考えてしまう。感動したとかではなく、考える。
福助は完全に平成の山族なんである。
好きな先生が教える教科は頑張って勉強するが、嫌いな先生の教科は嫌いになる。国語が苦手なのはそのせいらしい。褒められる、羨ましがられる、尊敬されることが一番好き。そして周囲に理解されなくてもかまわない自分の「好き」は持っていない。
私は不思議でたまらない。「好き」からしか広がらない豊かな世界を知らないままだなんて。
作中では、同じ中学から高校に行った同級生から「お前、変わらないな。相変わらず、手段と目的が逆転してる。」と辛辣なことを言われる場面がある。なるほど、そういう言い方もあるか。
ただ、それは別に悪いことではない。福助はなんの疑問も持たないまま還暦を過ぎた。
しかし、仕事やめたらどうするのだろう。会社という行くべき場所はなくなり、だれも褒めてくれなくなる。自慢話をしたら嫌われるよ。
きっとお金さえ払えばちやほやしてくれるお店に行くんだろうな。彼女らは気持ちよくお金を払わせるプロだから、さぞかしいいお客さんだ、すでに。
みたいに、あんなことやそんなことを考える。

今は伊坂幸太郎を読み始めたところ。
ふと思うのは、理解できないものに対する考え方。
海族と山族、A型とB型、自国民と外国人、男と女。あちら側とこちら側になんらかの線引きをして、判らない理由にするのは、悩むより楽だ。知恵かもしれないし、もしかしたら科学だったりして。
まだ2冊しか読んでないが、8冊分のバリエーションがあるだろうか。
面白くなってまいりました。


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