陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「太陽がいっぱい」

2010-07-20 | 映画───サスペンス・ホラー
夏といえば、海。そして、夏といえばサスペンス。
本日の映画は、1960年のフランス・イタリア合作映画「太陽がいっぱい」(原題 : Plein Soleil)

タイトルから南国の若い男女を主人公にした青春劇のような印象をもっていました。ところが、これが名にしおうサスペンスドラマ。
名優アロン・ドロンの弾ける魅力、弾ける若さ、まぶしい太陽、青い海のきらめき。そんな明るさとは逆に、おどろおどろしい人間の欲望をあからさまにしたヌーベル・バーグ作品です。

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貧乏なアメリカ人青年トム・リプレーは、イタリアに遊学したまま戻らない幼なじみフィリップを連れ戻すという依頼を、その父親から受けた。
おとなしくフィリップを帰国させれば、たんまりと報酬が手に入る。だが、そんな窮状を知ってか知らずか、帰ろうとしないフィリップ。しかも、父親の財産を糧に、豪遊ざんまい。おまけに美しく知性的な婚約者マルジュまでいた。
クルーザーで男女三人の船旅に出たが、フィリップはトムにひどい仕打ち。おまけにマルジュまで怒らせて、下船させてしまう。

フィリップへの嫉妬と憎悪を募らせたトムは、船上で友人を殺害してしまう。死体を海へ放り込んだ。
街に戻ったあと、トムはフィリップになりすまし、まんまと彼の財産を横領。フィリップの自殺まで偽装し、傷心のマルジェにも接近して…。

万事が順調に運び、すべてが我がものになったトム。だが、とんでもないどんでん返しが待っていました。
「太陽がいっぱいだ、最高の気分だ」と、なにも知らぬげにつぶやいたトムの笑顔。その直後に地獄のどん底へと突き落とされる予感で終わっています。

巨匠ルネ・クレマン監督の演出がことごとく冴え渡る。ラストまで手に汗握るサスペンスに視聴者は踊らされてしまう。
そして、すばらしいのは劇中音楽。

前半はフィリップの横暴さが目にあまりトムに同情を寄せたくもなります。とくに、いまの格差社会いちじるしい日本ではなおさらでしょう。しかし、第二の犯行も犯し、腹黒い顔つきになっていくトムの有様にはもはや情状酌量の余地はないでしょう。美しい悪魔とは、まさしく彼のことかな。

共演はマリー・ラフォレ。
原作はパトリシア・ハイスミスの小説「才人リプレイ君」(原題:邦訳本の題名は『太陽がいっぱい』、『リプリー』)
『リプリー』は、1999年にマット・デイモン主演で映画化されています。こちらもなかなかに秀作でした。

(〇九年九月一日)

太陽がいっぱい(1960) - goo 映画


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