狐の日記帳

倉敷美観地区内の陶芸店の店員が店内の生け花の写真をUpしたりしなかったりするブログ

百夜の悲しき常闇に 卵の来生を統神に祈む

2018年05月24日 23時23分11秒 | VSの日記













 本日5月24日は、初の勅撰和歌集『続万葉集』に対し醍醐天皇が編纂し直すよう命じて改めて『古今和歌集』として編輯を行った日で、織田信長が越前の朝倉義景討伐のため3万騎を率いて京都を発った日で、豊臣秀吉による朝鮮出兵第一陣の小西行長らが釜山に上陸して文禄の役が始まった日で、豊臣秀頼が焼失した京都・方広寺を再建した日で、オランダ西インド会社がマンハッタンをインディアンから購入した日で、サミュエル・モールスが発明した電信装置と符号による初の長距離通信実験がワシントンD.C.-メリーランド州ボルチモア間で行われた日で、奴隷制度廃止運動家のジョン・ブラウンらが奴隷制度擁護派の5人を殺害した日で、地球の地殻深部を調べるコラ半島超深度掘削坑の掘削が開始された日で、アメリカとロシアが戦略的攻撃能力の削減に関する「モスクワ条約」に調印した日です。

 本日も倉敷は晴れでありましたよ。
 最高気温は二十六度。最低気温は十四度でありました。
 明日は予報では倉敷は晴れとなっております。




 或る夜の事。

 …………ブウウ――――――ンンン――――――ンンンン………………。
 狐が薄々と眼を覚ました時、熊蜂の唸るような音はまだその弾力の深い余韻を狐の耳の穴の中にはつきりと引き残していた。
 其れをぢいつと聞いている内に……今は真夜中だな……と直覚した。
 そうして何処か近くでぼんぼん時計が鳴っているんだな……とぼんやりと思い、又もやうとうとしている内に、其の熊蜂の唸りの様な余韻は何時となく次々に消え薄れて行つてそこいら中がひつそりと静まり返つてしまつた。

 狐は括と眼を開いた。
 かなり高い白塗の天井裏から薄白い塵埃に蔽れた裸の電球がたつた一つぶら下がつている。
 其の赤黄色く光る硝子球の横腹に大きな蝶が一匹泊まっていて凝然としている。
 其の真下の固い冷めたい人造石の床の上に狐は丸くなつて寝ているようである。
 ……おかしいな…………。
 狐は丸くなつた儘に凝然と動かず、瞼を一ぱいに見開いた。
 さうして眼の球だけをぐるりぐるりと上下左右に廻転さしてみた。
 蒼黒い混凝土の壁で囲まれた二間四方ばかりの部屋である。
 ……おかしいぞ…………。
 狐は少し頭を持ち上げて自分の身体を見廻わしてみた。
 白い新しい見知らぬ絹の着物を着ている。
 下着はない。のーぱんである。
 体中に奇妙な痕がある。蛇が絡みついたかのような痕。
 ……いよいよおかしい……。
 胸の動悸がみるみる高まつた。
 早鐘を撞くように乱れ撃ち初めた。
 呼吸が其れに連れて荒くなつた。
 やがて死ぬかと思うほど喘ぎ出した。
 かと思うと又、ひつそりと静まつて来た。
 ……此処は何処……。
 ……森閑とした暗黒が部屋の外を取巻いて何処までも何処までも続き広がつていることがはつきりと感じられる……。
 ……夢ではない……たしかに夢では…………。

 狐は飛び上つた。
 否……これは夢だ……夢の中だ……。
 窓の前に駈け寄って磨硝子の向うを覗いた。
 暗闇の中で銀色の羽根を大きく広げた獣が歯を剥き出しにして唸りながら金色の瞳で狐を睨んでいる……。
 あそこに私の本性がゐる……。
 野生の私が唸つている……。
 閉じ込めた私を睨んでいる……。



 …………ブウウ――――――ンンン――――――ンンンン………………。
 狐が薄々と眼を覚ました時、熊蜂の唸るような音はまだその弾力の深い余韻を狐の耳の穴の中にはつきりと引き残していた。
 其れをぢいつと聞いている内に……今は真夜中だな……と直覚した。
 そうして何処か近くでぼんぼん時計が鳴っているんだな……とぼんやりと思い、寝惚けているのだなとぼんやりと思い、変な夢を見たとぼんやり思い、又もやうとうとしている内に、其の熊蜂の唸りの様な余韻は何時となく次々に消え薄れて行つてそこいら中がひつそりと静まり返つてしまつた。


 狐は再び眠りの中にふらふらと堕ちていつたのでありました。



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