陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「アトランティスのこころ」

2009-09-20 | 映画──ファンタジー・コメディ
親の愛情に恵まれない子どもが血の繋がらない老人と交流することで成長していくというパターンは、「イブラヒムおじさんとコーランの花たち」でも見かけましたが、こちらのほうが主演が主演だけに、まだしも良心的と言おうか。
01年の映画「アトランティスのこころ」(原題は、Hearts in Atlantis)、主演は名優アンソニー・ホプキンス。「マスク・オブ・ゾロ」や、「9デイズ」でおなじみです。


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五歳で父を亡くし、片田舎で母親と暮らす十一歳の少年ボビー。
自分の仕事のことで手一杯で息子にはお構いなしの母は、年中、亡き父の恨みごとを言う。

ある日、二階に住むことになった下宿人テッドがやってくる。老いたテッドは予知能力や読心術の持ち主で、知性に富んだ彼はいろんな話を聞かせてくれた。すぐさまボビーは、仲良しになる。テッドに触れることで、ボビーにもふしぎな能力が芽生える。
だが、テッドがある理由で追われていることを知ったボビーは、なんとか彼を守ろうとするが。

物語は熟年になったボビーが回想するかたちではじめられる。
母親との軋轢、幼なじみの少女との甘酸っぱい初恋、そして愛する人たちを次々に襲う不幸と想い出との訣別。
タイトルの「アトランティスのこころ」というのは、大人になると失われる少年期の純粋な気持ちを、幻の国にたとえたもの。それは作中、しばしば登場するように、ガラスのかけらを通してきらきらと輝く世界を覗くような気持ち、ではなかったでしょうか。

原作はスティーブン・キングの同名小説ですが、映画化にあたってエピソードは改編されました。
とくにこれといったひねりがある筋書きではないですが、郷愁的な想いが湧いてしまう切ない物語。
最後の母親との和解はいいですね。テッドが連行された背景は、米国ならでは。
なお、壮年期のボビーを演じたのは、「コンタクト」の父親役や、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」の警官役のデイヴィッド・モース。かなり年が寄っていますね。

監督は、「マーサの幸せレシピ」のリメイク版「幸せのレシピ」を撮った、スコット・ヒックス。

それにしても最近、映画を観る時には全ての登場人物を疑ったりしてみる癖がついたので、こういう素直に感動できるストーリーにたまに出会うと拍子抜けします。悲しいかな、私にはもう、「アトランティスのこころ」はないようですね。

(〇九年八月五日)

アトランティスのこころ(2001) - goo 映画

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