陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「カラーパープル」

2010-03-04 | 映画──社会派・青春・恋愛
1985年の「カラーパープル」(原題 : The Color Purple)は、観終えたあとに、けっこう長いにも関わらずもう一度観たいと思わせた映画でした。
二〇世紀初頭のまだ黒人差別が根付く残る時代、黒人女性の自立していく姿を、壮大なクロニクルで描いています。
娯楽性を追求してきた、あのスティーヴン・スピルバーグがはじめて挑戦した社会派映画でもあります。評価は分かれますが、物語が緻密に折り込まれて高い完成度を誇っている作品ではないでしょうか。「シンドラーのリスト」とおなじくらい評価されてもいい作品です。

以下、かなりのネタバレあり。

カラーパープル [DVD]カラーパープル [DVD]アリス・ウォーカー ワーナー・ホーム・ビデオ 2002-04-05売り上げランキング : 23803おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools



1909年の南部ジョージア州のとある町。
セリーとネッティは仲のいい姉妹。姉のセリーは、ふたりの子どもを生むが、父に連れていかれてしまった。セリーを弄んでいた父は厄介払いするように、ミスターという子連れの男やもめに嫁がせる。ミスターは横暴な男で、セリーを奴隷のように扱った。
やがて妹のネッティが父の魔の手から逃れてくるが、横恋慕するミスターを拒んだことで追い出されてしまう。
この姉妹が分かれるシーンがかわいそうで、かなり胸打たれます。たったひとりの生きがいを失い、服従するだけの人生。セリーは妹からの手紙を待ちわびますが、一向に届かない。

だが、ミスターの初恋で歌手のシャグが家に連れてこられたことから、状況が一変。
看病しているうちに、ふたりの間には奇妙な友情が芽生えはじめる。シャグを眺めるセリーの目の輝きに注目。
シャグの生き方に感化され、また彼女の協力によって夫が妹からの手紙を隠していた事実に気づいたセリーは、虐げられた生活から逃げ出す勇気をもちはじめます。

このセリーとシャグとの愛情のあいまに、たくましい女性として描かれるのが、長男ハーポの嫁のソフィア。
舅のミスターにすら喰ってかかる負けん気の強さに、セリーも救われます。ソフィアは頼りない夫とは離婚したうえ、子どもを侮辱した市長を殴って刑務所行きに。出所後はこれまでの覇気をうしない、市長夫人のメイドとして服従させられる。ですが、高慢ちきな夫人がじつはソフィアに依存しているというくだりは愉快ですね。

数年ぶりに新しい夫を連れてきたシャグに励まされて、ついに家を出る決心をしたセリー。
ここで、傲慢な家長のミスターがすべてを仕切っていた家の空気が変わります。セリーの力強い反逆を応援し、みずからもかつての元気を戻すソフィア。
セリーに加え、ハーポの愛人だったスクィークまでが、シャグに導かれて家を出てしまう。

最後は、生き別れになっていた姉妹が再会。しかも、セリーは成長した自分の子どもともはじめて顔合わせします。
身勝手な男に振り回されつづけたセリーの半生は、不幸と忍耐の連続で悲惨としかいいようがない。けれど、最後は理解ある人に囲まれ、報われるのがよかったですね。

主演は、この映画がデヴュー作となる「「天使にラブ・ソングを…」」のウーピー・ゴールドバーグ。
暴力夫には、「プレイス・イン・ザ・ハート」では未亡人を手助けする使用人を演じたダニー・クローヴァー。
原作小説は、アフリカ系アメリカ人でフェミニスト作家アリス・ウォーカーのピューリッツァー賞受賞作。05年にはミュージカル化もされています。



(〇九年八月六日)

カラーパープル(1985) - goo 映画

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 映画「めぐりあう時間たち」 | TOP | ラジオStrikerS 第二十一回 »
最新の画像もっと見る

Recent Entries | 映画──社会派・青春・恋愛