陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

日本映画「狂った果実」

2013-07-03 | 映画──社会派・青春・恋愛
「嵐を呼ぶ男」に続き、石原裕次郎・北原三枝のコンビが送るラブストーリー、1956年の「狂った果実」は、石原慎太郎原作の『太陽の季節』の姉妹編。しかし、視聴後感はイマイチでした。

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喧嘩っ早くガールハントに明け暮れる兄、滝島夏久に比べ、弟春次は気だての優しい好青年。兄の友人たちとつるんで遊び歩いていたが、バカンスに訪れた逗子で魅惑的な女性、恵梨にひと目惚れ。
その後、ウォータースキーを楽しんでいた兄弟は、恵梨に再会。程なくして、春次と付き合うようになる。

要するにひとりの女を巡る兄弟ふたりの三角関係なのですが、かなり微妙な関係。恵梨はじつは人妻でありながら、数々の浮気を繰り返してきた魔性の女。恵梨の本性を見抜いた夏久は純情な弟に近づくなとけしかけ、そのついでに彼女を奪おうとします。逞しさで勝る兄に惹かれはじめて逢瀬を重ねていく恵梨に、春次はなにも知らぬまま。

しかし、兄の友人からふたりの密通を知った春次は、海上にヨットでアヴァンチュールを楽しむふたりを追いかけます。無表情でモーターボートを走らせ、停泊したふたりのヨットの周囲を無言で周回しつづける春次、なんだか恐いですね。
三人の恋は無残な終わりを迎えてしまいます。

兄の真意は、果たして弟想いのために引き離そうとしたのか。それとも、弟の恋人をかすめ取ってやろうとしたのか。屈折した愛情といえますが、それなりの報いを受けるのはいいとしても、なんとも後味の悪い映画ではあります。

太陽と海というモチーフは、アラン・ドロン主演の「太陽がいっぱい」を思わせ、理由もないのに反抗的で享楽的な生を営む若者像というのは、ヘミングウェイの「武器よさらば」などを観ればもう十分だと感じています。石原慎太郎の若々しい肉体美には惚れますが、台詞が饒舌でなくて、あまり上手い役者だとは思えないんですよね。
それにしても、裕次郎とおなじく本作で新人デヴューした若かりし津川雅彦の美男子ぶりにびっくり!今は目の下にたるんだ肉がついて面影もありません。やたらと目力があって声に張りがある好々爺になってしまいましたね。中村美津子も娼婦役で顔出ししています。

監督は中平康。
しかし、こういう当時、太陽族と呼ばれた反抗的な若者が今、政治家だったり経済界のトップだったりする現状を考えると、現在の若い人のやるせなさというのが慮られますね。

(2010年1月14日)

狂った果実(1956)(1956) - goo 映画

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