新型インフルエンザ対策

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インドネシアのスパリ保健省大臣の言動に国際的警戒感が高まっている

2008年09月08日 | このごろの新型インフルエンザ関連情報
2008/9/8

 インドネシアのスパリ保健省大臣の言動に国際的警戒感が高まっている。昨日のAFPが良くまとまった論説を世界に配信している。インドネシア、ベトナムを含むアジアの問題に関しては、フランスに基盤をおくAFP(フランス通信社)が強い。AP、ロイターに次ぐ世界第三位の通信社だ。

 スパリ女史は元来優秀な心臓専門医で、50代前半の働き盛りの真っ最中のように見える。
 一昨年暮れ頃から、先進国が途上国で分離されたH5N1ウイルスをWHO経由で入手し、それをワクチンや抗インフルエンザ薬の開発に利用し、途上国では購入できないような高価な薬品の製造を行っている。それはWHO憲章に定められた”健康”の平等性に反すると異議を呈しだした。そしてインドネシアで分離されるH5N1ウイルスのWHOへの提供を拒否しだした。その後WHOとの調整がつかないまま、今年に入ってからは、死者の報告も相当遅れてからまとめて発表するという方式に切り替え、実際にインドネシアでのH5N1鳥インフル発生状況が不明瞭になってしまった。
 当初はスパリ女史の主張に多くの国は賛同し、WHOの対応が注目されていた。しかしながらスパリ女史の目標は違っていたようで、色濃い(イスラム)民族主義の顕示欲が明確になってきた。
 米国とWHOへの非難は相当強く、彼女が今年の春に出版した本に、米国がWHO経由で入手したH5N1ウイルスを生物兵器に改造していると書き、ジャカルタにある米海軍医学研究施設の撤去を求めた(このときインドネシア保健省は、同国はウイルス分析のために米国の力を借りる必要はないと発表した)。
 女史の本は再販を重ねるほどに多くの国民の心を掴んでいるようだ。
 しかしインドネシアで分離されるH5N1ウイルスは、同国の研究者も入手出来ないため、現在のインドネシアにおけるH5N1鳥インフル流行の詳細な状況の把握は困難で、ウイルス変異によるパンデミック予知が不可能なようだ。インドネシアの研究者は、そのような状況からインドネシアにおけるパンデミック発生のリスクは高いと危惧している。
 また大統領周辺でも、スパリ女史の米国陰謀説を信じている人はいないようだが、スパリ女史は政治的に自分の立場を明確に主張しているということから、インドネシア国内では人気を博しているようだ。
 今後、インドネシアはますますパンデミック発生の地震源となってゆく可能性が高く、国際的警戒が重要となるが、それは公衆衛生学的監視だけでなく、政治的監視も含まれ、そしてそのための調整が重要となる。

(「海外直近情報集」より)