このシリーズでは日本と中国の文化や生活習慣の違いについて尋ねていますが、今回は食事をするときの「いただきます」や「ごちそうさまでした」の言葉について、中国語スタッフの呉さんと董さんに語ってもらいました。
Q:中国では食事のときに「いただきます」や「ごちそうさま」のような言葉を言いますか?
呉:中国語には「いただきます」や「ごちそうさま」にぴったり合うような言葉はありません。たとえば、お客様と食事をするとき、接待する側の「さあ、どうぞどうぞ」という言葉が合図になって食事が始まりますし、接待する側の「もっとどうぞ」に対して「もう結構です。とてもおししかったせす」の言葉で食事が終わることが多いです。
董:そうですね。大勢で食事をするときには、たとえば一番年上の人やメインの人が料理に箸をつけるのが合図になって食事が始まることもあると思います。
Q:それでは家族で食事をするときはどうですか?
呉:私の家では祖父や祖母がいましたから、どちらかが「じゃ食べようか」という言葉が合図になって食事が始まり、祖父や祖母が食べ終わるのを待って家族の食事が終了しました。ですから「いただきます」や「ごちそうさまでした」などの言葉はありませんでした。
董:我が家では父が食事をつくることが多かったのですが、一度に全部の料理をつくることはできないので、ある程度の料理ができあがると母と私で食べ始めましたし、終わるときも特に何の合図もなく終わっていましたね。
Q:日本に来てから日本の友人と食事をするとき、「いただきます」や「ごちそうさま」という人もあると思いますが、そのときはどうしていますか?
呉:私は日本に来る前からこのような習慣があることを知っていましたので、驚くことはありませんでした。ですから、日本人の友人たちが「いただきます」や「ごちそうさまでした」を言うときは、私もそれに合わせて言葉を言うようにしていますが、特に違和感を感じることはありません。
董:私もまったく同様で、まわりの人に合わせて言葉を言うようにしています。
Q:一人で生活している日本人のなかには、たとえ自分ひとりでも食事のときに「いただきます」や「ごとそうさまでした」という人もいるのですが、それについてはどう感じましたか?
董:初めてそれを聞いたときはとても奇異に感じました。なぜなら、「いただきます」や「ごちそうさま」の言葉は食事のときの合図だと思っていたからです。
呉:私もまったく同じなのですが、日本の友人からこれは食事の合図の言葉ということだけではなく、神や自然に対する感謝に気持ち、また作物をつくった農家の人や猟師さんたちへの感謝の気持ち、また動物などの命をいただいていることへの感謝の気持ちなどが込められているということを聞き、理解ができたような気がしました。
董:だから「いただきます」や「ごちそうさま」を言うときには手を合わせて言葉を発しているのですね。やはりそれぞれの国にはいろいろな生活習慣があるのですが、それはその国の人に詳しく聞いてみないとなかなか理解できないものだということがわかりました。