陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

日本映画「夜霧よ今夜も有難う」

2010-07-19 | 映画──SF・アクション・戦争
海の日なので、海を舞台にした映画をもう一本ご紹介。

1967年の映画「夜霧よ今夜も有難う」
石原裕次郎主演作の視聴三本目なのですが、いいかげん裕次郎が歌って暴れりゃ映画が一本できる、というノリで類作をつくっているのがみえてしまい飽き飽きしています。

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船長だった早良には、かつて結婚を誓った恋人秋子がいたが、彼女は四年ものあいだ行方知れずとなっていた。
横浜のナイトクラブのオーナーになった早良を、亡命政治運動家のグエンとその妻となった秋子が訪れる。密航を手引きしていた早良に、グエンの出国手配をしてくれと願い出た秋子に、早良の心は揺れる…。

さて、この筋書き、あのハンフリー・ボガードとイングリッド・バーグマンの主演で名高い「カサブランカ」をなぞったもの。したがって、どうせ裕次郎は浅丘ルリ子演じるかつての恋人に去られてしまうんだろうな、ということが冒頭の秋子の交通事故の段階でことごとく予見されてしまいます。じっさい、その読みどおりでまったくひねりも何もなし。
失礼ながら、人気キャラクターを筋書きをちょっといじった別作品に登場させて客寄せパンダにしている、芸のないアニメや漫画とおなじですね。

本家「カサブランカ」ならば、リックとイルザの恋仲がふたたび燃え上がり、最後まで女のこころがどちらに傾くのかと、終幕ぎりぎりまではらはらさせられます。そして、ナチスに追われたフランス人の地下活動家という立場も、歴史を知っていれば緊迫感が増す。
かたや、こちらの日本版「カサブランカ」は、秋子が早良のもとを去らざるを得なかった事情が明かされはしますが、子どもを産めなくなった女性は日本では女扱いされない、と言われているようでいささか不快だったりします。二谷英明演じるグエンとやらも、まるっきり日本人で外国人(中国か台湾か?)らしさがまったく感じられない。そして、グエンを追ってくるマフィアも、どうみてもそこいらのヤクザです。

やたらと挿入される、裕次郎の弾き語りシーンや乱闘シーンばかりが強調されるも、この当時、やや肥満体になってしまった名優のふるう拳にはキレがありません。
裕次郎のファンには悪いのですが、言葉は聴き取りにくいし、いつも似たような役柄しかないし、歌手としていいけれど役者としてはうまいとは思えないんですけどね。
名作のラブストーリーが、日本に輸入されて安っぽい仁侠暴力映画になりさがってしまった駄作としかいいようがありません。

ただ、人気スターを据えたエンターテインメントとしてみれば不足なしです。

(2010年1月25日)

夜霧よ今夜も有難う(1967) - goo 映画

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2 Comments

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kibmhi (kibmhi)
2010-07-20 16:54:36
面白そうですね。

見たことはないですが、今度チャレンジしてみます。

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歌だけなら (万葉樹)
2010-07-24 15:05:14
どうしても本家と比べてしまって酷評してます。

「嵐を呼ぶ男」など若い頃のほうが好きですね。
いま、あのドラムシーンがCMで舘ひろしにリメイクされていますが、やはり歌声が違います。
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