como siempre 遊人庵的日常

見たもの聞いたもの、日常の道楽などなどについて、思いつくままつらつら書いていくblogです。

「独眼竜政宗」を見る!(11)

2009-04-04 21:48:34 | 往年の名作を見る夕べ
 前回視聴分が、ほんとにスカーッとした、戦国大河ドラマの醍醐味みたいだったのと対照的に、今回はドロドロとした骨肉の愛憎劇です。
 このあたり、このドラマの見所のひとつといえるのですが、なんていうか、いままで縦横にめぐらしてきた各人の感情の伏線が、政宗母子、兄弟の対立にグーッと集約されていき、カタストロフにむかってなだれ込んでいく…と、それはダイナミックで、ドラマを円形劇場にみたてたギリシャ悲劇のようです。
 大勢の思惑を飲み込んで、肉親殺しの悲劇を避けられないイベントとして盛大に盛り上げていく図式が、正しくギリシャ的。オイディプスたる政宗と、イオカステたるお東の方と、小十郎・成実・綱元ら家臣や、愛姫、喜多などもコロスとして参加していきますし、そして運命神として舞台を仕切るのは、意外や最上義光だったりします!
 こういう古典的なドラマトゥルギーにのっとっているのも、大河ドラマのスケールの大きさあってこそですよね。
 というわけで、今回は、ドラマ中盤の傑作回である、第21話と22話です。

第21話「修羅の母」

 前回、政宗(渡辺謙)について実兄の最上義光からネガティブな予言をされたお東の方は、豊臣秀吉が北条攻めのため京都を出発したと聞いて激しく動揺します。
 明日はわが身、北条が片付いたら伊達の番なのではないか…という不安はお東の方だけでなく家中にもありました。伊達家に出兵要請もきているので、奥羽で暴れていても秀吉にたてつく気はないですよということを示すため、出兵したほうがいいのではないか…という進言を、政宗は一笑に付して相手にしません。芦名攻めに大勝したことで、ものすごい自信をつけているのですね。
 政宗を危ぶんだ親族衆の国分盛重(イッセー尾形)村田宗殖(八名信夫)らは、政宗を廃嫡し、小次郎(岡本健一)を当主に立てて御家安泰を図ろういう陰謀をお東に吹き込みます。政宗に「伊達家の棟梁はかく申す政宗でございます」と進言をバッサリ切られたお東は、逆切れの勢いで陰謀にのめりこんでしまいます。
 お東の方の輿入れのとき最上からきた家臣の山家(やんべ)国頼(大和田伸也)は、陰謀の片棒を担ぐようお東に脅迫されます。が、この国頼があっさり陰謀を政宗にリーク。陰謀派が芋づる式に逮捕され、政宗はかなりのショックをうけます。
 政宗は、愛姫(桜田淳子)との寝室で「おれは秀吉と張り合うには器量が小さいか?」と珍しく弱音を吐きます。いいえ殿は類稀なる猛将、独眼竜の異名は天下に轟いています…と慰める妻に、政宗は男泣きの涙を見せて、めご、俺は悔しくてならぬ。あと30年、いや20年はやく生まれていれば、秀吉ごときに天下を意のままにさせなかったものを…!と(いやーいい場面だな~)。
 陰謀発覚で身の危険を感じたお東の方は、とりあえず実家の山形に避難します。兄の義光(原田芳雄)はせせら笑って、北条の次は伊達家の番だ、滅亡を免れるには道はひとつしかない、と。それには「お前が毒でも盛って政宗を殺し、首を土産に小次郎を小田原に出頭させろ」というのですね。
 ひひひひひえぇぇ~~~!!あな恐ろしや、なんでわが子を手にかけられましょうや!…と、奇声を発して取り乱すお東を、義光は残酷に嘲笑し、「腹を痛めた母の手で殺してやるのが情けじゃ、関白に無惨に斬られて果てるほうがよいのか」…と。
 この場面、驚いたことに「天地人」名物・暗闇スポットライトみたいな演出なんですが、これがぜんぜんヘンにも唐突にも感じないの。いや~、やっぱ俳優の演技力ってもんだなあ!と、つくづく納得した次第です。妹の肩に手を回して(!)、獰猛で陰惨な笑いを浮かべる義光。恐怖で放心するお東。過剰なくらい濃厚で、淫靡でエロティックで、もうとてもとても、お子ちゃま大河が真似してできる芸当じゃないですわ。
 小田原出頭のことは、伊達家中を揺るがしています。もう今となってはあらためて出兵もできず、かといって徹底抗戦して勝ち目もない。無骨者の成実(三浦友和)は、「こうなったら名誉を守り、先祖墳墓の地にて潔く果てようではないか!」とか極端なことをいい、政宗もその気になるのですが、小十郎(西郷輝彦)が押し留めます。関白を敵に回して徹底抗戦するのは、名誉どころか末代までの汚名。なぜなら秀吉は朝廷から関白に任ぜらているので、秀吉に背くは朝廷に背くことになる。ただ、小田原参着が遅いといって処断されたらそれはそれで、ご政道のほうが間違っている。つまるところ奥州で滅亡すれば逆臣、小田原で滅亡するなら義に適います!…と、渾身の説得で小田原出兵を促す小十郎、正論なのですが、アタマに血が上った政宗は、あわや小十郎を成敗しかけます。
 小十郎は、最後の手段の諫死を覚悟します。がその夜、小十郎の家に政宗がひょっこりあらわれ、「お前の率直な意見を聞きたい」と。小十郎は、「全大名を糾合した関白軍は、追ってもしょうがない、押し寄せる夏のハエみたいなものです」と小十郎は答えます。
 これでーッとこだわりが解けた政宗。そーか、相手はハエなんだ!と呵呵大笑、「小十郎、小田原に行くぞっ!」と宣言します。…
いっぽう最上から帰ったお東の方は、ほとんど錯乱状態で、異常な夢を見ます。妖怪やゾンビみたいなのが踊りまわるなか(なにげにこの振り付けが田中泯だったり!)、政宗の屍骸が運ばれていく。政宗、政宗、なぜ死んだ~~、と、夢と現実の区別がつかないまま、深夜徘徊するお東の運命やいかに!


第22話「弟を斬る」

 関白秀吉に開き直って面会するため、小田原参陣を決意した政宗(渡辺謙)と小十郎(西郷輝彦)。いちかばちかの賭けなので、生きて戻れぬ可能性もあり、政宗は後事を成実(三浦友和)に託していきます。万が一政宗が殺され、弔い合戦に及ぶようなときは成実を大将と仰ぐべし!…というのですが、政宗には弟の小次郎(岡本健一)がいるわけです。いまや政宗はこの小次郎が信じられない。いや、小次郎がというより、すきあらば小次郎を担いで伊達家を私しようと企む分子がいることがです。
 成実が政宗のあとを託されたと聞いたお東の方(岩下志麻)は大ショック。小次郎の守役の小原縫之助(岡本冨士太)らアンチ政宗派は、殿はこのままでは伊達家を滅ぼす、いまこそご決断を!と、お東の方と小次郎を担いでのクーデターを促します。
 小次郎もわが子なら政宗もわが子、わが子がかわいくない母がどこにおろう…と、謀反には反対するお東の方。ですが、兄の最上義光(原田芳雄)の言葉が脳内リフレインすると、ちょっと正気があやしくなってしまうわけです。「政宗は伊達家を滅ぼす悪鬼羅刹じゃ、いまわしき怨霊じゃ、政宗さえいなければ伊達家は助かるのだぞ!!」という。さらに、お義、政宗はお前のことなどなんとも思っていない!だれよりも深くお前を思っているのはこの義光なのだ!!…と、脳内の兄の声に「ああ!」悶えるお東の方。完全に義光にマインドコントロールされてます。
 お東はついに、侍女の御佐子(鷲尾真知子)に、トリカブトの毒の包みを託します。よいか、これを今宵の政宗の膳に…と命じられた御佐子は恐怖に取り乱し、逃げ惑いますが、「伊達家のためじゃ、そなたにしか頼めぬ!」といわれてはもう一蓮托生。
 その世、小田原出立を明朝に控えた政宗が、お東の部屋に挨拶にきます。紅をさし、化粧を凝らしてむかえるお東(こ、怖…)。落ち着いて暖かな母の態度に、政宗も久々に心を開き、素直に「母上、今日までご勘気に触れるようなことばかりして申し訳ございません」などと素直に頭を下げます。
 お東の方も目に涙をため、「これが今生の別れになるやもしれぬ、そなたの顔をよく見ていたい…」と。やさしい母にホロホロッと来た政宗。照れて、いやー、母上の手料理はありがたい!とかいって用意の膳に箸をつけ、むしゃむしゃ食べ始めますが、やがて!
「は、母上、これが心づくしございますか?!」と、毒が回って麻痺した舌で訴える政宗。お東は動じず、涙を流しながら「母の慈悲じゃ、許せ!」…と。
 いやーなんとまあ怖い、濃い、そして切ない切ない場面なんでしょう。カーッッと毒入り食物を吐き出した政宗は、懐から水晶の数珠をつかみ出すと、毒入り膳にバシッと叩きつけ、「母上!! さらばでござる!!」(ううっ 涙)。
 すぐに吐いたので幸い大事になりませんでしたが、生みの母に毒を盛られたことに、政宗本人も、側の者たちも、そして妻の愛姫(桜田淳子)も大ショックです。とくに愛姫はすごいダメージをうけますが、意外にも彼女はお東の方が嫌いではない(このへんの感情の機微がほんとに繊細なのね)ので、「わたくしは母上を恨めない、むしろ世の中を恨む、どうして武将はこんなにまでして戦わなくてはならないのであろう」…と、戦国大河にはありがちな述懐なんですが、これはほんとに切々としてますよねえ。
 なんとか毒のダメージをねじ伏せた政宗でしたが、このままにはできません。お東の方を討つべきだ!と側近達は進言しますが、一般の倫理感として、母殺しというのは人間をやめるに等しいことみたいで、政宗もさすがにそれはできない。が、母には少しばかりでない苦しみを味わってもらわねばならぬ…と、凍るような顔をしていう政宗に、綱元(村田雄浩)が、では小次郎様をお討ちなさい!と進言します。
 小次郎に何の罪もないのですが、小次郎を担ぐ連中は伊達家の獅子身中の虫、今後のためにも潰しておかねばならない。それよりなんの罪も無い小次郎を殺せば、お東の方の苦しみと嘆きはこの上なく、これ以上の復讐はないわけです。ものすごい非常な提案に、政宗も、成実、小十郎、佐馬之助(鷲生功)も、全員が無言で納得し、動き始めます。
 その夜のうちに、縫之助の邸に泊まっている小次郎を訪ねた政宗は、人払いして小次郎と二人きりになります。「そなたには全く怨みはないが、伊達家のために死んでくれ」と率直に言われた小次郎は、言葉を失いますが、やがて「兄上、わたくしは覚悟しています」。聡明な子なので、自分の置かれた立場も、周りの者の勘違いも、客観的にわかっていたんですね(ううっ 涙)。
 が!「でも最後に一目母上に会わせて…」と懇願する小次郎を、ならーん!!と叫ぶや政宗は袈裟懸けに斬ってしまいます。許せ小次郎、母の替わりにそなたを討ったのじゃ、成仏いたせ!……(うわーーー号泣ーーーっっ!!)
 その夜のうちに、お東の元には小十郎が赴き、小次郎が成敗されたことと、お東はすみやかに伊達領を出て行くようにと伝えます。初めは信じなかったお東も、小次郎の遺髪を見せられると錯乱し、失神して倒れてしまいます。
 直ちに実家の山形に行ったお東でしたが、なんと、一夜で白髪に変ってしまってました。しかも完全に気が触れてしまい、「小次郎はどこじゃ、小次郎を呼びやれ」と繰り返すのをみて、さすがの義光も衝撃をうけます。「お義ゆるせ! そなたの面倒はこの兄が一生みるゆえ安心いたせ」と、はじめてこの人からまともな人らしい言葉がでました。
 小次郎ショックは政宗の心身も深く蝕み、小田原参陣どころではなく、小次郎の亡霊に悩まされる夜が続きます。
…いやー、なんともはや残酷! 残酷なんですが、骨肉の争いは大河の定番。それはそう簡単に描いていいもんじゃない。このくらい視聴者の胸を抉る非情さが必要なんだわね…と、涙を拭いながら頷いたのでありました。


つづきます。


8 コメント

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もうクライマックスまで来てしまいましたか (ぽんつく)
2009-04-04 22:26:14
独眼竜といえば子殺し未遂。最高潮の回だったと思います。
もっとも、吐いただけで弟を切り殺す元気に驚きましたが。普通もっと、死線をさまようもんじゃないの、トリカブトなら・・・。
義光は後で出てくる駒姫に対してもですが、発狂した側室や妹にも、女性限定で妙に優しいところが印象的でした。

消極的で引きこもりがちな、あえていえば根暗な愛姫だからこそ、正反対な姑に好意的なんでしょうね。なんかわかる気がします。
女性同士の友情でもあり得る力関係だし。
そして、2話とも嫌な役目を引き受ける小十郎。苦労してはる~。
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愛姫とお東 (庵主)
2009-04-05 22:56:08
ぽんつくさん

ええもう、最高潮でしたねえ。

>発狂した側室や妹にも、女性限定で妙に優しいところが印象的

そうだ、まえにも発狂した側室がいましたね。なんか周りで壊れる女性が多すぎですけど(笑)、優しい義光というのもなかなか味があって好きです。
それにしても昔の作品は女の人の扱いが過酷だなあ…と思いますね。

>あえていえば根暗な愛姫だからこそ、正反対な姑に好意的

そうそう、まだゴクミの時代からお東様のことを憧れの目でみていたような。
けっきょく、バンバンものを言ってパワフルなお母さんに憧れがあったんでしょうね。そういうおかあさんでも戦国の犠牲にならなくてはいけない…ということで、愛姫の述懐にも(ありがちな台詞ですが)説得力があったように思います。
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こんにちはです (ikasama4)
2009-04-07 12:56:37
私も独眼竜といえば
この毒殺未遂を思い出します。
ドラマとしては一番の見せ場でしょうね。

その後、生みの母が斬れぬからと弟を斬るという展開。

とても非情に見えるものの
内心では、そのことをとても悔やむ政宗の姿がまた、たまらんですね。

義姫がこんな行為に走ってしまったにも、全ては御家を守るために。

それが愛姫にも分かっているからこそ、たまらんのでしょうね。


ちなみに、つい最近まで私も知らなかったのですが
「最上義光歴史館」では義姫が毒殺事件に関与してなかったのではないかという説がありました。

http://mogamiyoshiaki.jp/?p=log&l=120067

これを見ると彼女が最上家に出奔したのは
毒殺事件が起きた1590年ではなく、それから4年後の1594年らしく
また、1593年には政宗と義姫との間で文のやり取りをしている事もあったそうで。

でも、相手はあの政宗ですからね。
「真相」は知っていた上で知らないフリをしていたという事も
政宗ならばやってのけそうな気がします ̄∇ ̄
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義光が好きです♪ (庵主)
2009-04-08 23:04:58
ikasama4さん

>義姫がこんな行為に走ってしまったにも、全ては御家を守るために

そうなんですよね…。めちゃくちゃ勝手な暴走キャラのようで、それは子への思いと、お国への思いがボタンを掛け違ったゆえ。根っこの部分がピュアで純粋なだけにとても悲しい。

ご紹介の記事、興味深く読みました。戦国時代は、流石に時代が古いので、ちょっとしたことや新史料で、それまで人口に膾炙した人物像がガラリとがかわってしまいますね。

ていうか「最上義光歴史館」! アウトドア派の(笑)ツボを直撃です。
最上義光歴史館からみれば、「政宗」での義光の描き方は論外ということなんでしょうけど、わたしは原田芳雄さんの義光大好きです。なんか、だんだん好きになります。いまでいうとチョイ悪おやじってキャラを先取りしてて(笑)。好きだなあ。
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独眼竜は伊達じゃない! (侘助)
2009-04-09 13:17:31
庵主様こんにちは。

遅ればせながら私もついに「政宗」に手を出してしまいました。昨日ようやく輝宗父さんが死ぬところまで見て庵主様のレビューにそろそろ追いつきそうです。

いやぁおもしろいです「政宗」。渡辺謙さんはさすがです。「戦国武将」の風格がありますね。やっぱり役者さんは演技力もさることながら「見栄え」も大事ですね。パッと見て「武将らしさ」が出てると出て無いとでは視聴者の入れ込み具合も違いますしね。ブッキ-は悲しいかな、その点やっぱ不利ですね。

「炎立つ」「太平記」と同時進行で見ているんですが、「政宗」とは時代が違うので雰囲気もだいぶ異なります。比べて見るのも中々おもしろいです。
庵主様も「真田太平記」「独眼竜政宗」を見終わったら是非是非「太平記」「炎立つ」も御覧になってみてください。
俳優さんたちも結構被っていて「あ!こんなところにあの人が!」て発見があって楽しいですよ。




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戦国武将を演じる資質。 (庵主)
2009-04-09 21:12:11
侘助さん

おおっ、とうとう手を出されましたか!

いや私もね、毎週ツ○ヤに借りにいくたびに、すぐ横にならんだ「炎立つ」が気になってねえ…。この2作レビューが終了したら…と思いつつ、ちょっと手にとってみたりなんかして(笑)。

>パッと見て「武将らしさ」が出てると出て無いとでは視聴者の入れ込み具合も違いますしね

そうですそうです!
いまは悲しいことに、20代後半の主役クラスで、パッとみて戦国時代の匂いがするような人がいない…(悲)。内野聖陽さんがもうちょっと若いじぶんだったら直江兼続はピッタリだったかもしれないですが(でもあの方はもう山本勘助いがい考えられないしな…)。
とにかく、今のドラマの配役で世に認知されてしまう兼続さんが気の毒で…。思えば、渡辺謙さんのイメージで定着した伊達政宗は、しあわせなドラマ化でしたよね。

とかいいながら、松田龍平くんの政宗を見届けるまでは、がんばって視聴を続けたいとおもってます(杏の愛姫ってぜったい「独眼竜」つながりを狙っていますよね)。

いちばん問題なのは、「政宗」を見ていると天地人を見る目がものすごく厳しくなってしまうことなのです。
「炎立つ」も見たりするとよけいそう思うんだろうな~(笑)。
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第21話、第22話見ましたッ (レビュ丸)
2009-04-11 21:02:47
庵主様こんばんは。少々ご無沙汰しておりましたが、中盤のヤマ場たる第21話と22話、まとめて見ましたのでコメントさせて頂きます。

それにしても、庵主様も触れられているように、これまで伊達家とその周辺諸国との抗争に重点が置かれていたぶん、ドロドロとした骨肉の愛憎劇が逆に新鮮で、存分に楽しめました。実は今回も初見だったのですが、「実の母に毒を盛られる」、「実の弟を我が手にかける」という非常に悲劇的な主題も、ここに至るまでの伏線が巧みに張られていたため、全く不自然さは感じられませんでした。我が子への“愛”ゆえに、政宗を毒殺しようとするお東、
「政宗は伊達家の悪鬼羅刹じゃ!! 滅亡を招く怨霊じゃ!!」
と煽る最上義光、初陣のおり母より賜った数珠を膳に叩き付ける政宗・・・。視点は違えども、見る者をグイグイ引きつけてやまない脚本家の「ストーリーの仕立て」は、本当によく出来ているように思いました。今どきの作家も見習ってほしいものですネ。

加えて、第21、22話の“主役”たる岩下志麻さんの演技力が本当に光っていたように感じました。政宗を殺すよう兄にそそのかされて「ひひひひひえぇぇ~~~!!」と恐れおののく場面、最愛の小次郎を失い、白髪になって呆けてしまったラストの場面。まさしくお東の方が乗り移ったかのような、素晴らしい演技でした。

ようやく奥州を平定したかと思ったのもつかの間、今度は秀吉にひれ伏すため、母と弟を犠牲にしてまで小田原へ参陣しなければならないという政宗の葛藤・・・。本当に切なすぎます。これまで地図を開きながら辿ってきた、数々の奥羽のローカルな戦さも、父・輝宗を討ってしまったことも、「八百人斬り」も、すべて「中央」というものに呑み込まれ、封建的な大名に成り下がらねばならないことを思うと、「オレは悔しい・・・、悔しゅうてならん・・・!!」と子供のように喚く政宗に同情せざるを得ません。この場面、見ていてホント涙が滲んで参りましたヨ。

そして同時に、「もし政宗が秀吉に最後まで刃向かったとしたら・・・!!」という想像力をかき立てられずにはいられません。最上と同盟し、奥羽の奥深くまで秀吉を誘い込んで殲滅する!! というような戦略が、ありありと浮かんできます。政宗がいまだに根強い人気を保っているのは、そういう「同情」と「ロマン」を感じさせるからなのかも知れない、改めてそんなことを思いました。
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戦国ロマンの終わり。 (庵主)
2009-04-12 23:26:07
レビュ丸さん

>ここに至るまでの伏線が巧みに張られていたため、全く不自然さは感じられませんでした

そこなんですよね!もう、お東の方が嫁いできた第1回から、周到に伏線が張り巡らされていて。
技巧的な伏線というよりも、格登場人物の気持ちがそれぞれ一本に繋がっていて、それがたくみに綾を成しているといいますかね。必然的に怒るスパークが、大きな悲劇になっていく…という展開に、ほんとうに息を詰めて見ました。
こういうのは、大河ドラマのお手本としてきちんと継承して欲しいと切に思います。

誰も間違ったことをしていないし、不誠実な振る舞いをしていないのに、こういう悲劇に煮詰まってしまう。人間の業をのぞいたようで、深く感じ入ってしまいます。

>すべて「中央」というものに呑み込まれ、封建的な大名に成り下がらねばならない

それは「真田太平記」にも共通するところですよね。戦国ロマンの終わりというのは、各武将が時代に対処していくときの、それぞれの感慨とか、悔悟などが複雑に渦まいて、ほかの時代にはない空気を醸しているように思います。
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