陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

日本映画「嵐を呼ぶ男」

2011-02-17 | 映画──社会派・青春・恋愛


石原裕次郎と聞くと、のちに賢夫人となる女優北原三枝と共演した映画が知られていますね。
1957年の「嵐を呼ぶ男」はその裕次郎・三枝コンビの代表作。黒いタキシード姿でドラムを叩いているシーンはよく見かけます。

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国分正一は手のつけられない暴れん坊だが、音大生の弟、英次とともに音楽好き。
ナンバーワンドラマーのチャーリー桜田を引き抜かれて困っていたジャズバンドの女性オーナー福島美弥子に拾われて、クラブでデヴューする。
美弥子の指導と援助の甲斐あって、正一は一人前の腕前に。桜田とドラム合戦が行われる直前、ダンサーのメリーを巡ってのいざこざから右手を負傷してしまう。
しかし、自慢の喉を披露して拍手喝采を浴びた正一は、唄うドラマーとして華々しく活躍していく。

しかし、単純に風来坊な男がスターにのしあがる夢物語ではないところがおもしろい。正一の成功に絡んでくるのが、複雑に綾なす恋模様。
正一は魅惑的なダンサーにこころ奪われますが、彼女は桜田のパトロンの情人。美弥子に横恋慕するがゆえに、桜田を引き離すように裏工作をした評論家の左京がなかなかの曲者。正一は美弥子との仲を取りもつ代わりに自分を売り出すように約束を交わしますが、自分を一流に育て上げてくれた美弥子に惹かれていってしまいます。

しかし、正一がいちばん得たかったのは優等生の弟ばかりを可愛がっている母からの愛情。スターになっても理解してくれない母に苦悶を募らせるうえ、左京の嫌がらせから新人の指揮者として晴れ舞台にたつ弟を護るべく、自分の栄光を捨て去ろうとします。
この涙ぐましい兄弟愛、そしてラストの母子の和解が感動の嵐を呼びますね。
石原裕次郎は笑うとちょっとみっともない顔だち(歯並びが…)だし、台詞回しもあまりうまい俳優といえない、飾りものという印象がありましたが、本作の後半でひとりで背負い込んでいく哀れな姿勢がなんとも惹かれますね。ただの暴力と恋愛を描いた青春映画には終わっていません。

監督・脚本は井上梅次。
1983年に近藤真彦主演でリメイクしていますが、登場人物にやや異同があるようですね。

(2010年1月10日)

嵐を呼ぶ男(1957)(1957) - goo 映画



石原裕次郎といえば、実兄の慎太郎氏は東京都都知事。
ご自身、『太陽の季節』という奔放で自堕落な若者を描いた作家でいらっしゃったのですが、漫画やアニメの表現規制で主要出版社と対立していることが話題になっていますね。都知事に再立候補したら、若者は投票するんでしょうかね。


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