対米処世術←点描「日本の官僚」など
▼イラク軍のクエート侵攻に伴う「砂漠の楯」作戦の舞台裏
*米軍が通信機器1万台必要→当時の日本政府は実に太っ腹で
基金の八割はアメリカ企業の製品を買ってもいいと言ってきた
モトローラ社製品を納入した
*中央司令部が砂漠疾駆の四輪駆動車が欲しい→
三菱パジェロをまず3000台ほど買った
これに加えてトヨタのトヨタのランドクルーザーも買った
*「軍用駐機場拡張」→
『大蔵省』:駐機場は軍用なので武器輸出三原則に違反する
『外務省』:平面のコンクリートだけなら武器に当たらない
「大蔵省」:それでいい
《日本の官僚機構の典型例を見る思いでした》
*兵士レクレーション用にテレビとウオークマンを→
『大蔵省』:TVは良いがウオークマンは個人なので認められない
『外務省』:岡本課長がソニー盛田会長に五千個無料おねだりOK
ウオークマン5000個を中東までどう輸送するか?経費発生どう賄う
『外務省』:米軍向けに輸送する車両の中に入れて搬送で落着
▶:日本政府と仕事をしていてうんざりしたのは
こういう官僚機構のお役所仕事に巻き込まれたときでした
《110億ドルもの巨額資金をプレゼントしていながら相手をカンカンに
怒らせる そんなお役所は日本だけだね》
わたしは腹立ちまぎれに同僚によくそう言っていましたが
日本の官僚機構と渡り合い辟易した経験の持ち主なら
きっと賛同してくれるのではないかと思います
折角良いことをしているにもかかわらずこのお役所根性の所為で
諸手続きに伴う困難さばかりが記憶に残り
政治的評価が下がってしまう
残念としか言いようがありません
▶:同盟国より社会党に配慮
トラックを買い付けようとしたとき
『大蔵省』から横やりが
トラックに機銃を設置する計画である以上
武器になるものだから支出は認められない
結局
基金からの直接支出は認められず
アメリカ国防省がトラック代金を支払ったのち
日本側がその経費分をアメリカ国防省に寄付するという
なんともバカバカしい手続きを踏みました
日本の同盟国アメリカが
隣国を武力侵略したイラク相手に義戦の準備を進めている
というのに日本の官僚機構は社会党の顔色をうかがい
国内政治の手続きばかりに気を取られ
同盟国の米軍から助力の要請があっても
さまざまな難しい条件を付けて
すぐに手を差し伸ばそうとしなかったのです
私はさすがに
「米軍は戦争の準備で忙しく日本の政争に構っている時間的な
余裕はない 国内手続きばかりを優先する今のやり方だと
米軍もいつかは堪忍袋の緒を切らし
もう日本のお金は要らないと言い出すかもしれませんよ」
と外務省の友人に警告したこともありました
湾岸危機・湾岸戦争は日本にとっても石油エネルギー供給という
死活的利害の絡む大問題だったはずですが
それでも国内の政争に明け暮れ
国家の大局を誤りかねない弱点が浮かび上がっていました
翻って現代を見ると
中国の脅威の影が日増しに大きくなっています
こうした中で沖縄の海兵隊は
中国を抑えつける絶対的な抑止力になっている
なのに反基地の政治家と団体によって
海兵隊は邪魔者扱いされ立ち退きを要求されているのです
国家の大局を誤るという点から言えば
当時よりも今の方が事態ははるかに深刻です
▶小泉政権下でインド洋の給油活動が実施されていなければ
アフガニスタンに於ける対テロ戦に参加している
多国籍軍艦艇の活動は20~25%縮小したと推定され
日本の貢献は文句なしに大きかったのです
当時野党だった民主党が
「日本の燃料はアフガン作戦用の艦艇にはOKだが
イラク作戦での使用は不可である」
という難題を吹っかけてきた
我々としては
「燃料の分子がどこにいったかは計算できない」
と答えるしかなく本当に困りました
▶1996年「有事駐留論」を鳩山氏は展開しました
その趣旨は
「日本の有事にのみ米軍が駐留し日本を防衛すれば良い」
この有事駐留の考え方は無礼きわまりない
私は仲間内のおしゃべりで
「米軍をただの番犬とみなしている とても失礼だ」
と意見いいました
するとアメリカ人の友人は
「それは違う 番犬ですらない この場合の米軍は
普段はただの野良犬として扱われているのに
必要なときに口笛で呼ばれて
強盗や泥棒を追い払えと命令される」
その後われわれの説得もあり鳩山総理はようやく
「抑止力」の重要性を理解したのです
▶官僚を活用しなければうまくいかないのは日本もアメリカも
同じです
アメリカなら民主党と共和党の二大政党による政権交替に
慣れているので官僚たちは政策の遂行に全力を挙げる
政治家もそのことがよく判っています
ところが日本の民主党の政治家たちは「官僚たち」が
永年政権の座にあった自民党を支持しているのだろうと邪推し
官僚を遠避けた
これでは国家運営がうまくいくはずがないのです
そのうえ米国が日本の外務官僚に説明しても
民主党の政治家は官僚を信用していないので我々の説明は
民主党政権に伝わらなくなった
政治主導によって官僚を外した結果
日米の重要な情報ルートが閉塞する事態になっていたのです
米軍再編問題について
国務省や国防総省の局長レベル部長レベルが日本側実務者に
説明しても
日本の政治家は官僚経由の情報を信用しない
「それは本当にアメリカ政府の見解なのか」と疑われます
そして貴重な情報であっても握りつぶされる
これでは外務省の官僚たちもかわいそうです
そうこうするうちに我々アメリカ当局者も
直接日本の政治家に説明した方が得策だろうと判断する
ようになりました
日本の政治家が官僚を信用しないのだったらわれわれが官僚に
説明しても何の意味もなくなるというわけです
いつでも大臣や副大臣クラスとアポイントメントが
取れるわけではないのですがアメリカ当局者は
外務・防衛の分野では日本の政治家と直接の信頼関係を
築こうという姿勢になったのです
〔出典:「決断できない日本」ケビン・メア著 文春新書821〕
追記:著者略歴
1954年生まれ
ラグレインジ大学16才で入学19才で卒業
ハワイ大学大学院卒
ジョージア大学ロースクールを卒業し弁護士資格取得
法学博士1981年国務省入省
駐日大使館経済担当官を振り出しに在日期間は19年に及ぶ
2011年国務省を退職し現在はコンサルティング会社上級顧問
16~19才まで20000羽の養鶏所でアルバイト悪臭と労働の日々
ハワイ大学院ではタクシーの運転手でアルバイト
博士号取得したのに配車主任へ昇格
なのでジョージア大学で弁護士資格取得
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